最も実用的な護身術・・・それは中距離走

ある日、知り合いから紹介されたT.Aくんは、アメリカの大学を卒業してアメリカで働いていたのですが、お母さんが入院したために日本に帰ってきたナイスガイでした。もろもろあって、国籍もアメリカになっています。専門はコンピュータで、少し変わった会社で働いた経歴があります。


T.Aくんの経歴

彼の経歴で最も異彩を放っているのが、PMC(民間傭兵会社)です。暗号通信ソフトの作成や暗号解読の仕事を手伝っていたそうで、2年ほどお世話になったそうです。元々システム屋だったT.Aくんは、給与の良さに魅かれてPMCに入ったと言っていました。当然ながら社内には元兵士という人が大勢いて、仲良くなった元米兵から護身術を習うことになりました。T.Aくんは安いアパートに住んでいて、治安が良くなかったので周囲から引越を勧められ、その流れで身を守る術を知っておいた方がいいとなったようです。

護身術の訓練

せっかくプロの軍人に囲まれているのだから、拳銃の撃ち方ぐらい習うのもいいかもと思ったそうですが、彼らの言う護身術とは逃げ足のことでした。

「武器を持った相手と戦うのは無謀だ。逃げるのがベストな選択だ」
「拳銃で動く相手を撃つのは難しい。ましてや走りながら当てるのは困難だ」
「まずハーフマイル(800m)を全力で走って逃げれば、大抵の奴は振り切れる」

と、真剣な表情で語る元米兵に押され、ランチタイムに800m走をすることになったそうです。さらに彼が付け足したのは、声出しです。

「走るだけでなく、声を出して走れば助けが来るかも知れない。Help(助けて)も良いが、本当に治安が悪い場所ではFire(火事だ)が効果的だ」

というわけで、T.Aくんは会社に併設されているグランドで、「火事だ!」と大声で叫びながら800mを何度も走らされることになり、そのシュールな光景を見た他の元兵士達が、ギャング役として模造銃や木の棒を持って追いかける奇妙なことになったそうです。完全に遊ばれてますね。


※多分、こんな感じです。

辛い訓練

それから800m走の訓練が毎日始まり、通勤用のナップサックを背負ったまま走らされ、朝練をしていた兵士達が面白がって追いかけるという生活を1年以上したそうです。真っ直ぐ走るだけでなくジグザグに走るなど内容はハードだったようで、おかげで中距離走にはかなり自身があるようです。

拳銃で10m先の的を撃つのは難しいですし、ましてや的が動いていたらなかなかあたりません。さらに射手も走っているとなると、そうそう簡単には当たらないんですね。その米兵も走りながら撃たれたら、それは運命だから諦めろと言っていたそうです。

というわけで、護身術を習う女性の方も多いですが、まずは走ることを練習した方が良いようです。逃げるが勝ちっていいますからね。

おまけ

この時にT.Aくんは、元警官の人から護身術も習っていて、これはとても興味深い技術でした。私は言われるまま、彼の後ろからしがみついたり首を絞めるなどしたのですが、ボールペンを腕にギュッと押されるだけで電気が走ったようになり、思わず手が離れてしまいました。柔道の裸締めの体制で、両足で胴をロックして首を絞めたのですが、腕をボールペンで押されると痛みで腕が離れてしまい、ふくらはぎを押されると足が離れてしまいました。これだけでも教えてお金がとれそうな技術で、いろいろな護身術があるのだと感心しました。


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