「サラリーマンは靴にお金をかけろ」というのは本当か?

よく雑誌などで、サラリーマンは靴にお金を使いなさいみたいな記事を見かけます。時には「○万円以下の靴を履く人は出世しない」なんて過激なことが書いてある場合もあり、真に受けて高額な靴を買う人も少なからずいるようです。靴にお金と気を使うのは、決して間違いではないと思うのですが、最近はバランスを欠くケースが増えているように思います。今回はサラリーマンのドレスシューズを考えます。



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なぜ靴に気を使うのか

人の足の形は、人の顔と同じくらいバラバラです。同じ足の形の人は、自分のそっくりさんを見つけるくらい難しいので、万人に合う規制靴は存在しません。しかも足は全体重を預け、歩いたり走ったりと大きな負荷をかける部分です。ですから私は靴にお金を使う前に気を使って、自分の足に合った靴を探すことをお勧めします。

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革靴なんてどれも同じと思っている人も多いですが、足に合った靴を履いたら驚くと思います。革靴は重い、痛い、疲れると思っている方の多くは、足に合っていない靴を履いていると思われます。靴の話になると、人は見た目がどうのという話になりがちですが、まず自分の足を守り、疲れない靴を探すことが大事だと思うのです。

靴は10万円ぐらい出さないとダメ という風潮の発端

日本人の足は甲高幅広といわれ、欧米の人に比べて幅が広い靴が好まれました。靴の幅は狭い方からAで始まりB、C、D、Eと進むにつれて幅広くなります。長年、日本人の靴の標準はEEEと呼ばれる、特別に幅広いものが主流でした。



一方、欧米では男性でもBやCの方も多く、女性ならAという方も珍しくありません。足の幅が全く異なるため、日本では日本のメーカーが作る革靴が重宝されました。リーガルやヒロカワ製靴(スコッチグレイン)、ハルタ(学校指定のローファーが有名)などが、日本の靴の主役だったのです。

しかしいつ頃からか、日本人の足も欧米化が進み、どんどん細くなってきました。オーダー靴の店の方に聞くと、現在の20代の男性にはCやBといった細い足の方がかなり多いそうです。そんな変化に関係なく、日本の靴メーカーはEEEを主流に製造し続けていました。しかしバブル期に海外の高級品が日本に入ってくるようになり、メデイアで大々的に紹介されるようになると、海外の高級靴を試すリッチな人も出てきました。

※ジョンロブの靴

当然、欧米の靴は幅が狭いですから、足の幅が狭い人には日本製よりフィットします。本来の足の幅がDなのにEEEを履き続けてきた人が、Dの靴を履くと驚きます。重さも感じにくく疲れにくいので、まるで別次元の履き心地を覚えてしまうのです。こうして感動した人達が「日本製の靴はダメだ。10万円くらいする海外の靴は最高だ」と言うようになっていきました。

高価な靴は何が違うのか

材料と製法が違います。ブランドの名前がつくから高くなるだけと言う人もいますが、価格が上がると同じ見た目の革靴でも全く異なったものになります。

2万円代以下の靴の大半は、セメント製法という方法で作られています。靴の足を包む革の部分(アッパー)と、靴底のソール部分を接着剤でくっつける方法で、安価で大量に作ることが可能です。基本的に靴底が擦れて無くなっても交換は出来ず、靴底が磨り減ったら寿命です。しかし最近は、靴底が張り替えられるセメント製法の靴も出てきているようです。



3万円代を超えると、グッドイヤーウェルト製法とか、マッケイ製法と呼ばれる方法で作られた靴が多く出てきます。これはアッパーとソールを糸で縫い合わせてつける方法で、靴底が磨り減ったら交換が可能です。3回ぐらいは張り替えられるので、長く使うことが可能です。

※グッドイヤーウェルト製法の断面

これ以上の価格になると、革など素材が高価なものになり、さらに上の価格帯になると個々の足の形に合わせて作られるオーダー靴、ビスポークという靴の世界になります。ビスポークは注文してから半年ぐらいで出来上がるのが普通で、価格も数十万円になります。

高級靴を買い求める人達

ある靴屋さんと話していると、来春に新入社員になる大学生が10万円近い靴を悩みに悩んで買っていくことがしばしばあるそうです。確かにその店に置いてある10万円近くする靴は、かなり良いものばかりです。しかし革靴は1足しか持っていないと、痛みも早く悪臭も放つようになります。最低、3足は用意したいところです。10万円も出すなら3万円の靴を3足買った方が快適に過ごせるので、なんとももったいない気がしました。

※エドワード・グリーンの靴

またバランスの問題があります。3万円くらいの量産スーツに10万円の靴はバランスが悪いように思います。靴にお金をかけるのは悪いことではありませんが、靴ばかりにかけるならスーツやカバンにも少し気を配って良いようにも思います。

靴が趣味と割り切る人は別

中には靴が趣味の人がいて、お金を貯めてビスポークの靴を履く人もいます。これはその人の趣味の問題なので、これをどうこう言うつもりはありません。私の周囲にも、安い既製のスーツに数十万円のビスポークシューズの方がいますが、本人が楽しんでいるので良いと思うのです。また外反母趾や骨折などによる変形、生まれながらに特殊な足の形の方などで、既成の靴では足に合わないので高い値段でもオーダー靴を買う人もいます。こういう方のことをどうこう言うつもりはありません。



しかし靴にお金をかけなければならない、靴が安いと人格も安く見られるなどの脅し文句で、無理をして高価な靴を買う人を見ると悲しい気持ちになるのです。その方が裕福ならまだしも、無理をして買う人がいるのはなんとももどかしいです。高価な靴を履いて出世できたり立派な人物に見えるなら、とっくに大勢の人が靴にお金をかけているはずです。

革靴は最低3足は必要

革靴は一度履いたら2日は休ませないと革が吸い込んだ足の汗が乾かないので、最低3足は欲しいところです。そして中2日で休ませながら3足でローテーションを組むと、靴の寿命もぐっと延びます。そのため無理して高価な靴を買うよりも、買える範囲の靴を3足買った方が快適な生活を送ることができるのです。

まとめ

靴は全体重を支えるため、歩き方や立ち方にも影響するので、十分に吟味する必要があります。そういった目的で靴に高価な値段を払うのはともかく、雑誌等の売り文句に流されて高価な靴を履かない人はダメといった風潮が今でも残るのが気になります。さらに外国製の靴の方が優れているといったことを言う人もいますが、今は日本の靴の技術は優れているのでイタリア製やイギリス製の方が優れているとは言えません。

そういった言葉に流されることなく、体に合った靴を見つけて頂けたらと思います。そして無理に高価な靴を買うよりも、3足そろえてローテーションすることをお勧めします。


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