実はバウハウスが最先端かもしれないと思うこの頃

※こちらは以前の「はねもねの独り言」に書いていた記事です。

パナソニック電工で行なわれているバウハウス・キッチン展に呼ばれて行ってきました。「バウハウスってなんだ?」という方のために、簡単かつ強引に説明すると「かつてドイツにあったデザイン学校」ということになります。ワイマール共和国の時代に作られ、ナチスによって破壊されたのですが、その後のモダニズム・デザインに決定的な影響を与えました。建築や工業デザインを学んだ人ならば、一度は聞く名前です。今回のパナソニック電工の展示では、バウハウスの宿舎にあった キッチンを再現しています。


再現を行なったパナソニック電工の社員の方とも話したのですが、正直言って感激しました。かつて雑誌などで見た小さな写真の風景がそこにあるのですから、ノスタルジックな気分にもなります。現地に行って部屋の採寸を行い、ドイツの会社と協力して同時の部材を集めて作り上げたというのは、一種の執念のようなものも感じます。デザインを追及していたバウハウスらしく、キッチンも一工夫あって当時の生活様式とあわせて話を聞くと面白かったです。

そこでデザインの話しになったのですが、工業デザインの世界で最も注目すべきデザイナーは誰かというと、何人かの名前が必ず挙がると思いますが、ジョナサ ン・アイブの名前は外せません。アイブの名前を知らない人は多いでしょうが、彼がデザインしたものを見た事がないという人は少数だと思います。アップル社の主任デザイナーとして99年にスケルトン(正確にはトランスルーセント)のiMacをデザインし、その後もiPodやiPhoneなどアップルの製品を手がけている人です。

キュートでポップなiMacのデザインから、現在では直線的で色を多用せずに必要最小限の意匠で構成されるミニマリズム的なデザインに移行したアイブの製品は、製品の大ヒットとともに高い評価を受けています。アップルのスティーブ・ジョブスは「デザインとはどう見えるかではなく、どう機能するかだ」 と語ったことがありますが、これはアイブの受け売りだろうと思います。アイブは必要最小限のデザインで、高度な美しさを表現することに成功しているのです。

そのアイブが影響を受けたデザイナーとして、誰もが指摘するのがディーター・ラムスです。ドイツのブラウン社の主任デザイナーだったラムスは、工業デザイ ンに残る数々の製品をリリースしています。アイブがデザインしたiPhoneの電卓は、ラムスがブラウン社でデザインした電卓に酷似しているため、ラムス のデザインの影響が多く語られています。そのことはラムスも意識していて、アイブのデザインはラムスのコピーだという声に対して、それを否定し「私に対するリスペクト」と語っています。

バウハウスの影響を受けたデザイナーが世界的ヒット商品をデザインしているという現状を見ると、案外バウハウスは流行の先端にいるのではないかと思えてきました。「そのデザインが美しくないのは、機能的ではないからだ」と言ったのは誰の言葉か忘れてしまいましたが、機能性を徹底的に追及すれば最も美しいデザインにたどり着くというのは、ある意味不変なのかもしれません。 バウハウスの本でも一冊買ってみようかと思います。










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AUTHOR: 盆汁
EMAIL: IP: 202.229.177.17 URL:
DATE: 11/07/2010 12:20:29
おはようございます。 建築は全く分からないのですが フランスに行った時 建築物を見てあれこれ言うのも良いが 人々の思いこそ大事だと 言っていた事を思い出しました。 しかし 「そのデザインが美しくないのは機能的でないからだ」は名言ですね。 町を歩くツンツルテンのスーツにお尻しか隠れないコートを見るのは嫌ですね。 あれでヨーロッパに行ったらゲイと勘違いされますよ。 追伸 ツイッターリンクありがとうございます


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AUTHOR: はねもね
DATE: 11/07/2010 21:53:40
★盆汁さん
ヨーロッパは建築物への理解が深いですからね。80年代にアメリカはお金がなくて野心的な建築ができず、ヨーロッパは規制が厳しくて建築家が思い描く建物の建設が難しいという状況がありました。そこでお金があってデザイン上の規制がほとんどない日本に各国の建築家がやってきて、勝手バラバラに建てたのでカオスになっています(^_^;) お尻が隠れるコートどころか、お尻すらちゃんと隠せないコートが増えましたね。あれは見ていて恥ずかしいです。。。


