スパイダルコのナイフを紹介 /機能性を追求したナイフ

初めてスパイダルコのナイフを見たのは、アウトドア雑誌の広告だったか、お店に並んでいるのを見た時だったか、とにかく90年代だったと思います。第一印象は「不細工なナイフ」で、風情もロマンも感じられない変な形だと思いました。なにせ当時のアウトドアナイフのフォルダーといえば、バック社のナイフでした。しかし、いざ使ってみるとよく考えられたナイフだとわかります。今やトップクラスの人気を誇るブランドに成長し、アウトドアナイフといえば、スパイダルコと言う人も少なくありません。


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スパイダルコの歴史

サル・グレッサーが1976年に最初の製品を完成させて、世に送り出しました。ポータブルハンドと呼ばれるこの製品は、宝石などを使ったアクセサリー作りに使われたようですが、奇妙な外観から「スパイダー」(蜘蛛)と呼ばれていたようです。この製品にちなみ、社名は蜘蛛を意味する「スパイダルコ」になりました。



次に製作したのは、トライアングル・シャープナーでした。これは誰でも簡単に刃物を研ぐことができる製品で、今でも人気の商品として売られています。このトライアングル・シャープナーを妻のゲイルと全国で売り歩く中で、様々な種類のナイフと持ち主に会い、人々がナイフのどこに不満を感じ、何に満足しているかを知りました。やがてサルは、理想的なナイフを自分で作ることを考えるようになります。




そして1981年、最初のナイフC01ワーカーを誕生させました。片手で開けるサムホール、ポケットクリップなど、現在のスパイダルコの特徴が備わったナイフです。ブレードに空いた大きな穴、サムホールは奇妙な印象を与えますが、片手でナイフを開くことを容易にしました。また片方にしか突起がないサムスタッドでは、右手(または左手)でしか開ませんが、サムホールは両利きに対応しています。

※C01ワーカー


スパイダルコのナイフは、従来のナイフとはあまりに形状が異なるので突飛な印象もありましたが、使った人からの評価は高く順調に売れていきます。そして1991年にエベレストに登頂したアメリカの登山隊とスウェーデンの登山隊が、共にスパイダルコのナイフを使用したことで、その知名度は決定的になります。

以降、スパイダルコはナイフ業界のリーディングカンパニーの1つになります。人間工学を徹底的に検証し、あらゆる素材をしつこいほど試験して採用する先駆的なナイフ造りは他のメーカーにも影響を与え、ガーバー社やベンチメイド社と激しい開発競争を展開することになりました。ガーバーが抜け落ちた今も激しい競争は続いていますが、スパイダルコはその競争の中でトップを走り続けています。

スパイダルコの3つの特徴

1.サムホール

片手でナイフの刃を出すためのアイデアはいくつもありますが、スパイダルコはサムホールで行います。キャンプに使うくらいなら片手で出せなくてもいいのですが、釣りなどで片手が塞がっている時にはありがたみを感じる機能です。



2.クリップ

クリップはナイフの再発見だと言う人もいます。ベルトやポケットにクリップで止めておくことで、いつでもすぐに取り出せますし、どこにいったかすぐにわからなくなる小型ナイフも、すぐに取り出すことができます。クリップによって、ナイフの便利さが飛躍的に向上したと言った人もいるそうです。

※ドラゴンフライのクリップ

※デリカのクリップ


私みたいに使い道の大半が日常生活だと、さほど恩恵は感じません。しかし夜釣りをする人など、アウトドアを楽しむ人にとっては大きな差になっているようです。

3.豊富な鋼材

スパイダルコでは、一つのモデルに対して複数の素材で販売されています。用途によって、鋼材を選べるのです。最もスタンダードなVG-10は、ステンレス鋼として人気の高い鋼材です。刃持ちが良く、それでいて研ぎやすいと高評価です。私はVG-10の特有の粘りが、研ぐのを苦手に感じ感じるのですが、これは私の修行不足なだけだと思います。

H-1鋼は、錆びないステンレスです。ステンレスは錆びにくい鋼材ですが、海の塩水に晒され続けると錆が出てきます。ところがH-1鋼は塩水に数年漬け込んでも錆びないほど、他のステンレスを寄せ付けない錆にくさです。そのため釣り用に愛用する人が多くいます。

