靴の世界で躍進する日本人 /松田笑子と早藤良太の世界

政府がものづくり立国を掲げて、さまざまな施策を試みていますが、海外でものづくりを行う日本人も増えてきました。ドレスシューズの世界でも多くの日本人が進出し、欧米の老舗で活躍する人も増えてきました。今回はヨーロッパで活躍する2人の日本人を紹介したいと思います。



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ロンドンの老舗の工房長

1840年に設立したフォスター・アンド・サンはロンドン最古の老舗であり、店頭にはチャールズ・チャプリン、クラーク・ゲーブルなどの著名人の木型が飾られ、王族からも注文を受ける有名店です。そこで工房長として全工程に関わるのが松田笑子さんです。



ここでは既製品の靴を販売しておらず、注文を受けた顧客の足型を測って製造するビスポークというスタイルをとっています。イギリスの靴は分業制で、それそれの工程を専門の職人が行うのが普通ですが、松田さんは全てに関わるイギリスでも希少な職人です。

テリー・ムーア氏に師事する

イギリスの靴学校で勉強していた松田さんが、雑誌の記事を見て著名な靴職人のテリー・ムーア氏をフォスター・アンド・サンに訪ねたのが転機の一つだったようです。ムーア氏に鍛えられ、松田さんは頭角を表していきます。



そしてムーア氏が高齢のため事実上の引退をすると、松田さんがフォスター・アンド・サンを切り盛りするようになりました。今やフォスターの顔であり、ヨーロッパを代表する靴職人の1人です。

数々のバッシング

仮に日本の伝統的な刀鍛冶が、イギリス人女性を後継にしたら、どんな反応が起こるでしょう?イギリス人に刀が作れるのか?もっと他に良い後継がいたのでは?といった声が起こることは容易に想像が付きます。松田さんも、そのようなバッシングを受けたようです。

※松田さんの作品の一つ

草履を履く文化の日本人に靴が作れるのか?女に靴が作れるのか?そういった声があったとしても不思議ではありません。なにせフォスターは、イギリスでも最も伝統のある靴屋なのです。なぜか日本のネットでも松田さんをバッシングする声が起こり、誹謗中傷が溢れることがありました。これは一部の靴屋の「僻み」だったと思われます。

お会いしたことはないのですが

私にはフォスターを注文できるほどの財力がないので、注文をした経験はもちろんお会いしたこともありません。しかし松田さんを知る人からは口々に、一度会うと刺激を受けるし、本当に素晴らしい人だから会った方が良いと勧められます。

時々日本でも受注会をやっているので、いつか注文できたら良いなと思っています。


松田さんが靴を作る様子です。

フォスター&サンの公式サイト

三ヵ国を股にかけた靴職人

ミュンヘンに工房を構える早藤さんとは、東京でお会いしました。クラシックな雰囲気の中に、曲線に独特の感性が感じられる靴を作られています。決してモダンすぎず、しかし妥協を許さない引き締まった表情の靴です。

※早藤さんの作品

イギリスの靴学校、コードウェイナーズでは上記の松田笑子さんと同期で、その後はイギリスのトップクラスの職人ポール・ウィルソン(ジョン・ロブ)に師事しています。そしてフランスに渡りパリでディミトリ・ゴメス(クロケット&ジョーンズ)に師事し、最終的にドイツのミュンヘンにたどり着きました。



この経緯は独立を目指した結果、ビザの関係などでなかなか思うようにいかず、苦境に立たされるたびに誰かが手を差し伸べてくれて、超一流の職人に師事することになったようで、早藤さんの強い信念と腕の良さ、そしてひたむきな人柄によるものだと思います。

正直、音楽の話ばかりした記憶が・・・

これは私のダメなところですが、早藤さんは無類の音楽好きで、特にイギリスの音楽に精通しているため、こんな素晴らしい職人さんを相手に音楽の話をした時間の方が長かったように思います。

※曲線に特徴があります。

そんな好きなものに一途な想いを寄せる早藤さんの姿勢は、靴にも影響していると思います。英仏独のそれぞれの表情を持ち、単にそれぞれの特徴を張り合わせるだけでなく、早藤さんにしか出せない穏やかな表情の靴を多く作っています。

早藤良太さんの公式サイト

まとめ

ここに挙げたお二人だけでなく、今や誂え靴の世界では多くの日本人が活躍しています。すでにイギリスやイタリアなどの本家を凌駕する実力を備えた日本人も多く、その勢いは増すばかりです。

政府はものづくり立国として、日本の伝統芸能の継承者にフォーカスすることが多いですが、他国の文化を吸収して育んでいる日本人にも注目して欲しいと思います。


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