タキシードで大騒動 /友人Mのニューイヤー・パーティ
友人Mは、いわゆる外資に勤めていたのですが、どういう経緯かは知りませんがニューヨークに移り住むことになりました。たまにメールでやりとりする程度の間柄だったのですが、Mからメールが来ました。「緊急事態なので、今すぐスカイプで話したい」2010年頃の12月の話です。
「ニューイヤーの準備はできてる?」
なんのことかわからず尋ねると、大晦日は仕事を終えると全員着替えて、社内でニューイヤーを祝うパーティを行うのがしきたりなのだそうです。その際、男性はタキシードを着るというのです。タキシードなんか持ってないと言うと、上司は「心配ない。ここに電話すれば全て揃えてくれる。すぐに予約して、サイズを測っておくんだ」と、貸衣装屋の電話番号を渡してくれたそうです。
Mは言われるがまま電話し、仕事帰りにタキシードのサイズ合わせをし、予約を済ませました。レンタル代は日本の相場からすると格安で、タキシードを購入するにしても1万円代からあり、毎年着るならば来年は買おうかなと思いつつ帰宅したそうです。
Mは再び貸衣装屋に行き、そこで勧められた靴を借りることにしました。靴は持って帰っていいと言われたので、そのまま家に持ち帰りました。しかしそれを見たMの奥さんは
「なにこれ?和田アキ子の靴みたいじゃない」
と大笑いしたのだそうです。不安になったMは、翌日会社にその靴を持っていき、上司に相談します。上司はニンマリ笑い「パーフェクトだ。全く問題ない」と言います。嫌な予感がしたMは同僚らにも靴を見せて質問すると、全員がニヤニヤしながら「その靴で大丈夫」と言います。なにやら疎外感を覚えたMは、全員が何かを企んでいると感じました。騙されている気がして、私に連絡してきたのです。
井「その靴はオペラパンプスといって、タキシードの時に使う靴だ」
M「じゃあ、俺は騙されてないんだな?」
井「もちろん。何の問題もない」
M「よかったぁ」
しかしMの疑いは晴れていません。全員が何かを企んでいるのは間違いないと言います。
M「しかし変な靴だな」
井「ダンスをする時に、靴墨で女性のドレスを汚さないようにエナメルの靴になったんだ」
M「ダンス?」
井「昔は夜会にはダンスがつきものだったんだ。で、踊っている最中に紐が解けるのが嫌だからパンプスになった」
M「待ってくれ。ボスの家に行った時、夫婦で社交ダンスをしている写真があった」
井「ん?ボスの奥さんもパーティに来るのか?」
M「来るって聞いてる」
井「新人のお前は、奥さんのダンスパートナーをさせられるかもしれないな」
M「たいへんたぁあああ!」
その際に靴はプレーントウと呼ばれる、つま先に何もない靴にすれば大丈夫です。そして内羽根式と呼ばれる鳩目がアッパーも一体になっているスタイルなら、なお良いでしょう。Mには内羽根式のプレーントウを買って、パーティの前にピカピカに磨いてもらうことを勧めました。
M「このズボン、ベルトをつけられないからずり落ちてくる」
井「サスペンダーを使うんだよ」
M「そんなの持ってない」
井「買うしかないな。幅が広い方が肩が凝らないぞ」
こんな感じで、一つ一つ聞いてきます。
M「これは腹巻か?」
井「その通り。カマーバンドという名の腹巻だ」
M「こうつけるのか?」
井「前後ろ逆だ」
タキシードを始めて見るMにとって、どれをどうしたら良いかわからないものの連続だったようです。
Mはタキシードを着た珍妙さを奥さんに笑われ、どうしたものかと悩んでいました。どうみてもタキシードを着たMは、売れない漫才師か何かのキャラクターのコスプレでした。さらにダンスをさせられるかもしれないことに、かなり悩んでいました。
M「あーーー。和装なら悩まないのに」
井「ん?着物を持ってるの?」
M「爺様の形見の家紋入りを持ってる」
井「ニューヨークにあるの?」
