ノニト・ドネア /井上尚弥の対戦相手はどのくらい強いのか
WBSSバンタム級の決勝戦は、11月7日に埼玉スーパーアリーナで行われることが決定しました。井上尚弥とノニト・ドネアの決勝戦は、もう井上尚弥の勝利が決まっているような雰囲気で、井上尚弥の次の対戦が予想される有様です。しかし井上尚弥が圧勝すると予想する人の中に、ドネアの試合を見たことある人がどれだけいるのか疑問です。ドネアは楽に勝てる相手ではありません。これまで井上尚弥が戦ってきた相手の中では、間違いなく最強のボクサーです。
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特にフライ級王座を奪ったビック・ダルチニアン戦では、ラスベガスの賭け率が7:1という圧倒的に不利と思われた試合でした。この試合でドネアは強打で王者を圧倒し、TKOで王座を手にしています。フィリピンの閃光と呼ばれるスピードに加え、爆発力のある強打を持つのが特徴で、何人ものボクサーを倒してきました。井上尚弥と同様に強打が持ち味で、しつこいボクシングをすることでも有名です。とにかく速く、軽量級離れしたパンチ力を武器に、王座を次々と獲得してきました。
そもそも日本に興味を持ったきっかけは、アニメ映画の「獣兵衛忍風帖」だったそうで、そのためかサムライに強い関心を示しています。サムライ映画を多く見ていて、西岡利晃との試合前には「西岡さんとの試合は、武蔵と小次郎の対決のように隙を見せた方が負けになるだろう」と語り、宮本武蔵を敬愛している自分が勝つと宣言していました。
プライベートで何度も来日していて、日本人の友人も多くいるようです。忍者になったり日本食を食べ歩いたり、日本を楽しんでいる様子がうかがえます。
この左フックを活かすのが、ドネアのスピードです。出入りが早く、ハンドスピードも高速です。飛び込んでからのコンビネーションが速いため、相手はガードが間に合わないまま被弾するケースが多く、防御が徐々に崩れていくことがよくありました。右ストレートも重く、ガードの上から叩きつけてもダメージを与えます。そこでフィニッシュの左フックが活きてくるのです。
しかし何よりドネアの強さは、距離感だと思います。相手の間合いを殺し、自分が強打を打てる距離に一瞬で入る能力が抜群で、その距離感を掴む上手さがあるので、ドネアは常に自分のリズムで試合ができるのです。やや単調に見えることもありますが、自分のリズムで試合を続け、そのリズムを相手に押し付けることで自分の間合いに相手を置いていきます。
強打、スピード、距離感、そして自分のリズムを崩さないスタイルのドネアと、井上尚弥のスタイルには共通する部分が多くあります。井上尚弥はドネアのスタイルの影響を受けているので、どうしても似た部分があるのです。WBSS決勝戦は、似たタイプの激突になるとも言えるでしょう。
ドネア攻略のヒントとして挙げられるのは、2013年にスーパーバンタム級で戦ったギレルモ・リゴンドウ戦です。この試合でドネアは終始ペースを握られてしまい、10Rにダウンを奪うものの判定で負けてしまいました。後半はリゴンドウがあからさまに逃げに入っていましたが、ドネアが全くペースを握れずに試合が展開した珍しい試合です。
シドニー五輪の金メダリストで、アマエリートのリゴンドウはドネアの先手を打ち、ドネアより上手く距離を掴んでいました。リゴンドウのボクシングが退屈だと話題になった試合ですが、ドネアが後手に回る珍しい展開が何度も見られ、決して完璧なボクサーではないこと証明した試合でもあります。恐らくドネアの全盛期は2011年前後で、リゴンドウ戦辺りから衰えが指摘されるようになってきました。現在のドネアの最大の弱点は衰えだと思います。
もはや井上尚弥の勝利が確定していて、次の試合の話題が先行している感がありますが、ドネア戦はスリリングな試合になると思います。埼玉での決戦が楽しみです。
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フィリピンの閃光
フィリピンのスーパースター、マニー・パッキャオの弟分のように言われることの多いドネアは、これまでにフライ級からフェザー級までの5階級で世界王者になり、主要4団体のチャンピオンベルトを11本も持っています。このようなベルトコレクターは、可能な限り弱い相手を見つけてタイトルマッチを繰り返すことが多いのですが、ドネアは兄貴分のパッキャオと同様に強い相手を求めてきました。特にフライ級王座を奪ったビック・ダルチニアン戦では、ラスベガスの賭け率が7:1という圧倒的に不利と思われた試合でした。この試合でドネアは強打で王者を圧倒し、TKOで王座を手にしています。フィリピンの閃光と呼ばれるスピードに加え、爆発力のある強打を持つのが特徴で、何人ものボクサーを倒してきました。井上尚弥と同様に強打が持ち味で、しつこいボクシングをすることでも有名です。とにかく速く、軽量級離れしたパンチ力を武器に、王座を次々と獲得してきました。
