ビクトリノックスの世界 /マルチツールの長い歴史

十徳ナイフの定番として知られるビクトリノックスは、100年以上の歴史を誇るスイスを代表する企業の一つです。キャンプや旅行のお供として、万一のためにキッチンの引き出しに眠る道具として、ビクトリノックスは多くの場面で使われてきました。今回はビクトリノックスの歴史や魅力について書いてみたいと思います。



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ビクトリノックスとは

カール・エルズナーは、1860年にスイスのイーハッハに生まれます。父親が帽子職人であり、カールも手に職を持とうとドイツやフランスで鍛冶職人として修行を積みます。特にドイツのゾーリンゲン地方には鍛冶屋が集まり、ヨーロッパ各地に多くの刃物を輸出していました。

※カール・エルズナー(写真:ビクトリノックス公式サイト)

カールはスイスに帰ると、母ビクトリアとともに鍛冶工房を設立します。1884年のことでした。スイス軍がドイツのゾーリンゲンで作られたナイフを使用していたため、カールはスイス軍に熱心に売り込んで正式に採用されることになります。

1897年に今日のマルチツールの原型になるオフィサーナイフの特許を取得すると、1909年には亡くなった母親の名前のビクトリアを社名にします。またこの頃には類似品が大量に出るようになったため、スイス国旗とそれを守る盾をイメージしたシンボルマークを使うようになります。

※スイス軍に正式採用されたソルジャーナイフのレプリカ

社名は1921年に、ステンレスを意味するinoxとビクトリアを混ぜてビクトリノックスと変更されました。二代目カールの時代になり、大量生産を実現したビクトリノックスは、第二次世界大戦の際に各国の兵士の目に触れ、特にアメリカ兵の土産物として人気になります。以後、ビクトリノックスは世界中で販売されるようになっていきます。

ビクトリノックスの思い出

私が幼い頃、キッチンの引き出しにビクトリノックスが入っていました。貰い物だったそうで、コルク抜きにスプーン、フォークが付いていて、母はたまにしか使わないコルク抜きはビクトリノックスで済ませていました。

家族で旅行に行き、外で弁当を食べる時にも、そのビクトリノックスは登場しました。スプーンとフォークが両端についているので、決して食べやすいわけではないのですが、特別なツールで食べるのは妙に嬉しかった記憶があります。

ビクトリノックスの特徴

基本構成はナイフに便利なその他のツールを付加したもので、様々な種類とサイズがあります。しかし911テロ 以降、飛行機内にマルチツールであっても持ち込みができなくなり、ビクトリノックスの売り上げは激減し、ナイフが付かないモデルも出てきました。

※ビジネスツール


またアウトドアでの使用を前提にしていたラインナップから、オフィスなどインドアでの利用を想定したツールも多く見られるようになっています。アウトドアではレザーマン を意識したのかプライアーツールも出し、近年では腕時計なども出しています。

製品の紹介

トラベラー(現在の名称はクライマー)
とりあえずビクトリノックスを試したい、何を買って良いかわからないという人にも勧められる定番商品です。オーソドックスな組み合わせで、ナイフ、栓抜き、ハサミ、ピンセット、爪楊枝にリーマーなどがついています。愛用者も多く、これを基本に足りない機能や不要な機能を考えていくと良いと思います。



ハントマン
トラベラーにプラスドライバーとのこぎりをつけたものです。スイス軍が野営用に使用しているマルチツールで、キャンプをする人に人気が高い商品です。

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クラシックSD
必要最小限をまとめた商品として、高い人気を誇っています。ハサミ、ナイフ、やすり、ドライバーなどがついており、ミニマリスト的なツールになっています。

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ジェットセッター
刃物を持ち歩くと軽犯罪法に抵触する日本では、気軽に持ち歩けるモデルです。ナイフがなくハサミが主体で、栓抜きやピンセット、プラスドライバーがついています。もっとも軽犯罪法ではハサミも取り締まれるので、持ち歩く用途を明確にしておく必要があるのはナイフと変わりません。



ソルジャーナイフ
100年以上スイス軍に支給されているナイフで、日本でもアウトドア志向の人に支持されています。



スイスチャンプ
ルーペやうろこ落とし、プライヤーなどなんでもついています。これだけ多くの機能がつきながらハンドルサイズが91mmになっていて、とにかくたくさんのツールを持ち歩きたい人におすすめです。



@work
16GBのUSBメモリ(USB Type-C)を搭載したビジネス向けモデルです。USBメモリは取り外し可能です。



ジェットセッター@work
@workからナイフをとったもので、軽量なのでキーホルダーにつけても気にならない重さです。こちらはかなり人気が高いようで、私が行くお店では売り切れになっていることがしばしばあります。



サイバーツール
自作PC派に高い支持を得ているのがサイバーツールです。PCの組み立ては、これ一つで可能だそうで、それ以外にも日常的に使うツールが一通り入っています。釣りのリールのメンテナンスや、電動工具のメンテナンスなど幅広く使えます。



マルチルールは便利か?

あると便利だけど、日本国内ではなくてもなんとかなることが多いのが現状です。海外旅行すると「ナイフぐらい誰でも持ってるだろ?」的なノリがあるので、スーパーで買い物をしても何かと不便な思いをします。また安宿では電気のスイッチが外れかかっているなんてこともあり、フロントに電話しても「そっちでなんとかして」と言わんばかりの対応をされたりします。そんな時に、ちょっとした工具があれば便利だと感じます。



一方で日本では便利すぎる社会なので、缶切りが必要な缶詰を見かけることの方が少ないですし、道具がなくてもなんとかなるものばかりで溢れています。ですから特定の用途を設定しておかないと、あまり使う機会がないかもしれません。しかしないよりはあった方が便利な場面が多いのも事実で、どれを買うかよりも何に使うかを明確にした方が利用機会が増えると思います。

では何に使っているか?

私の場合は、災害時に持ち出すリュックサックの中に入れてあるファーストエイドキットの中に、クラシックSDを入れています。包帯などを切ったりするのに手ごろなサイズですし、なにより格安で売っているのを見かけたからです。これ一つあれば、避難所で缶切りが必要な缶詰が出てきたりしても使えますし、なにかと重宝する気がします。



キャンプをよくしていた頃は、マルチツールは必ず持っていきました。何に役立つというより、あるとちょっとしたことが便利になるという感じで、活躍の場は多くありました。

現在はレザーマンのWAVEを仕事で使っているので、ビクトリノックスを常時持ち歩こうとは思いませんが、サイバーツールは家にあると便利なのでそのうち買おうと思っています。ちょっとしたものを修理するのに、工具箱を開ける必要がなくなるからです。

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まとめ

マルチルーツは専用工具には劣りますので、本格的な作業をする際には向きません。しかしちょっとしたことに、かゆいところに手が届くような感じで、あると何かと便利になります。刃物に対する風当たりが強い時代ですから、このようなツールを持たなくてはならないケースの方が減っています。しかし何かと役に立つのも事実で、会社や自宅の机の中に入れておくと、思いのほか活躍の場がありますよ。


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