M「もちろん。家宝だからね」
井「それを着ればいいじゃないか!」
M「ニューイヤーパーティに着物は変だろう」
井「何を言う!ドレスコード的に民族衣装は認められているし、紋付の羽織袴なら最上位の服装だ」
M「本当か?」
井「正装しないと入れないアスコット競馬場でも、日本人は羽織袴で入れるんだぞ!」
そんなこんなでMはタキシードではなく、羽織袴で出かけることになりました。
一方で、和装ができる方ならそちらの方が簡単な場合もあります。特に海外では和装の方が喜ばれることも多く、無理に慣れない洋装で行くよりも良いことがあります。日本人としては、和装ができるようにしておきたいと、この時に思いました。
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Mの上司が発端だった
ニューヨークでの生活と仕事にも慣れ始め、年末に差し掛かる頃、上司がMに問いかけたそうです。「ニューイヤーの準備はできてる?」
※ニューヨークのニューイヤー・イブ |
なんのことかわからず尋ねると、大晦日は仕事を終えると全員着替えて、社内でニューイヤーを祝うパーティを行うのがしきたりなのだそうです。その際、男性はタキシードを着るというのです。タキシードなんか持ってないと言うと、上司は「心配ない。ここに電話すれば全て揃えてくれる。すぐに予約して、サイズを測っておくんだ」と、貸衣装屋の電話番号を渡してくれたそうです。
Mは言われるがまま電話し、仕事帰りにタキシードのサイズ合わせをし、予約を済ませました。レンタル代は日本の相場からすると格安で、タキシードを購入するにしても1万円代からあり、毎年着るならば来年は買おうかなと思いつつ帰宅したそうです。
靴の問題が発生
翌日、上司に感謝を伝えると「靴はどんなのにしたのかな?」と質問されました。Mは靴までは借りていないことを伝えると、上司は「それは問題だ」と厳しい顔で言ったそうです。すぐに電話で貸衣装屋に連絡し「昨夜行った私の部下に、靴を勧めなかったの?それは酷い手落ちだ。すぐに靴も用意してくれ」と言い、Mに「今日もう一度行って、靴も借りて来るように」と言ったそうです。Mは再び貸衣装屋に行き、そこで勧められた靴を借りることにしました。靴は持って帰っていいと言われたので、そのまま家に持ち帰りました。しかしそれを見たMの奥さんは
※タキシード用の靴、オペラパンプス |
「なにこれ?和田アキ子の靴みたいじゃない」
と大笑いしたのだそうです。不安になったMは、翌日会社にその靴を持っていき、上司に相談します。上司はニンマリ笑い「パーフェクトだ。全く問題ない」と言います。嫌な予感がしたMは同僚らにも靴を見せて質問すると、全員がニヤニヤしながら「その靴で大丈夫」と言います。なにやら疎外感を覚えたMは、全員が何かを企んでいると感じました。騙されている気がして、私に連絡してきたのです。
Mとの会話
Mから連絡が来た時は、まだ仕事中だったので、日本時間の22時過ぎしか話せないと伝えるとOKの返事が来ました。夜になってスカイプを繋ぐと、Mは会議室にパソコンを持ち込んで通話しているようでした。井「その靴はオペラパンプスといって、タキシードの時に使う靴だ」
M「じゃあ、俺は騙されてないんだな?」
井「もちろん。何の問題もない」
M「よかったぁ」
しかしMの疑いは晴れていません。全員が何かを企んでいるのは間違いないと言います。
M「しかし変な靴だな」
井「ダンスをする時に、靴墨で女性のドレスを汚さないようにエナメルの靴になったんだ」
M「ダンス?」
井「昔は夜会にはダンスがつきものだったんだ。で、踊っている最中に紐が解けるのが嫌だからパンプスになった」
M「待ってくれ。ボスの家に行った時、夫婦で社交ダンスをしている写真があった」
井「ん?ボスの奥さんもパーティに来るのか?」
M「来るって聞いてる」
