井上尚弥のパウンド・フォー・パウンドを考える
アメリカの最も権威あるボクシング雑誌、リングマガジンのランキングで、井上尚弥はパウンド・フォー・パウンド(PFP)4位に認定されました。パウンド・フォー・パウンドとは全階級の選手が同じ階級にいると仮定して、最も強い選手を選ぶというものです。実際には階級によって異なるスキルが必要になるため、一概に比べることはできないのですが、ボクサーとして誰が最も優れているかはファンの議論のネタとして古くからおこなわれており、今でもパウンド・フォー・パウンドは誰かが議論されます。井上尚弥が4位に選ばれたというのは、日本人としては最高位ではないかと思います。
しかし4位というのは妥当か?という議論が日本でも海外でも行われているので、他に選ばれている選手はどんな選手がいるのかを見ていこうと思います。
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・井上尚弥が参戦するWBSSとはなにか
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1988年、ウクライナ出身のロマチェンコがパウンド・フォー・パウンド1位に認定されています。北京オリンピック、ロンドンオリンピックの金メダリストで、圧倒的なテクニックでアマを席巻しました。プロデビューすると、初戦でインターナショナル王座を獲得し、プロ3戦目で世界王座を獲得します。プロ12戦目で3階級を制覇し、現在はライト級の統一王者です。
とにかく上手い選手です。パンチは手打ちで威力がありませんが、圧倒的なハンドスピードで試合を支配します。そのスピードは異次元と言われることもあり、複数のフェイントを織り交ぜるので相手は翻弄されてしまいます。そしてロマチェンコは相手を翻弄しつつ、一瞬だけ隙を見せるのです。相手はそれがロマチェンコの罠だとわかっていても、滅多打ちにされている中で隙が見えたら手を出してしまいます。ロマチェンコは相手に自分が望むパンチを打たせ、カウンターで葬っていきます。
ディフェンスも上手く、攻撃も正確なので精密機械に例えられ、同じく技巧派の頂点と言われていたギレルモ・リゴンドウを6RにKOしてからは、もはや向かうとこ敵なしといった雰囲気です。
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1987年にアメリカで生まれました。デビュー6年目でライト級王座に就くと、2度防衛した後にスーパーライト級に移り、4団体の統一王者になります。さらにウェルター級に上げると王座に就き、35戦全勝の完璧なレコードを誇っています。上記のロマチェンコは、自分を除いたパウンド・フォー・パウンドを選んだ時、クロフォードを1位にしました。
圧倒的に長いリーチを持ち、さらにスイッチヒッターで変幻自在のボクシングをします。序盤は打撃戦を展開し、中盤にはアウトボクシングで相手を披露させ、後半に再び打撃戦を展開するなど、あらゆるスタイルで相手を攻略していきます。とにかく穴がないボクシングで、クロフォードを攻略する方法が見当たらないと言われています。地味なボクシングをすることも多いですが、着実に相手にダメージを与える戦い方を心得ていて、クロフォード自身が体調を壊すでもしない限り、勝ち続けるように思います。
90年生まれのメキシカンです。とにかく中南米では圧倒的人気を誇るボクサーで、スーパーウェルター級とミドル級で王座に就きました。フロイド・メイウェザー・ジュニアやミゲール・コット、ゲンナジー・ゴロフキンらとスーパーファイトを実現させ、天文学的なファイトマネーを稼いでいます。以前はスピードとパワーに頼った戦い方をしていましたが、メイウェザーに負けてからは相手を十分に研究し、クレバーなボクシングで相手を封じ込めてきました。
強さと上手さを兼ね備えた選手ですが、ドーピング検査で陽性反応が出たり、その後の検査を拒否したりと薬物使用の疑いが続いています。ゴロフキンを破って名実ともにミドル級最強となりましたが、その最中の薬物使用疑惑に加えて判定が議論を呼ぶ試合だったため、カネロの順位には多くの議論があります。
93年日本生まれのボクサーで、今最も注目されているボクサーの一人です。アマチュアタイトルを総なめにし、アマ最強の称号を得てプロデビューすると、連戦連勝で三階級を制覇しました。ライトフライ級時代にもパンチ力が強くKOを量産していましたが、スーパーフライ級に上げると減量苦から解放されて怪物的なパンチ力を身に着けました。