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AUTHOR: mumu.com
DATE: 11/09/2010 04:53:46
LAMYの2000系が好きなおいらにとってはバウハウスは調べずには居られない梁山泊のような存在となっていますね。 Designというのは普遍的なモノであることをここから生まれたモノを見ると感じます。 優れたデザイナーは流行に左右されず、媚びず、自分の主張を徐々に湧き出させるDesignを生み出すのではないでしょうかね~。

使うモノとして最低限の大きさや太さまで削ぎ落とし、機能美を追求する過程で生まれるようにして体現させるのがもっとも優れたDesignだとも言えるのかも知れません。 「最先端」というのは往々にして過去のモノだったりするのが面白い所ですよね。 発想の転換や柔軟な原則としての知識を用いることによって全く別物にもなりますし、そのものをそのまま見ることによっても純粋に本質に迫るモノともなり得ますからね~。 こういう学校を再興し作ってもらいたいモノですね。 展示会に行ってみたいな~

..... 全国をまわって頂ければいいのですが、バウハウスと聞いてピンと来る人は少ないでしょうね。 でもこういうのを聞くと励まされますね。 本当に良いDesignは理解し共感する人間が居るならば、国境を越え、時代を超えて、再現させるまでの情熱を生み出すほどのEnergieを秘めているという事なのですから。


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AUTHOR: 女王様
DATE: 11/10/2010 07:08:59
おはようございます。 簡素な「用の美」である、茶室・日本刀・シェーカー家具などの美しさには脱帽しますが、私自身はどうも「無駄に美しい」もしくは「無駄な美しさ」が好きなようです(笑)。 建築様式では。アール・デコよりはアール・ヌーヴォー。あの。なんでそんなにクネクネするの!!と言いたくなる曲線的草花文様に作られた鋳鉄や漆喰。

無地でもいいのに施された彩色、金箔、象嵌...。(※アール・デコという事になっていますが。ライトの設計は好きです♪) シンプルを目指せば「悪趣味」になる危険度は低いのですが、華麗で装飾的でありながらも「洗練された趣味」なのは上級っぽい気がします。 なので「無印良品」や「イケア」で部屋をまとめれば「それなりのセンス」になりますが。「それって面白いの!?」と、つい思ってしまいます。 iMacは。「シンプル」というよりは「ポップ・キュート」ではないでしょうか? 女性雑誌風に言えば「PCなのにガーリィな可愛らしさ!!色違いで揃えたい!!」って感じでしょうか(笑)。


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AUTHOR: はねもね
DATE: 11/12/2010 16:01:17
★mumuさん
LAMYのデザイナーだったゲルハルト・ミュラーもバウハウスの影響を受けていますね。ミュラーのほかのデザインも、モダニズムが感じられるものが多くあります。さまざまな装飾を削り落として、機能性だけを追及するという姿勢はドイツの多くのマテリアルに共通するものがあるように思います。 ラムスのデザインも、今でも変わらない美しさを放っているものが数多くあります。優れたデザインは時代や国境を越えていますね。ちなみにこの展示会は、残念ながら東京での展示が終わったらドイツに持って行かれるのだそうです。本来の場所に戻るということでしょうか。こういうものは多くの人に触れられて欲しいでものです。

★女王様さん
まあ、これは趣味の違いというところでしょうね(^_^;) アール・ヌーヴォーは私も嫌いではないですが、個人的にはモダニズムに惹かれてしまいます。建築でも家具でもインダストリアルでも私はそうですね。もちろんそうでない人も沢山いるので、さまざまなデザインが溢れているのでしょう。 特に建築の世界ではよく言われることなのですが、モダニズムの巨匠達は何がモダニズムであるかをきちんと説明しなかったために、いわゆる羊羹型のシンプルで面白みのない建物がモダニズムだと称して反乱する結果になりました。

ですからポスト・モダンなどの装飾文化が始まる事になりました。そういった流れの中で、北欧モダンとして売られているIKEAの家具などは私の目にはモダンではなく単なるシンプルな家具にしか見えないです。 優れたモダンは例えば白雪姫の棺と呼ばれているラムスのレコードプレイヤーなどで、こういうのは時代を超えて美しさを放っていますね。もちろんこのような傾向はアール・ヌーヴォーなどの装飾系にもあって、意味不明な装飾だらけの製品も溢れているんですけどね。


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