アメリカ同時多発テロから18年 /なぜ911テロは大事件だったのか

毎年のように9月11日になると911テロのニュースが流れていましたが、ここ数年は記憶も薄くなりつつあります。18年も前の事件なので、若い人の中にはどれほどの大事件だったのかピンとこない人もいるようです。そこで、911テロの何が大事件だったのかを考えてみたいと思います。

※2機目が激突した瞬間の世界貿易センタービル


事件概要

2000年9月11の朝、アメリカ国内の4機の飛行機がほぼ同時にハイジャックされました。犯人らは自ら飛行機を操縦し、アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便をニューヨークに向かわせて世界貿易センタービル(WTC)に激突させました。残るアメリカン航空77便はバージニア州アーリントンの国防総省に激突し、ユナイテッド航空93便は途中で墜落しています。

死傷者が膨大な数だった

死者が約3000人にのぼり、負傷者は6000人を超えます。テロ事件としては最大規模の死傷者数になりました。近年の死者が100人を超えるテロ事件と比較してみました。

日付事件死者負傷者
2017/11/24 エジプトシナイ半島モスク襲撃テロ事件
309+
128+
2017/10/14 ソマリアモガディシュ爆弾テロ事件
358
400+
2017/05/31 アフガニスタンカブール・トラック爆弾テロ事件
150+
463+
2017/04/15 シリアアレッポ自動車自爆テロ事件
126+
55+
2016/07/03 イラクバグダード爆弾テロ事件
340
246
2015/11/13 フランスパリ同時多発テロ事件
130
368
2015/10/31 エジプトコガリムアビア航空機爆破テロ事件
224
0
2015/10/10 トルコアンカラ爆弾テロ事件
109
500+
2015/04/02 ケニアガリッサ大学襲撃事件
148
79
2014/12/16 パキスタンペシャーワル学校襲撃事件
148
114
2008/11/26 インドムンバイ同時多発テロ事件
166
600+
2006/07/11 インドムンバイ列車爆破事件
209
714
2004/09/01 ロシアベスラン学校占拠事件
355
783
2004/03/11 スペインマドリード列車爆破テロ事件
191
2050
2002/10/23 ロシアモスクワ劇場占拠事件
130
700+
2002/10/12 インドネシアバリ島爆弾テロ事件
202
209
2001/09/11 アメリカ合衆国アメリカ同時多発テロ事件
3025
6291+


近年のテロと比較すると、911テロの規模の大きさが一目瞭然だと思います。

アメリカ本土が初めて攻撃された

アメリカは建国以来、一度も本土を攻撃されていません。大平洋戦争で日本にハワイを攻撃されたことはありますが、本土は一度も攻撃されていないのです。これはアメリカが世界最強の軍事力を持つ証であり、ドルが基軸通貨として信頼されている理由にもなっています。

※F16は模擬弾しか持たずスクランブルしました。

アメリカは強力な防衛ラインを築いているので、防空網を突破することは不可能だと思われていました。しかし911テロでは防空網かいとも簡単に突破され、スクランブルした戦闘機が「どこに向かうんだ?」と質問するほど混乱しました。アメリカは無敵ではないと証明されたのです。

テロの瞬間が生中継された

1機目の飛行機がWTCに突っ込み、各局のテレビカメラが煙を上げるWTCの様子を映している最中に2機目が突っ込みました。さらにWTCが倒壊する様子も生中継され、数千人が犠牲になる瞬間が生中継されました。

※WTC崩壊の瞬間

遺族たちは死の瞬間を何度もテレビで見せられるのは耐えられないと語り、テレビ局は激突の瞬間を放送するのを自粛しました。あまりにインパクトが強く、アメリカだけでなく多くの国の人々の脳裏に刻まれる映像でした。

アメリカの豊かさの象徴が消失した

1972年に竣工したWTCは、当時は世界一高いビルでニューヨークの観光名所でもありました。76年に公開されたリメイク版「キングコング」では、キングコングがWTCに登りヘリを叩き落とす場面がクライマックスになります。

※WTCに登ったキングコング

80年代にウォール街が活気付き、経済の中心地がニューヨークに移ると、多くの金融会社がWTCに入居して経済活動のシンボルとなっていました。そのWTCがテロに屈したように倒壊したのです。


世界一安全な場所への攻撃

アメリカ軍の本拠地とも言える国防総省(ペンタゴン)は、誰もが世界一安全な場所だと思っていました。世界最強のアメリカ軍の中枢を攻撃するという発想は、911テロまでほとんどありませんでした。映画の世界では世界崩壊が何度も描かれましたが、ペンタゴンが攻撃されるなんて話は皆無だったのです。

※攻撃されたペンタゴン

ペンタゴンの上空に達するには強力なアメリカ軍の防空ラインを突破しなければならず、仮に突破したとしても屋上に設置された地対空ミサイルに狙われます。しかし911テロでは超低空飛行で接近したアメリカン航空77便をレーダーは捉えきれず、ミサイルは稼働しませんでした。

犠牲者の最期の声が録音された

ハイジャックされた機内では、比較的監視の目が緩かったので多くの乗客が携帯電話で家族と会話しました。ユナイテッド航空93便の乗客だったトッド・ビーマーは、機内電話を使い家族に電話をしますが、家族が不在だったため交換手に遺言を伝えてくれるように依頼しています。

※テロと戦う象徴になったトッド・ビーマー

乗客達は自分たちが自爆テロに巻き込まれることを知り、ハイジャック犯に反撃することを決めました。ビーマーとの通話の最後には他の乗客らに対して声をかけたLet's Roll(さあ、やろう)という言葉が残されていて、この言葉はテロに立ち向かうためのスローガンになりました。死を覚悟した人達の声が多く残されたのも、この事件の特徴でした。


まとめ

死傷者の数に加え、アメリカの中枢が歴史上始めて攻撃された事件として多くの人の記憶に残りました。この事件からアメリカはアフガン戦争、イラク戦争へと舵を切り、航空会社はヒステリックに思えるほど手荷物検査や身体検査を厳格化しました。大規模テロの効果を甘受したテロ組織はテロを繰り返し、その反撃として各国政府は大規模な軍事作戦を展開しました。

911テロは20世紀最後の大事件で、21世紀の混沌の始まりでした。これほど多くの犠牲者を出したテロでありながら、その後に繰り返される悲劇の始まりに過ぎなかったのです。その意味で、911テロは歴史に残る大きな事件だったと言えます。



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