そうだ靴を磨こう /靴磨きの基本的なこと

革靴を買ったら、避けて通れないのが靴磨きです。どんなに身なりを整えても、靴が汚いと途端に野暮ったく見えますよね。まさに足元を見られるです。しかし靴の磨き方がわからないと言う人も結構いるようなので、今回は基本的な磨き方を解説したいと思います。



関連記事:そうだ靴を磨こう2 /ワックスで光らせよう

なぜ靴磨きが難しいと思われるのか

ここ10年くらいファッション誌ではNGという言葉が流行していて、あれはダメこれもダメというネガティブな情報が増えました。その影響でファッションサイトでも、同じくNGという言葉が多く見られます。やるべきことよりやってはいけないことが増えると、なんだか小難しくて面倒な気がしてきますよね。

そして革がデリケートで、繊細なものと思っている方が多くいるようです。これは間違ったことではありませんが、最近は過剰に気を使う人が増えたように思います。そもそも革靴の本場はイギリスやアメリカです。彼らは日本人のように細かく気を使いません。革靴が繊細で、間違った手入れをしたらすぐにダメになるなら、イギリスやアメリカで革靴文化が続くはずも無いのです。あまり過敏になる必要はありません。



さらに靴磨きは基本的な流れは似ていても、人によって様々方法があります。そのため人によって言うことが変わるので、どれが正しいかわからない気がしてきます。私が靴磨きの基本を教えてもらった飯野高広(「マツコの知らない世界」などに出演)さんは、靴磨きは「カレー作りに似ている」と言っていました。隠し味にチョコを入れたりインスタントコーヒーを入れたり、牛肉を使うか豚肉を使うかなど、家庭によって造り方が違うように、靴磨きも人や家によって様々な方法があるのです。

そんなわけで、今回は基本的な方法を書いていきます。

靴磨きの目的

主に目的は3つあります。汚れ落とし、革の保湿、靴の化粧です。今回は汚れ落としと靴の保湿のための靴磨きを紹介します。靴の化粧はワックスを使った方法になるので、これは別の機会にご紹介します。



革は人の肌と同じで、汚れたままだと荒れてきます。そして乾いてカサカサのまま放置しておくと、同じく痛んできます。定期的に汚れを落として保湿することで、美しい状態を保つことができるのです。そして上質な革を何年もメンテナンスして使い続けると、新品にはない美しい質感が現れてきます。

※今回はこのサイドエラスティックシューズを磨きます。

ブラシでホコリを落とす

まず靴についた誇りを落とします。これは家に帰ってきて靴を脱ぐときに、毎日やっておくべきことですが、靴を磨く前にも入念にやりましょう。特にシワの間や細かい隙間などを丁寧にホコリを落とします。今回はサイドエラスティックシューズを使っているので靴紐はないですが、紐靴は必ず紐をとってから始めましょう。



ブラシは化繊よりも細いので、汚れ落としに向いていると言われる馬毛のブラシを使っています。しかし化繊を使うプロもいるようなので、あまり拘らなくても良いかもしれません。ブラシの種類より大事なのは靴全体を小まめに丁寧にブラッシングすることです。




クリームを落とす

この作業は毎回する必要はなく、靴クリームが靴の上に何層も溜まってきたら落とすという感じです。私は靴磨きを4〜5回やったら、次はクリームを落とすというペースでやっています。それ以外にも、靴の状態を見てやることもありますが、それは追い追い覚えていけばいいと思います。

ステインリムーバーを古くなったTシャツなどに染み込ませて、優しく全体を拭いていきます。コツは力を入れずに優しく拭くことです。ゴシゴシこするのは人間の皮膚と同様に、良いことはありません。布が黒くなったら、新しい面にステインリムーバーをつけて、優しく拭いていきましょう。



何年もクリームを塗り続けていた靴は、クリームを落としきれないことがあります。その場合は靴を洗ってしまえばいいので、その方法は別の機会にご紹介します。




クリームを塗る

ワックスではなくクリームを塗ります。大抵の場合、ワックスは缶に入っていて、クリームは瓶に入って売られています。ここで使うのは瓶の方です。

※手前がワックス、後ろの瓶がクリームです。

ボロ布につけて塗っても良いですし、指で塗るという人もいます。私はブラシを使って塗ります。古くなった歯ブラシでも良いですし、専用のものでも良いです。ブラシを使う理由は、シワの隙間にクリームを塗り込みたいからですが、ブラシでなければダメというほどでもありません。




塗り方もつま先から広げていく人、靴全体ポンポンと細かくつけてから伸ばす人など様々です。いずれにしてもポイントは、一気にクリームをつけすぎないで、少量を重ねていくことです。薄い茶色の靴などは、大量のクリームを一気につけると染みになる可能性があります。またクリームをつけすぎても、次の工程でクリームを落としていくので、塗りすぎは無駄になるだけです。



