スーツにリュックサックはありか?

たびたびネットでスーツにリュックサックはありか?マナー違反か?といったことが話題になります。満員電車の原因とも言われていますが、たしかに電車に乗るとリュックを背負っている人が多く、スーツを着ない人の間でも定番化しているようです。今回はスーツとリュックサックの組み合わせを考えてみます。



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いつ頃からスーツにリュックを背負うようになった?

はっきりしたことはわかりませんが、80年代のアメリカ映画を見ていると、リュックサックを背負ったスーツ姿の人が出てきます。アメリカで健康志向が高まり、自転車通勤をする人が増えたため、リュックサックを背負っているわけです。



この頃のアメリカでは、スーツ姿にインラインスケートで通勤する人も出始め、そういう人たちはリュックサックを背負っています。一部の大学生は、当時出始めたデスクトップパソコンを背負子に乗せて自転車通学するなど、アメリカらしい見た目よりも合理性をとる文化が根底にあると思われます。

日本ではいつから始まったか?

私が就職した90年代前半にも、スーツにリュックサックを背負う人はいました。大抵の場合、それらの人は衣服に関心がないらしく、だらしなくスーツを着ている人達で、見た目を気にせず楽チンだからという理由でリュックサックを使っていたように思います。

流れが変わったのは97年です。ドラマ「いいひと。」で、主演の草なぎ剛さんがスーツにリュックサックを背負って登場しました。原作のマンガでは、主人公はなんの取り柄もないのですが、誰もがいい人だと感じさせる人物で、彼の周りの人達も触発されて自分の中のいい人に気が付かされます。


この主人公は、特技があるわけでもルックスが良いわけでもなく(糸のような細目がトレードマーク)、仕事ができるわけでもありません。スーツはオーバーサイズで、ダラっとした印象です。このマンガでスーツにリュックサックを背負うのは、見た目にもパッとしない主人公を表現するツールでした。しかしジャニーズの人気アイドルが演じたことで、スーツにリュックサックで通勤する人が急に増えました。このブームに乗って、ファッション誌もスーツに合うリュックの特集を組むなどして、最初のブームができました。

環境の変化と震災

2000年以降、パソコンを持ち運ぶ人が増えました。予備バッテリーやアダプターを含めると、相当な重量になります。IT化によって仕事がどこでもできるようになり、荷物が多く重くなっていきました。

それに近年の気象変化があります。突然の豪雨が増え、それに伴って天気予報も細かな地域の予報を出すようになり、以前よりも折り畳み傘を持ち歩く人が増えました。それに猛暑日も増え、熱中症が社会問題になるとペットボトルや水筒を持ち歩く人が増えました。さらに荷物は重くなります。



私も通勤カバンを体重計に乗せたら7kgを超えていたことがあり、もはや手持ちのカバンでは限界の重さになっていました。こうなるとリュックサックは、一つの解決策になってきます。

そして2011年の東日本大震災です。いつ襲ってくるかわからない地震に備え、鉄道のダイヤが乱れ、計画停電で暗くなった都心部をリュックサックで通勤する人が増えていきます。両手が空くというのは、避難する際に有効だと考えられたからです。こうしてリュックサックを使う人は、確実に増えていきました。

マナー違反なのか?

スーツにリュックサックはマナー違反だと断言する人もいて、それに対する反論も聞かれます。スーツ文化は保守的なので、マナー違反だと言うのもわかる気がします。一方で、上記のような環境の変化があるのも事実で、ダメだと決めつけるのもどうかと思います。



批判の多くは、スーツ姿にリュックサックを背負った時の見た目にあると思います。リュックはスーツを大きくドレスダウンさせ、カジュアルな印象を強めます。スーツは長い時間をかけてカジュアル化していますが、リュックはカジュアル化が急激すぎると感じるのでしょう。急激な変化は反発を招きます。ノーネクタイという過激なドレスダウンが定着したのは、地球温暖化という大義名分と、政府の指導があったからで、それらがないリュックサックには反発が多いのは当然だと思います。

スーツにリュックサックをオススメする理由

仕事の関係上パソコンや資料を持ち運ぶ必要があり、その日が猛暑で水筒も必要だし、天気予報で一時雨と言っていれば傘も持ちたいので、荷物が重くなりすぎるなら、スーツにリュックサックは大いにアリだと思います。

手持ちのカバンは重量的に限界があります。あまりに重いものを片手で持ち続けると、健康にもよくありません。上記の7kgのカバンを持ち続けていた私は、酷い肩こりと頭痛に悩まされ、整体師からは右肩が下がっていると言われました。健康を害してまで、見た目にこだわる必要はないと思います。もちろん荷物を軽くする努力が前提ですが、仕事上どうしても荷物が増えることもあります。そんな時にリュックサックを使うは、当然だと思います。



私もセミナーの講師をする際に、プロジェクター、スクリーン、パソコン、配布資料、説明用の製品(小道具)を電車で運ぶ時には、リュックに両手が手提げカバンになります。手提げカバンだけでは対応できないので、こういう際にマナーがどうこう言われても、単に迷惑なだけだと感じてしまいます。

スーツにリュックサックをオススメしない理由

スーツ文化は保守的だと書きましたが、まさにそれがあります。カジュアルなリュック姿を好ましくないと思う人は確実に一定数いるので、職種や訪問する場所によっては嫌われます。金融機関の人が大企業を訪問するのにリュックを背負って行こうとすれば、さすがに周囲に止められるでしょう。



そして私がお勧めしない最大の理由は、スーツが痛むからです。重い荷物でストラップが引っ張られると、肩から胸にかけて芯地が入っている部分を締め付けて型崩れの原因になります。またスーツの生地がストラップとこすれるので、生地も傷みます。背中の裾の部分はパンツのベルトとリュックに挟まれた状態でこすれるので、ここも傷みます。何よりリュックを背負うことでスーツがシワになるので、スーツの寿命は確実に短くなります。

相手によっては嫌われることがあり、スーツを痛めるリュックサックは積極的に使うものではないと思いますが、必要に応じて使うということで良いのではないでしょうか。

まとめ

日本ではドラマの影響があるものの、環境の変化によって荷物が多く重くなったためにスーツ姿でもリュックサックを背負う人が増えました。一方でスーツにリュックサックを合わせることを嫌う人もいるので、単に楽だからという理由で使うのではなく、必要に応じて使い分ければ良いと思います。

マナー違反だからダメと決めつけるのでもなく、やっている人が多いから構わないという安易なものではなく、それぞれの環境や事情に合わせればいいだけだと思うのですが、いかがでしょうか?


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