東洋エンタープライズ /日本が誇る執念の服飾ブランド

東洋エンタープライズという服飾メーカーは、マニアックな商品展開をしているため一般には馴染みが少ないブランドです。しかしその一部のマニアにはたまらない商品を揃えていて、特にアメリカのヴィンテージ品の復刻には並々ならぬ執念を感じさせる会社です。今回は、東洋エンタープライズの紹介です。


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歴史

東洋エンタープライズは、1940年代に創業した生地の貿易商「港商」から始まります。GHQによる財閥解体があり、貿易事業をする会社が減っていたため港商の事業は順調に進みました。戦後の焼け野原になった日本で生地といえばレーヨンぐらいしか残ってなかった時に、創業者の小林亨一はレーヨンを使ったジャンパーを作りました。そこに日本風の刺繍を施して米兵のお土産として売り出したところ大ヒットし、これが今日でいうスカジャンになります。当時は米兵の日本土産が大人気で、焼けた家の跡から焦げた雛人形を掘り出して並べていても、ジャンジャン売れる時代だったのです。その後、小林は米軍基地に出入りして、スカジャンを大量に販売しました。

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アメリカがベトナム戦争に本格介入し、日本の米軍基地には米兵があふれるようになった1965年、小林は港商を解散して新たに東洋エンタープライズを立ち上げました。東洋エンタープライズは、米軍基地の米兵向けの衣料メーカーとして事業を拡大していきます。そして1975年にベトナム戦争が終結すると、東洋エンタープライズは米兵に販売していた衣料を国内に向けて販売するようになります。これがシュガーケーンというブランドになり、今日も続いています。

その他にも1930年代から1950年代のアロハシャツを再現するサンサーフ、アメリカ軍のフライトジャケットを再現するバズリクソンズ、スカジャンを作り続けるテーラー東洋など、複数のブランドからヴィンテージ衣料を復刻したものを販売し続けています。

シュガーケーン

国内メーカーながら米兵に販売するため、アメリカの衣料を再現することに徹したことから始まったブランドです。その精密で徹底した再現には定評があり、多くの愛好者がいます。ヴィンテージ愛好家には、無視できないブランドです。

1947モデル
シュガーケーンのジーンズと言えば、これが代名詞的な存在です。1940年代後半、第二次世界大戦が終わった時期のジーンズを再現したストレートパンツです。縫製は綿糸で行われていますが、負荷がかかる部分には太糸を使用するなど何種類もの糸を使って縫われています。生地は14.25ozになります。


1966モデル
1947より細身のシルエットの1966モデルは、ヴィンテージジーンズの中でも評価が高い60年代後半のシルエットを採用しています。縫製は綿糸ではなく、化繊の芯を綿で巻いたコアスパン糸を使用しているので、綿糸よりも丈夫なつくりになっています。生地は14ozになります。



ワークコート
ワークウェアも多く、このワークコートは高い人気を誇っています。ウォバッシュストライプと言われる独特のストライプは、1920年代から30年代の鉄道従事者が使っていたものがモデルになっています。


サンサーフ

東洋エンタープライズ創業者の小林亨一は、世界有数のヴィンテージアロハシャツコレクターとして知られます。そのコレクションを分析してアロハシャツの黄金期と言われる1930年代から1950年代のヴィンテージモデルを再現したのがサンサーフです。当時のレーヨンと現在のレーヨンでは原料や製法が異なるため、当時の風合いを出すためにレーヨンづくりから始め、ボタンもココナッツボタンをはじめ、当時のディテールに沿ったボタンを何種類も用意しています。


最も代表的なオールオーバーパターンのアロハシャツ


こちらはボーダーパターンと呼ばれる柄です。シャツの縦方向に柄が揃っています。



オリエンタルデザインと呼ばれる柄で、いわゆる和柄です。こちらは虎が描かれています。

バズリクソンズ

93年にフライトジャケットのヴィンテージを再現したリアルマッコイズ(通称、旧マッコイ)と共同で立ち上げたブランドで、旧マッコイと同様にヴィンテージの再現に注力しています。当初は革製のフライトジャケットを中心にしたマッコイズに対し、MA-1などの化繊のフライトジャケットを再現することで棲み分けていました。しかし2001年にリアルマッコイズが民事再生法を申請してからは、フライトジャケット全般を展開しています。

MA-1
バズリクソンズの代名詞的なフライトジャケットで、当時のディテールを忠実に再現しています。大型のクラウンジッパー、角ばったウインドフラップなど、マニア心をくすぐる仕様になっています。




A-2
さまざまなメーカーが納入していたA-2ですが、ラフウェア社、エアロレーザー社、JAデュボウ社などのモデルをそれぞれ再現しています。そのためA-2といっても何種類もあり、素材やディテールなどに違いがあります。バズリクソンズでは、各社のA-2を再現しています。


こちらはラウフウェア社の3度目のコントラクトモデルのレプリカです。イタリア産の原皮を使っています。


エアロレザー社の赤リブモデルのレプリカです。


JAデュボウ社のモデルです。こちらのモデルは比較的肉厚になっています。


L-2
上記のA-2に代わって、1945年に初めて化学繊維を使ったフライトジャケットとして登場したのがL-2です。その後、L-2A、L-2Bと進化していきます。ライトゾーン用なので、秋口にサラッと着れるフライトジャケットとして人気が高まっています。



まとめ

ヴィンテージの風合いを現代に再現することに、並々ならぬ執念を見せるブランドです。ヴィンテージの風合いを持ちながら普段着に使えるところが魅力で、若干普通の服よりも価格が高いですが、ヴィンテージを購入すると考えると安く気軽に手に入ります。また、これほど細かい部分までこだわって作られ、手間暇を惜しまない姿勢には感服します。人と違った服を着てみたい、アメリカのヴィンテージが好きという方には、目が離せない会社です。


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