コールドスチール /登山からゾンビの襲来まで備えるメーカー

1980年にリン・トンプソンによって設立された刃物メーカーのコールドスチールは、本格的なアウトドアに使えるものからゾンビが襲来した時にしか使えそうにないものまで作っている変なメーカーです。パフォーマンス大好きな名物社長の存在もあり、いかにもアメリカの企業といった感じです。今回は、コールドスチールの一風変わった商品を紹介したいと思います。



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リン・トンプソン

とにかく目立ちたがり屋で、テレビやwebに顔を出してはパフォーマンスをしています。さらにあちこちのイベントにも出没し、愛嬌のある笑顔とメタボ気味の体型でマスコット的な存在にもなっているようです。肉やロープや人体模型を自社の刃物でバッサバッサと切り刻み、どや顔で自社製品の素晴らしさを語る様は中二病をこじらせたまま大人になったオッサンそのもので、これだけ見ると痛いメーカーのように見えます。

※この人が社長です。


ところがリン・トンプソンは、中二病をこじらせただけのオッサンではなく、アメリカの大自然でアウトドアを楽しむ人々からも支持を得る製品をいくつも作り出していることから、アウトドアメーカーとしても一定の地位を確立しています。真面目な人がふざけているのか、ふざけた人に凄い才能があったのかわかりませんが、トンプソンの作る製品にはアウトドアユーザーに支持されているのです。




ちなみに日本が好きなようで、手裏剣の猛練習をして今では名人級らしく、商品名にはタントー(短刀)、サンマイ(三枚)など日本語が多く見られるのも特徴です。

ゾンビ用?中二病こじらせ系?

トレンチホーク

第一次世界大戦では、トレンチ(塹壕)戦が行われました。その際にトレンチ内で白兵戦になる場合があり、斧は道具兼武器として用いられています。その後、斧はベトナム戦争で支給された記録がありますが、それから廃れていきます。しかし21世紀に入り、アフガン戦争などではドアを壊して住宅内に入ることが増え、再び斧が兵士に支給されるようになりました。





軍用に作ったものを民生品として売っているのかもしれませんが、一般人には道具としての斧があれば十分なはずで、なぜ道具兼武器としてデザインされた斧を売っているのかは知りません。誰が買うのでしょう?


ブルックリン・スマッシャー

野球のバットですが、ポリプロピレン製の折れないバットです。見た目より長く、重さも1kgあります。これで野球の素振りの練習をする人もいるようですが、これは野球のボールを打つことを目的としたバットでないことを製品名が物語っています。





ロシアでは年間10万本のバットが売れるのに、野球ボールは50個程度しか売れないそうです。そういう人達のためのバットで、私にはゾンビが出てきた時ぐらいしか使い道がありません。。。


シティ・スティック

杖(スティック)です。400g以上あるので杖としてはやや重い部類に入りますが、カーボンファイバーを使った丈夫な杖です。単に歩行の補助としては過剰な頑丈さで、武器として十二分に使えます。ゾンビの出没が心配なお年寄りや足の不自由な方には、ピッタリの商品ですね。





コールドスチールの杖には、俳優のスティーブン・セガールがプロデュースした杖もあり、護身術用途に使えるのだそうです。しかし以前にも書きましたが、護身術を覚えるくらいなら走れと言いたいです。


アウトドアの名品

サンマイシリーズ

サンマイとはコールドスチールが日本刀の製法である三枚打ちを模して作ったブレードのことです。日本刀は高高度の芯材を、粘りがある柔らかい鋼材でサンドイッチして強さと粘りを両立しました。サンマイシリーズも同様に高高度鋼材のVG-1を300系の柔らかい鋼材でサンドイッチにして作られています。


マスターハンター・サンマイIII

枝をぶった切ったりバトニングしてもへこたれず、調理でもスパスパ切れることからアウトドア系ユーザーに人気です。最高の切れ味を求めていて、箱から出して腕毛が剃れます。





トレイルマスター・サンマイIII

コールドスチールの中では最上級品に位置するアウトドアズマンは、刃厚8mmと冗談のような分厚さで、鉈か剣のような雰囲気です。耐久性抜群でハードな使用に耐えうるとうたっていますが、そりゃそうでしょう。



キャンプや釣りにはオーバースペックで、日本ではちょっと想像がつかないような過酷なアウトドアで使うようです。


ブッシュマン

山刀として見るとブレードが薄いのですが、それでも狩猟のトドメ刺しに使っている人もいるそうです。刃持ちが良くサビに強く、取り回しが良いうえに安価なので乱雑に扱っても大丈夫と、キャンパーにも人気です。一枚板を丸く巻いただけのグリップで、シンプルな造りなので頑丈に出来ています。




ブッシュナイフなので細かな作業には向きませんが、これで調理もこなす人もいるようです。もちろん薪割りも問題ありません。

ブロークンスカル

以前、スパイダルコのデリカを書いた時にも触れましたが、ブロークンスカルは驚異の軽量級です。ここまで軽量にするには様々な工夫が必要でしょうし、コールドスチールらしい頑丈さを持たせるための努力は並大抵のものではなかったでしょう。プロレスラーのスティーブ・オースチンがプロデュースした製品なのでイロモノ的に見られがちですが、発売開始と同時に多くのアウトドア志向の人達が手にして品薄になっていました。





まとめ

見れば見るほど変なメーカーです。社長のリン・トンプソンは仕事を楽しんでいるようですし、ユーザーからも支持されているので、やはり素晴らしいメーカーなのだと思います。とにかく頑丈で切れ味抜群の製品をリリースし続けているのですから、ナイフを検討するなら候補に入れる価値があります。武器の方はどうかと思いますが、銃社会のアメリカではコールドスチールの武器の方が平和的なのかもしれません。日本ではあまり必要がない商品も、案外アメリカでは大真面目な製品なのかもしえませんね。

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