なぜ日本の大学生は喪服で就職活動をするようになったのか

ある調査によると、黒のリクルートスーツが出たのは2003年だそうです。それから15年ほどで、黒のスーツで就職活動をするのが当たり前になりました。夏の暑い日に、真っ黒のスーツで汗を拭いながら企業巡りをしている学生さんを見ると気の毒に感じます。なぜ、喪服と同じ真っ黒のスーツで就職活動をするようになったのでしょう?



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バブル期の就職活動はフリーダム

70年代半ば頃まで、学生はスーツを着ないで就職活動をしていました。6月頃に会社訪問が設定されていたため、ワイシャツ一枚が主流だったようです。もう少し時代を遡ると、男子学生は学生服で会社訪問をしていたようです。

※1981年に雑誌「JJ」に紹介されたリクルートスタイル。

会社訪問の時期が秋になった70年代に、スーツを着る学生が増えます。この頃の主流の色はネイビー(紺色)です。これがバブルが始まる80年代半ばになると、ライトグレイなどの明るい色のスーツも増えてきます。女性はパステルカラーのワンピースなど自由に選んでいました。なにせバブル期は売り手市場ですから、学生の格好よりも企業は何人の学生を抑えることができるかに必死だったのです。

就職氷河期に入りビジネス色が強まる

90年代に入って就職氷河期が始まると、学生のスーツは再び無地の紺色が主流になります。浮かれた気分がなくなり、無難な色に落ちついたんですね。その他にもチャコールグレー(黒に近い灰色)が使われることもありました。どちらもビジネスにも使える、最も無難な色です。就職活動だけでなく、就職してからも使えるので重宝されました。

※こちらも「JJ」から。紺とグレーの特集です。

2003年の黒の登場の背景は

さまざまな説があります。少し前にチャコールグレーのスーツが流行ったので、それがリクルートスーツにも入ってきたという説や、長引く不況による節約志向で就活後も仕事や葬式にも使えるとされたという説です。



実際にスーツの量販店では、「黒ですとお仕事にも使えますし、結婚式やお葬式に出席する際にも使えますよ」といったセールストークがあったようです。これがなんとなくお得感を煽って、黒のリクルートスーツが定着したというのが有力です。しかし少し考えれば、お葬式にも使えるスーツ(=喪服)で、仕事をするというのは大胆というか、かなり変ですよね。

海外の掲示板では

この就職活動や仕事着に黒のスーツを使うというのは、海外でもかなり奇異な目で見られているようで、英語の掲示板にこのようなやり取りがありました。

質問者
「急遽、本社のボスに会いに行かなきゃいけなくなったんだけど、黒のスーツしか持ってない。黒のスーツで行っても大丈夫かな?」

これに対して、さまざな回答がありました。
「ボスにお悔やみを言われるだろう」
「お前がリムジンの運転手なら問題ない」
「そのボスが日本人なら、何も問題ない」

ボスが日本人なら大丈夫という回答があるほど、日本人は黒のスーツを着るというイメージがついているようです。

TPOも何もない黒のスーツ

昭和のいつ頃からか、結婚式と葬式を同じ黒のスーツで出席するのが普通になりました。祝い事とお悔やみが同じ服というのは普通に考えれば変なのですが、何着もスーツが持てなかった時代の節約術であり、それを正しいマナーと呼ぶのは無理があります。さらにそれを仕事着にするという飛躍を遂げたのが、黒のリクルートスーツです。ここまで来ると、もう何でもありになってしまいます。

実際には黒といっても何色もありますし、黒と呼ばれているもの中にはチャコールグレイも混じっています。祝い事と弔事で着るスーツは別物ですし、そんな時に着ていく服で仕事をするというのは奇異です。社会人としてTPOをわきまえるように教えつつ、スーツはTPOも何もなく黒のスーツで就職活動、仕事、結婚式、葬式の全てを行えると教えているわけです。

※結婚式も黒でなくてはならない、なんてことはありません。


まとめ

売り手の都合で始まった黒のリクルートスーツは、もう15年も続いています。葬式でもないのに黒のスーツを暑い中で着なくてはいけない学生さんは大変だと思いますが、流行に乗った方が安心するという気持ちもわかります。また流行も移ろいで新たな色が流行るかもしれませんし、最近はスーツを着ない会社も増えているのでスーツでなくても良い会社も増えていくでしょう。

ちなみに私が知っている人事部で働いている方々の意見を聞くと、奇抜なものでない限りスーツの色はほとんど気にしていないそうです。


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