本の黙読中に声が聞こえる人と聞こえない人 /娘が一部の小説にご立腹です

私の娘(13歳)は、たまに小説を指して「この本は視点が一致していないから、読みにくくて仕方ない」と不満を漏らすことがあります。中学生が小説の視点の一致など気にするものだろうか?ネットで仕入れた知識を大人ぶって喋ってるのではないか?と思っていたのですが、少し違ったようです。



読書中に文章を読み上げる声が聞こえるか?ニューヨーク大学の調査によると8割以上の人が、読書中に文章を読み上げる声が聞こえるそうです。私は子供の頃から聴こえていたので、聞こえない人がいることに驚きました。娘も聴こえているようで、「声が聞こえない人って、どうやって読んでるの?」と不思議そうでした。

読書中に映像が浮かぶか?

私は多くの場合、映像が浮かびます。これは本にもよって違い、全く映像が出てこないものもあります。最近のライトノベルと呼ばれるものは、映像が浮かびにくいですね。想像力を掻き立てる描写をする作家の文章だと、映像が浮かびやすくなります。娘も全く同じらしく、基本的に映像が頭に浮かぶものの、全く浮かばない本もあるようです。

視点の不一致とは

小説には必ず語り手が登場します。その語り手が主人公の場合、準主役の場合、第三者の天の声の場合の3パターンに概ね分けられます。

準主役が語り手になるケースは多くはないですが、「シャーロック・ホームズ」がそうです。主人公のホームズではなく、相棒のワトソン医師の目線で物語が進みます。そして恐らく最も多いのが第三者の天の声で、どの登場人物の目線でもない目線で語られます。

※シャーロック・ホームズ

視点の一致は、この視点を物語を通じて同じ視点で書き進むことです。視点が一致していないと、セリフも誰が喋っているのかわかりにくくなり、情景も混乱しやすくなります。ですから小説を書く際の基本として、視点を一致させることが挙げられます。

もちろんこれは絶対の約束事ではなく、優れた作家が意図的に視点を変えることもあります。例えば東野圭吾の代表作「白夜行」では、事件の関係者の視点を次々に登場させ、長期間に及ぶ複雑な事件を多角的な視点で浮き彫りにする手法がとられました。そして犯人2人の視点だけが最後まで登場せず、しかし読者が犯人に共感させられる高度なテクニックで、ファンを唸らせました。

※ドラマでは視点も時系列も変更されて批判が殺到しました。

しかし最近では、このような高等テクニックもなく、書き手の都合で視点をコロコロ変える小説も多く、読んでいて混乱する本が増えたのも事実です。

娘は声で聞き分けている

「小説のセリフって、それぞれ声が違うくない?」と娘は言いました。確かに私も、キャラごとに声が違います。それが架空の声だったり俳優や声優の声だったりして、物語によって多くの種類の声が出てきます。

「視点が一致してない本だとさ、どのセリフがどの声かわからなくなって、みんな同じ声になって聞こえるんだよね。誰が喋ってるかわからなくなるし、こんなんじゃ物語に入り込めないんだよ」と言います。

※お気に入りの声優、小野大輔の声は小説の中でよく再生されるようです。


そして借りてきた某大ヒット小説を取り出して「このラノベは文章が下手、下手、下手アンド下手。読んでて混乱するだけ!」と、憤っていました。

まとめ

読んでいてどのキャラが喋っているか、直感的にわからない小説は視点が一致していないことが多く、娘はそれを嫌っているようでした。以前は若手の小説家が視点を不統一のまま書くと、編集者が手直しさせていたそうですが、今はバラバラの視点の本も多いので、そのままにしているようですね。

中学生の娘が視点の一致を気にするなんて、背伸びして話しているのかと思ったら、小説から聞こえてくる声で判断していたというので納得しました。


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