ロマチェンコほどの精密な印象はありませんが、アマエリートらしい基本に忠実なボクシングで、強烈なボディブローを筆頭に圧倒的なパンチ力を武器にしています。ディフェンス、スピード、パンチ力、クレバネスなど、あらゆる面で高いレベルを維持しているので今のところ欠点が見当たりません。さらに果敢に打ち合う勇敢さも持っています。年齢的にも、今後の成長が期待されます。
ロンドンオリンピックのヘビー級金メダリストで、2017年に開催されたWBSSで優勝してメジャー4団体のクルーザー級チャンピオンベルトを保持しました。さらにヘビー級のベルトも狙っており、ヘビー級の試合も予定されています。
ロマチェンコと切磋琢磨し、現在もロマチェンコの父をトレーナーに据えていることから、重量級らしからぬフットワークとモビリティを活かしたボクシングを展開します。テクニックは抜群で、随所にパンチの強さも見せます。重量級で最も注目される選手の1人で、今後のヘビー級参戦で評価が大きく変わる可能性もあります。
井上に関してはウシクより上なのは妥当か?というのが議論の対象になっていますが、名トレーナーのルディ・ヘルナンデスのように、ロマチェンコやクロフォードより上位と言う人もいます。ヘルナンデスが井上を評価する理由は、勝敗に疑念の残らない完ぺきな勝利を続けていることが大きいようです。一方で井上の4位を否定する人は、WBSSで優勝していない段階で、WBSS優勝のウシクより上位の評価というのに異議を唱えます。
そもそもPFPは議論が尽きないもので、マイク・タイソンの全盛期にも、多くの人がタイソンをPFP1位と言う中、メキシコのフリオ・セザール・チャベスを1位に推す声も根強くありました。満場一致が望めないのが、PFPなのです。
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※リングマガジンの表紙になった井上尚弥 |
しかし4位というのは妥当か?という議論が日本でも海外でも行われているので、他に選ばれている選手はどんな選手がいるのかを見ていこうと思います。
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・衝撃のKO劇 /井上尚弥の強さとは
・井上尚弥が参戦するWBSSとはなにか
・亀田裁判と日本ボクシングコミッションの闇
1位 ワシル・ロマチェンコ
1988年、ウクライナ出身のロマチェンコがパウンド・フォー・パウンド1位に認定されています。北京オリンピック、ロンドンオリンピックの金メダリストで、圧倒的なテクニックでアマを席巻しました。プロデビューすると、初戦でインターナショナル王座を獲得し、プロ3戦目で世界王座を獲得します。プロ12戦目で3階級を制覇し、現在はライト級の統一王者です。
とにかく上手い選手です。パンチは手打ちで威力がありませんが、圧倒的なハンドスピードで試合を支配します。そのスピードは異次元と言われることもあり、複数のフェイントを織り交ぜるので相手は翻弄されてしまいます。そしてロマチェンコは相手を翻弄しつつ、一瞬だけ隙を見せるのです。相手はそれがロマチェンコの罠だとわかっていても、滅多打ちにされている中で隙が見えたら手を出してしまいます。ロマチェンコは相手に自分が望むパンチを打たせ、カウンターで葬っていきます。
ディフェンスも上手く、攻撃も正確なので精密機械に例えられ、同じく技巧派の頂点と言われていたギレルモ・リゴンドウを6RにKOしてからは、もはや向かうとこ敵なしといった雰囲気です。
2位 テレンス・クロフォード
1987年にアメリカで生まれました。デビュー6年目でライト級王座に就くと、2度防衛した後にスーパーライト級に移り、4団体の統一王者になります。さらにウェルター級に上げると王座に就き、35戦全勝の完璧なレコードを誇っています。上記のロマチェンコは、自分を除いたパウンド・フォー・パウンドを選んだ時、クロフォードを1位にしました。
圧倒的に長いリーチを持ち、さらにスイッチヒッターで変幻自在のボクシングをします。序盤は打撃戦を展開し、中盤にはアウトボクシングで相手を披露させ、後半に再び打撃戦を展開するなど、あらゆるスタイルで相手を攻略していきます。とにかく穴がないボクシングで、クロフォードを攻略する方法が見当たらないと言われています。地味なボクシングをすることも多いですが、着実に相手にダメージを与える戦い方を心得ていて、クロフォード自身が体調を壊すでもしない限り、勝ち続けるように思います。