井「新人のお前は、奥さんのダンスパートナーをさせられるかもしれないな」
M「たいへんたぁあああ!」
タキシードの靴
オペラパンプスが正式な靴であるのは間違いありませんが、足にきっちりあっていないオペラパンプスでは脱げやすく踊りにくいという声もあります。そもそも近年ではオペラパンプスを履くような本格的なケースは少なく、タキシードを着る人であっても普通の革靴で済ませることが多いようです。※内羽根式のプレーントゥ |
その際に靴はプレーントウと呼ばれる、つま先に何もない靴にすれば大丈夫です。そして内羽根式と呼ばれる鳩目がアッパーも一体になっているスタイルなら、なお良いでしょう。Mには内羽根式のプレーントウを買って、パーティの前にピカピカに磨いてもらうことを勧めました。
タキシードの着方
さらに数日経って、タキシードを取りに行ったMから連絡がありました。再びスカイプで話しをします。なんとタキシードを会社に持ち込み、会議室に鍵をかけてスカイプで話していました。M「このズボン、ベルトをつけられないからずり落ちてくる」
井「サスペンダーを使うんだよ」
M「そんなの持ってない」
井「買うしかないな。幅が広い方が肩が凝らないぞ」
こんな感じで、一つ一つ聞いてきます。
M「これは腹巻か?」
井「その通り。カマーバンドという名の腹巻だ」
M「こうつけるのか?」
井「前後ろ逆だ」
※腹巻きのようなカマーバンド |
タキシードを始めて見るMにとって、どれをどうしたら良いかわからないものの連続だったようです。
タキシードなんかやめだ!
後日、Mはタキシードを着た写真をメールで送ってきました。「これで合ってる?」というメールに「合ってる」と返事をしましたが、体にフィットしていないせいか珍妙な雰囲気になっていました。その後、再びスカイプで連絡があります。Mは仕事をしているのだろうか?と心配になってきました。Mはタキシードを着た珍妙さを奥さんに笑われ、どうしたものかと悩んでいました。どうみてもタキシードを着たMは、売れない漫才師か何かのキャラクターのコスプレでした。さらにダンスをさせられるかもしれないことに、かなり悩んでいました。
M「あーーー。和装なら悩まないのに」
井「ん?着物を持ってるの?」
M「爺様の形見の家紋入りを持ってる」
井「ニューヨークにあるの?」
M「もちろん。家宝だからね」
井「それを着ればいいじゃないか!」
M「ニューイヤーパーティに着物は変だろう」
井「何を言う!ドレスコード的に民族衣装は認められているし、紋付の羽織袴なら最上位の服装だ」
M「本当か?」
井「正装しないと入れないアスコット競馬場でも、日本人は羽織袴で入れるんだぞ!」
そんなこんなでMはタキシードではなく、羽織袴で出かけることになりました。
サムライ参上
仕事を終え、羽織袴に雪駄履きでパーティに出たMは、みんなに「サムライが来た」と驚きの声で迎えられたようです。「今日は刀をつけないの?」などのズレた質問も多かったそうですが、とても好評だったようです。タキシードを着せて、奥様と踊らせようと企んでいた上司も大喜びだったそうで「次の機会には、着物を着て夫婦で出て欲しい」と言われたそうです。まとめ
タキシードを初めて着る人が戸惑うのは当然で、事前に着方を習っておかないとわからないことが沢山だと思います。蝶ネクタイにしても、手結びだった場合は悪戦苦闘するのは必至です。着せてくれる人がいなければ、いきなり着るのではなく予習が必要でしょう。一方で、和装ができる方ならそちらの方が簡単な場合もあります。特に海外では和装の方が喜ばれることも多く、無理に慣れない洋装で行くよりも良いことがあります。日本人としては、和装ができるようにしておきたいと、この時に思いました。
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