※海釣り用として人気が高いH-1鋼を使用したパシフィックソルト。

ZDP-189は、とにかく硬い鋼材です。これ以上に硬いナイフは、そうそうありません。刃持ちが良く切れ味は最高です。しかし硬すぎるため、落とすと割れることがある鋼材で、使い道を選びます。さらに砥石ではほとんど砥げません。大抵の砥石より遥かに硬いからです。紙などを切るだけなら、永遠に刃を砥がなくてよいのでは?と思えるそうです。

※ZDP-189を使用したエンデューラ


CPM S30Vは、ZDP-189ほどではないですが、かなり硬い鋼材です。しかし研ぎやすいと評判で、バランスの良いステンレスと評判です。私は使ったことないですし研いだこともないのですが、研ぎ方にちょっとしたコツがいるそうですが、それほど難しくないそうです。

※CPM S30Vを使った大人気商品のパラミリタリー2。


スパイダルコでは、これらの鋼材をナイフの用途によって選ぶことができます。


代表モデル

ハーピー

欲しくはないけど、とても気になるモデルです。知り合いのお母さん(70歳代)が持っていて、とても驚きました。なぜ高齢の女性が、このような恐ろしい形状のナイフを持っているかというと、山菜採りに使うからだそうです。ナイフショップで話を聞くと、ハーピーは山菜採りガチ勢に高い評価を得ているそうです。

本来はヨットマンのために、海水を含んだロープを切る目的で開発されたようですが、鎌のような形状で力が入りやすいのが山菜採りでも人気だそうです。フォルダーなので気軽に持ち運びできて、力を入れやすく、抜群に切れるので口コミで評判が広がったそうです。ちなみに映画「ハンニバル」で、レクター博士の凶器として登場しています(直刃モデル)。


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全長:165mm
刃長:70mm


ドラゴンフライ2

最高の日常ナイフと評判が高く、私も日常の軽作業によく使っている小型ナイフです。小型ナイフは使いにくいものが多いのですが、このナイフには当てはまりません。軽くて小さくて、誰が持っていても役に立ちそうなナイフです。刃長が60mmを切っているので、銃刀法に触れないのもポイントです。



全長:140mm
刃長:58mm

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デリカ4

アウトドアナイフに悩んでいる人は、デリカ4かエンデューラ4を買っておけば間違いないと思います。必要なサイズによって、どちらのモデルかを決めれば、買って失敗したとは思わないでしょう。それほどよく出来たナイフです。詳細は、以前ブログに書きました。




全長:181mm
刃長:73mm

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エンデューラ4

デリカと並ぶスパイダルコの大定番です。大型なので、料理にも使いたい人にはこちらが向いていると思います。




全長:222mm
刃長:87mm

クリケット

こちらは日常生活の中で使うことを考えているようです。曲がった刃先は、ダンボールの開封などにも便利だそうで、一度使うと手放せないという人が結構います。私は曲がった刃を研ぐのが苦手なので敬遠していましたが、あまりに進められるのでいつか買ってみようと思っています。


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全長:118mm
刃長:48mm

製造国

スパイダルコはアメリカのメーカーですが、大部分を日本で作っています。岐阜のGサカイが製造を担当して、高い信頼を得ています。また少数ですが、アメリカ本国や中国などでも作られています。

アメリカ製

スパイダルコの最高級品は、アメリカで作られています。アメリカ製は手間を惜しまず作られていて、工作精度も最高のものばかりです。



日本製

アメリカ製の工作精度には及びませんが、妥協できるところは妥協して、価格とのバランスが良いとの評価を得ています。この価格帯ならスパイダルコしかないと言わしめる、コスパの良さが魅力になっています。

中国製

安価なシリーズを作っています。以前はサムホールがない、一目で中国製とわかるものが中心でしたが、最近ではサムホールもついていて、ぱっと見ではわからなくなってきています。日本の店頭に並ぶことは稀で、ネットの通販サイトでよく見かけます。



まとめ

見た目は格好良くないですが、使いやすさを追求したナイフです。アメリカの合理性を具現化したような製品で、高い人気を誇っている理由は使ってみればわかります。最近は「パワー・ウエイト・レシオ」という言葉を使うほど、軽さと強度の両立にこだわっていて、本格的な登山家にも支持されています。ナイフに迷ったら、スパイダルコを選べば間違いないと断言できる優れもので、製造が日本というのも安心できます。多くの人に試して欲しいナイフです。


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