3位 サウル・カネロ・アルバレス
90年生まれのメキシカンです。とにかく中南米では圧倒的人気を誇るボクサーで、スーパーウェルター級とミドル級で王座に就きました。フロイド・メイウェザー・ジュニアやミゲール・コット、ゲンナジー・ゴロフキンらとスーパーファイトを実現させ、天文学的なファイトマネーを稼いでいます。以前はスピードとパワーに頼った戦い方をしていましたが、メイウェザーに負けてからは相手を十分に研究し、クレバーなボクシングで相手を封じ込めてきました。
強さと上手さを兼ね備えた選手ですが、ドーピング検査で陽性反応が出たり、その後の検査を拒否したりと薬物使用の疑いが続いています。ゴロフキンを破って名実ともにミドル級最強となりましたが、その最中の薬物使用疑惑に加えて判定が議論を呼ぶ試合だったため、カネロの順位には多くの議論があります。
4位 井上尚弥
93年日本生まれのボクサーで、今最も注目されているボクサーの一人です。アマチュアタイトルを総なめにし、アマ最強の称号を得てプロデビューすると、連戦連勝で三階級を制覇しました。ライトフライ級時代にもパンチ力が強くKOを量産していましたが、スーパーフライ級に上げると減量苦から解放されて怪物的なパンチ力を身に着けました。
ロマチェンコほどの精密な印象はありませんが、アマエリートらしい基本に忠実なボクシングで、強烈なボディブローを筆頭に圧倒的なパンチ力を武器にしています。ディフェンス、スピード、パンチ力、クレバネスなど、あらゆる面で高いレベルを維持しているので今のところ欠点が見当たりません。さらに果敢に打ち合う勇敢さも持っています。年齢的にも、今後の成長が期待されます。
5位 オレクサンドル・ウシク
ロンドンオリンピックのヘビー級金メダリストで、2017年に開催されたWBSSで優勝してメジャー4団体のクルーザー級チャンピオンベルトを保持しました。さらにヘビー級のベルトも狙っており、ヘビー級の試合も予定されています。
ロマチェンコと切磋琢磨し、現在もロマチェンコの父をトレーナーに据えていることから、重量級らしからぬフットワークとモビリティを活かしたボクシングを展開します。テクニックは抜群で、随所にパンチの強さも見せます。重量級で最も注目される選手の1人で、今後のヘビー級参戦で評価が大きく変わる可能性もあります。
議論になっていること
PFPの1位はロマチェンコかクロフォードかで議論が続いています。1位がこの2人のどちらかというのに異論はないと思いますし、ライト級とウェルター級という近い階級だけに議論が白熱しがちです。それほど甲乙つけがたいハイレベルなボクサーだと言えるでしょう。※PFPはシュガー・レイ・ロビンソンの偉大さを示すために作られた言葉です。 |
井上に関してはウシクより上なのは妥当か?というのが議論の対象になっていますが、名トレーナーのルディ・ヘルナンデスのように、ロマチェンコやクロフォードより上位と言う人もいます。ヘルナンデスが井上を評価する理由は、勝敗に疑念の残らない完ぺきな勝利を続けていることが大きいようです。一方で井上の4位を否定する人は、WBSSで優勝していない段階で、WBSS優勝のウシクより上位の評価というのに異議を唱えます。
そもそもPFPは議論が尽きないもので、マイク・タイソンの全盛期にも、多くの人がタイソンをPFP1位と言う中、メキシコのフリオ・セザール・チャベスを1位に推す声も根強くありました。満場一致が望めないのが、PFPなのです。
まとめ
議論になるPFPですが、最も権威のある雑誌で4位に選ばれたのは、井上尚弥にとって名誉なことだと思います。世界的に高い評価を得た希有なボクサーですが、今後もさらに高いステージに上がる可能性もあります。WBSSでの優勝、そして4団体の統一、そしてスーパーバンタムへの進出など、多くの可能性を感じさせてくれます。今後の活躍に期待したいと思います。井上尚弥関連記事
・井上尚弥は何が凄いのか改めて整理する
・衝撃のKO劇 /井上尚弥の強さとは
・井上尚弥が参戦するWBSSとはなにか
・亀田裁判と日本ボクシングコミッションの闇
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