そしてここで意見が分かれるポイントがあります。クリームを塗った後に、一定の時間を空ける人と空けない人がいるのです。人によっては、このままクリームが染み込むのを待った方が良いという人もいます。しかし私はこの時点では、余分なクリームがついているので、すぐに次の工程に入ります。





ブラッシング

余分なクリームを落とし、クリームを靴全体に広げる作業です。つま先から後ろに、踵から前にブラッシングする人もいますが、私はそこまでこだわっていません。大事なのは靴全体をくまなくブラッシングすることです。使っているのは化繊のブラシです。ここを馬毛で行う人もいるようですが、クリーム落としが目的なので、100円ショップのブラシでもいいと思っています。ただし少し大きめの方が、作業がしますいです。



靴にシワがある場合は、シワの流れに沿ってブラッシングしていきましょう。シワの部分にクリームが溜まっていると、シワの部分だけが他より柔らかくなって、革が裂ける原因になります。





とにかくここは丁寧に、優しく全体をブラッシングしまず。そして私はこの後で、少し時間を置いてクリームが染み込むのを待ちます。待つといっても、クリームを片付けたりクリームを塗ったブラシを洗浄する10分ほどで、何時間も待つわけではありません。これもその人の流儀によって、待ち時間はさまざまです。全く時間を空けない人もいるので、絶対に時間を空けなくてはダメというほどでもありません。

クリームを拭き取る

乾いた布でクリームを拭き取ります。ここでも古いTシャツを使う方が多いですが、私は古い靴下を使うのが気に入っています。靴下に手を入れて、そのまま拭き取っています。これも好き好きで、自分に合った方法を見つけてください。



クリームが均一に塗られていたら、クリームを拭き取っただけで靴が光り出します。ブラッシングの後、少しだけ時間を開けた方がよく光る気がしますが、効果はさほどわかりません。光り方はともかく、ここでも丁寧に拭き取ることがポイントになります。


靴拭き専用のクロスもあります。


これで靴磨きは一旦終了です。

ワックスで光らせる

この後、ワックスを使って光らせる工程があります。しかし私は全ての靴で、毎回行う必要はないと思っています。毎日顔が写るほどピカピカの靴を履くのも良いですが、それってやり過ぎな気がしませんか?それに磨く手間も大変です。



私はブローギングか入った靴、セミブローグやフルブローグはワックスを入れずに少しマットな感じの方が好きなので、ワックスをすることはほとんどありません。しかしこれも好みです。ピカピカに光らせたブローグが好きな人もいるので、そういう方は気合を入れて磨きましょう。

※セミブローグの靴

ワックスを使った磨き方は、別の機会に解説します。とにかくここまでの流れを抑えておけば、靴磨きはほとんど大丈夫です。

関連記事:そうだ靴を磨こう2 /ワックスで光らせよう

普段のお手入れ

綺麗に磨いても、満員電車の中で踏まれたり、汚れがついたりすることがあります。その度に上記のような工程を踏んで磨いていたら、毎日が大変です。

※このブラシで磨くだけです。

これも飯野高広さんに教わったやり方ですが、ホコリを馬毛ブラシで落とした後に、クリーム落としに使ったブラシでブラッシングするだけで、かなり綺麗になります。ブラシの先端にクリームが残っているので、それが塗り広げられてピカピカになるのです。その後さっとボロ布で拭けば完璧で、これだけなら数分で終わります。

やり過ぎにはくれぐれも注意

靴磨きは覚えてしまうと楽しい作業です。汚れていた靴が生気を取り戻し、光っていく様子は達成感もあります。だからと言って、やり過ぎは注意が必要です。

靴磨きは汚れを落とすと同時に革の保湿を行う作業です。保湿をし過ぎた革は常に濡れているのと同じで、どうしても革が弱くなります。そのためシワになっている部分から裂けてくるので、やり過ぎに注意しましょう。慣れてくると、革の保湿が不足してカサカサになりかけてるのか、保湿は十分で汚れているだけなのかわかるようになります。保湿が十分な時は過剰にクリームを入れずに、上記のクリーム落とし用ブラシでブラッシングするだけで十分です。

まとめ

靴磨きのポイントは、とにかくブラッシングにあると思います。汚れ落としの際にどれだけ丁寧に落とせるか、クリーム落としの際にどれだけ均一にクリームを伸ばして余分な句を落とせるかで、仕上がりが変わってきます。優しく丁寧に、少し余計に時間をかけるつもりでブラッシングをすることを心がけてください。

それと個々に書いてある方法とは違うやり方の人もいると思いますが、それらのやり方を否定するつもりはありません。また少々違った手順で行っても、すぐに靴がダメになることは滅多にありません。あまり細かいことに気を使いすぎることなく、定期的な靴磨きを習慣づける方が大事だと思います。


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※最初にこの手のセットを買っておくのも良いかもしれません。

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