シャイで謙虚でパワフルな女王 /大坂なおみが全豪優勝

大坂なおみが全米オープンで優勝した時に英語掲示板に書かれた「コートでは勇敢でパワフルなのに、コートの外では謙虚でシャイ。なんてキュートなんだ」というコメントに、多くの賛同が集まっていました。今回の全豪オープンでは、勇敢さとパワフルさに加えて、少しだけ老獪さも加わったように思います。それにしても四大大会連覇という偉業は、本当に素晴らしい!



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全豪オープンの特徴

四大大会の全英はグラスコート(芝)、全仏はクレイコート(赤土)、 ですが、全米と全豪はハードコートと呼ばれるコンクリートの硬いコートで行われます。そのため球足が速く、パワーのある選手に有利になる傾向があります。

そして全豪といえば暑さで有名です。なぜ真夏に開催されるのかは知りませんが、気温が40度になることも珍しくなく、そんな時は熱せられたコート上は50度を超え、熱中症が多発する大会としても知られています。あまりの暑さに試合中の記憶が飛んでいることもよくあるそうで、安全面への配慮から40度を越える場合には屋根を閉めて試合が行われます。


選手の生命を脅かしているとして、開催時期の変更などが何度も議論されており、この暑さのために番狂わせも多く起こる大会です。しかし大坂は暑いほど自分が輝くと言い、この暑さを歓迎しています。決勝戦も40度を超えていて、気温も味方をしたのかもしれません。

走り込んできた大坂なおみ

とにかく走り込んで体力をつけた大坂は、今大会では運動量で相手を上回っていました。特徴的だったのはフットワークが細かくなったことで、従来なら1歩で移動するところを2歩で移動するように、急激な変化に対応できるようになっていました。

運動量で上回ると、思い切った手に出ることも増え、3回戦ぐらいまではドロップショットを使っていました。これは大きな変化だと思います。このような一面に、大坂なおみの伸びしろを感じます。

インナーピースを手にした

決勝戦の第2セットは、マッチポイントを奪いながら自らのミスを絡めて奪われるという、精神的に最も辛い展開でした。ラケットを叩きつけそうになり、大声で叫び、気持ちが追い詰められていました。しかし第3セットでは感情を押し殺すように無表情で、淡々とエースを奪っていきます。


以前のインタビューで「一度インナーピース(内なる平和)に入ってしまえば、後は何も気にならない」と語っていました。それはランダムにしか訪れないけど、だんだん自分の意思で手にすることができるようになりつつあるとも言っています。まさに決勝の第2セットの後が、インナーピースに入ったかのように、動揺も苛立ちも悔しさもなく、一球に集中しているようでした。

第2セット以降、崩れきってしまってもおかしくない場面でしたが、精神的なタフさが一回り大きくなっていました。

エースを奪える力

ピンチの時に、サービスエースやリターンエースを奪えるのは強みでした。悪い流れを断ち切り、強引に自分に引き寄せるにはエースを奪うのが効果的です。錦織圭にもエースを奪える力があれば、ずいぶん楽に勝てる試合が増えるだろうと思います。

大坂の決勝戦で言えば、第3セットは何度もエースを奪って一気に流れを引き寄せました。トップクラスの選手を相手にエースを奪えることは、四大大会で勝つには必須になっていると思いますが、大坂なおみはまさにその力を持っています。

女王を育てるサーシャ・バイン

これまで4人をコーチしてきたサーシャは、全員を世界ランク1位にしました。間違いなくサーシャは名コーチです。大坂なおみは「これまでのコーチは先生だったけど、彼は友達のよう」と評し、選手との対話を重視するサーシャのコーチングは大成功しています。


サーシャがコーチになってからは、叩きつけるようなパワーテニス一辺倒からクレバーさが加わり、イライラで自滅することも減りました。技術的に向上したのは明らかですが、それ以上に精神的な落ち着きとゆとりが出ています。サーシャは魔法をかけたように、大坂のランキングは急上昇して世界一にたどり着きました。

今後の展望

ハードコートで強みを見せつけた大坂なおみですが、四大大会には芝の全英とクレイの全仏があります。特にクレイを苦手としていますが、世界ランク1位を守り続けるには避けることができない大会です。

そして今後、彼女が女王の風格を身につけるには、やはり全英ウィンブルドンのセンターコートに立って欲しいですね。四大大会はどれも素晴らしい大会ですが、ウィンブルドンは伝統と歴史が違い、やはり特別な大会なのです。日本人にとってウィンブルドンは、松岡修造のベスト8に歓喜し、伊達公子が女王グラフと死闘を演じた舞台です。

いつの日か、ウィンブルドンで大坂なおみの歓喜の姿を見たいと願っています。

※大坂なおみが使っているラケットです。

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