子供のための歴史講座20:なぜ日本はアメリカと戦争したのか?

いや~乱世乱世。時は1930年代、旧日本陸軍には2人のリーダー格になる人物がいた。石原莞爾と武藤章だ。この2人の主導権争いが、戦争をややこしくしている。ちなみに2人とも米英との戦争には猛烈に反対していた人物だ。

※左:石原莞爾 右:武藤章

娘「ん?じゃあなんでアメリカと戦争になったの?」

盧溝橋事件を覚えているかな?

娘「おー!トイレに行って戦争になったやつ!」

そう、その頃から石原と武藤は対立していたんだ。石原は次の戦争の相手はソ連だと考えていたから、中国なんかと戦争している余裕はないと反対していた。武藤も中国との全面戦争は反対だったけど、華北地方だけは押さえておきたいと思っていた。石原は華北地方を抑えるのにも反対で、とにかく対ソ連に備えるために余計な兵力を使いたくなかった。


娘「なんで、その華北地方を押さえたいの?」

天然資源があるからだ。ソ連と戦うにしても、石炭を日本から持ってくるわけにはいかないからね。そこで2人は揉めるんだけど、結局は盧溝橋事件で日中戦争が勃発して泥沼になってしまう。

娘「ねえ、今日はアメリカとの戦争の話じゃないの?」

まあ、待て。問題は天然資源なんだ。華北を押さえても石油とボーキサイトが不足するのは明らかだった。それらを手にするには東南アジアに行かなくちゃいけない。しかしインドネシアやベトナムなど、それら天然資源がある国はイギリス、フランス、オランダなどの連合国が支配しているんだ。

娘「だから戦争するの?」

迷うんだ。東南アジアに攻め込むということは、連合国を敵に回すことになるからドイツに味方することになる。武藤は連合国との戦争には反対だった。だって勝てるわけないから。

娘「そりゃ、そうだ」

ところがヨーロッパで戦争が始まると、ドイツが連戦連勝だ。電撃作戦でポーランドを占領したと思ったら、フランスを占領してイギリスも陥落寸前だ。こりゃあ、ドイツが勝ちそうだ。そうなるとインドネシアやベトナムはドイツ領になってしまう。

娘「だから日本はドイツと仲良しになるの?」

まあ、そういうことだね。ドイツに「お手伝いしまーす!」って言って東南アジアを攻めれば、天然資源を手に入れることができそうだし、そうなればソ連との戦争に備えられる。そこでドイツとイタリアとの間で、三国同盟を日本は結んだんだ。

※三国同盟

娘「なんか、日本ってズルくない?勝ってる方に味方するってさ」

確かにそういう気がするね。だけど日本は国力も弱いので、大国相手に単独で歯向かうことは難しいんだよ。そして三国同盟を結んだあたりから、ドイツの敗戦が始まる。連合国が大攻勢を仕掛けるんだ。

娘「ねえ、アメリカが出てこないんだけど」

武藤はアメリカとの戦争には大反対だった。あんな大国と戦争して勝てるわけないって思ってた。しかし武藤はドイツと手を組んでも、日本の事情を説明すればアメリカとの戦争は避けられると思っていたんだ。

※日米交渉を行ったフランクリ・ルーズベルト大統領


娘「んー、それって考えが甘いような・・・」

甘かった。アメリカはドイツと手を組んで東南アジアに進出した日本に激怒した。そもそも日本は石油をアメリカからの輸入に頼っていたから、アメリカは石油を売らないと言い出して日本は大騒ぎになってしまった。半年もすれば日本は石油がなくなるというピンチに陥って、アメリカとの戦争に傾いていくんだ。

娘「なんというか、見通しが甘いというか」

そうなんだよ。武藤はアメリカの恐ろしさを周囲に説きながら、自らアメリカとの戦争に向かう舵を切ってしまった。

娘「そういえば、石原さんはどこ行ったの?」

ああ、石原さんは陸軍大臣の東条英機と大喧嘩して飛ばされてた。

娘「ダメダメだぁ」

今回は武藤章を中心に説明したけど、日米開戦には沢山の要因が絡んでいるから、それは少しずつ教えていくよ。


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