日本が大好き
日本のマンガが好きで「スラムダンク」「はじめの一歩」「ドラゴンボール」などをお気に入りに挙げています。特に「はじめの一歩」は熱心なファンで、作者の森川ジョージを訪問したこともあります。主人公の幕の内一歩が使うデンプシーロールを研究しているなど、熱く語っていたこともあります。※森川ジョージとの2ショット |
そもそも日本に興味を持ったきっかけは、アニメ映画の「獣兵衛忍風帖」だったそうで、そのためかサムライに強い関心を示しています。サムライ映画を多く見ていて、西岡利晃との試合前には「西岡さんとの試合は、武蔵と小次郎の対決のように隙を見せた方が負けになるだろう」と語り、宮本武蔵を敬愛している自分が勝つと宣言していました。
プライベートで何度も来日していて、日本人の友人も多くいるようです。忍者になったり日本食を食べ歩いたり、日本を楽しんでいる様子がうかがえます。
ドネアの略歴
ドネアは1982年にフィリピンのボホール州タリボンに生まれました。4人兄弟の3番目で、6歳までジェネラルサントス市で育ちました。同じ学校にはマニー・パッキャオも通っていましたが、この頃は身長が低くいじめられっ子でした。自殺も考えるほど酷いいじめを受けていたと言いますが、彼の運命が11歳の時に大きく変わります。父方の祖父がハワイ生まれで、父親はアメリカでアマチュアボクシングの経験がありました。これによりアメリカが市民権を与え、一家でアメリカのカリフォルニア州に移り住みました。
アメリカに移り住んだドネアはボクシングを始めました。いじめ対策として始めたのですが、後にドネアは両親の関心がボクシングを始めた兄に向かっていたので、自分もボクシングをすることで親の関心を自分に向けたかったと言っています。兄とのスパーリングを繰り返し、頭角を表し始めました。ドネアは自身のヒーローである4階級王者のアレクシス・アルゲリョを真似て、左フックを繰り返し練習していきました。これが後のドネアの得意技になっていきます。アマチュアボクサーとしてドネアは、全米シルバーグローブ、全米ジュニアオリンピック、全米トーナメントの3つの大会で優勝しています。
2001年にプロデビューをすると、2002年にWBOアジアフライ級王座を獲得し、2006年には北米スーパーフライ級タイトルを獲得しています。世界タイトル奪取は2007年7月で、IBF世界フライ級王者のビック・ダルチニアンを5RTKOで仕留めました。フライ級王座は3度防衛して返上しています。そして2009年8月にラファエル・コンセプシオンとWBA世界スーパーフライ級暫定王座決定戦を行い、判定で勝利しました。初防衛戦は8RTKOで勝利すると、バンタム級に転向します。2011年にラスベガスでWBC・WBO世界バンタム級王者のフェルナンド・モンティエルに挑戦し、強烈な左フックのカウンターでダウンを奪います。倒れたモンティエルの両足が痙攣する衝撃的な光景は、ドネアの強さを強烈に印象づけました。
2012年にウィルフレド・バスケス・ジュニアとWBO世界スーパーバンタム級王座決定戦を行い、判定で勝利して4階級制覇を実現しました。その後、IBF世界王者のジェフリー・マゼブラに判定で勝利して王座を統一すると、西岡利晃を9RKOに仕留めました。しかし2013年にWBA王者のギレルモ・リゴンドウとの統一戦では技巧の前に苦戦し、判定でタイトルを失うことになりました。この後、ドネアは以前から痛めていた右肩の手術を受けています。
2013年にはフェザー級に上げると、2014年5月にWBA世界フェザー級のスーパー王者シンピウィ・ベトイェカに挑戦し、負傷判定で勝利して5階級制覇を達成しました。10月にはWBAフェザー級正規王者のニコラス・ウォータースと統一戦を行いますが、6RKO負けで王座を失いました。この頃からドネアの限界説が囁かれるようになり、階級の壁に阻まれる苦戦する姿ばかりが目立ちました。そこで2015年からはスーパーバンタム級に階級を落とすことになります。
WBO世界スーパーバンタム級王座決定戦に勝利し王座への返り咲きを果たすと、2016年には初防衛戦にも成功しました。しかし2度目の防衛戦ではヘスス・マグダレノに判定で敗れ、王座から陥落しました。2017年には再びフェザー級に上げるとWBOの世界フェザー級暫定王座決定戦に出場しますが、ここでも判定で敗れて返り咲きは果たせませんでした。そして2018年にはバンタム級に落とし、井上尚弥らとともにWBSSに出場しました。
なぜそんなに強いのか
とにかく左フックの破壊力が抜群で、不利な形勢になっても1発で試合をひっくり返すことがあります。コンビネーションの中から繰り出す左フックは驚異ですが、単発の左フックでもKOを奪えます。軽量級離れした威力を持つ左フックは現在も衰えておらず、WBSS2回戦でステフォン・ヤングを左フックで葬っています。この左フックを活かすのが、ドネアのスピードです。出入りが早く、ハンドスピードも高速です。飛び込んでからのコンビネーションが速いため、相手はガードが間に合わないまま被弾するケースが多く、防御が徐々に崩れていくことがよくありました。右ストレートも重く、ガードの上から叩きつけてもダメージを与えます。そこでフィニッシュの左フックが活きてくるのです。
しかし何よりドネアの強さは、距離感だと思います。相手の間合いを殺し、自分が強打を打てる距離に一瞬で入る能力が抜群で、その距離感を掴む上手さがあるので、ドネアは常に自分のリズムで試合ができるのです。やや単調に見えることもありますが、自分のリズムで試合を続け、そのリズムを相手に押し付けることで自分の間合いに相手を置いていきます。
強打、スピード、距離感、そして自分のリズムを崩さないスタイルのドネアと、井上尚弥のスタイルには共通する部分が多くあります。井上尚弥はドネアのスタイルの影響を受けているので、どうしても似た部分があるのです。WBSS決勝戦は、似たタイプの激突になるとも言えるでしょう。
ドネアに弱点はあるのか
最初にバンタム級に上げてきた2010年頃の試合と、WBSSの試合を見比べるとスピードが落ちているのがわかります。さらに被弾することが増え、年齢とともに反射スピードの衰えもあるように思います。そのため、かつての圧倒的な雰囲気は少しだけ影を潜めてしまったようです。ドネア攻略のヒントとして挙げられるのは、2013年にスーパーバンタム級で戦ったギレルモ・リゴンドウ戦です。この試合でドネアは終始ペースを握られてしまい、10Rにダウンを奪うものの判定で負けてしまいました。後半はリゴンドウがあからさまに逃げに入っていましたが、ドネアが全くペースを握れずに試合が展開した珍しい試合です。
※リゴンドウ戦 |
シドニー五輪の金メダリストで、アマエリートのリゴンドウはドネアの先手を打ち、ドネアより上手く距離を掴んでいました。リゴンドウのボクシングが退屈だと話題になった試合ですが、ドネアが後手に回る珍しい展開が何度も見られ、決して完璧なボクサーではないこと証明した試合でもあります。恐らくドネアの全盛期は2011年前後で、リゴンドウ戦辺りから衰えが指摘されるようになってきました。現在のドネアの最大の弱点は衰えだと思います。
試合展望
恐らく井上尚也の勝利に終わると思いますが、これまでのような豪快なKO劇が早いラウンドに起こるようには思えません。井上尚也がこれまで対戦してきたボクサーの中で、ドネアは間違いなく最強の相手になります。そしてドネアと井上は互いに距離を掴むのが上手い選手なので、静かで激しい主導権争いが展開されるでしょう。井上はドネアの左フックを警戒しているでしょうし、ドネアは井上のボディブローや右ストレートを警戒しているでしょう。もちろん早い決着の可能性もありますが、試合は中盤ぐらいまでもつれるのではないでしょうか。私はそんな予想をしています。まとめ
ドネア戦は井上尚也のボクサー人生ハイライトになる試合です。衰えたとはいえ決して楽に勝てる相手ではなく、ここ数戦で見られたような早いラウンドでのKO決着も予想し難いです。しかし同時に井上尚弥が負けるというのは、全く想像できません。最終的にKOで勝つでしょう。もはや井上尚弥の勝利が確定していて、次の試合の話題が先行している感がありますが、ドネア戦はスリリングな試合になると思います。埼玉での決戦が楽しみです。
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・井上尚弥のパウンド・フォー・パウンドを考える
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