寝技最強の男ハビブ・ヌルマゴメドフはどうなるのか?
UFCライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフは、コナー・マクレガーとのビックマッチに勝利し、今最も注目を集めているUFCファイターです。圧倒的な寝技の強さを武器に、全戦全勝を突き進むヌルマゴメドフは、トラブルの真っ只中にいます。
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2012年にUFCデビューすると、危なげなく連戦連勝を続けます。選手層の厚いライト級で驚異的な強さを誇り、1試合で21回のテイクダウンを奪うなどの記録も打ち立てました。打撃にも磨きがかかると、ランキング上位者も圧倒して勝利するようになり、王者コナー・マクレガーとの対戦をアピールするようになりました。
2018年4月にマクレガーが剥奪されたライト級王者決定戦で、アル・アイアキンタを圧倒して王座に就くと、復帰したマクレガーの挑戦を受けます。4Rに裸絞めで勝利して最も注目を集める選手になりました。
タックルはスピードに欠けるもののタイミングのうまさに定評があり、打撃に磨きをかけてからはタックルのキレが向上しました。今では相手がレスラーでも柔術家でも面白いようにグランドに持ち込みます。さほどスピードがあるとは思えないのに、面白いようにテイクダウンを奪うのはタイミングの良さに加えて、相手の体に触れたら一気に引き込む力の強さによると思われます。
タックルで倒された選手が下になると、両足で相手の腰を挟むガードポジションを取るのが普通です。ガードポジションを取られた上の選手(インサイドガードポジション)は、両足のガードを外すパスガードを狙います。しかしヌルマゴメドフは、パスガードを狙わずインサイドガードポジションのまま相手をコントロールしてパウンドを打ち込んだり、関節技に持ち込みます。これはかなり特殊なスタイルです。
本来、インサイドガードポジションでは思うように動けないからパスガードを狙うのですが、ヌルマゴメドフは構わず自由に動いています。恐らく驚異的な体幹の強さとパワーがあるからで、そこに高い技術が加わって他の選手とは異なるスタイルになったのでしょう。ガードポジションの選手がクローズドガードならパウンドを面白いように打ち込み、オープンガードに切り替えると一気に首や腕を狙うサブミッションを仕掛けます。一度倒されると、ヌルマゴメドフの前にはほとんどの選手が無力になってしまいます。
このトラブルで、バスに乗っていたマイケル・キエーザ選手はガラスの破片で手と顔を負傷してUFC223を欠場することが決まり、マクレガーは訴えられました。UFC史上最悪の不祥事と言われるこの事件は、コナー・マクレガーがニューヨーク市警に出頭して身柄を拘束され、正式に逮捕されたことで一段落しました。ヌルマゴメドフはツイッターで「俺と話したければ、なぜバスに乗ってこなかった?」とマクレガーを挑発しています。
この週に、ヌルマゴメドフはマクレガーの仲間であるアルチョーム・ロボフ選手と激しい口論をしており、その報復だったと言われています。マクレガーの収監は確実だと思われていましたが、法廷での真摯な態度とバス会社を含む各方面への謝罪が功を奏して罰金刑と社会奉仕を行うことで決着しました。
さらにマウスピースを叩きつけたヌルマゴメドフは、ケージを乗り越えてマクレガーのセコンドに殴りかかり、オクタゴンの中でも両陣営が殴り合いを展開する異常事態になりました。これに対して運営はヌルマゴメドフにベルトの授与を拒否し、両者を退場させた後でリングアナウンサーのブルース・バッファが勝利者を読み上げる奇異な形で試合が終わりました。試合を監督するアスレチック・コミッションはヌルマゴメドフへのファイトマネーの凍結を決定しました。
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ヌルマゴメドフ側の選手でLヘビー級、ヘビー級の王者ダニエル・コーミエはコメントの中で、「試合のプロモーションといっても触れてはいけない部分がある。宗教や家族、祖国」とマクレガーを批判し、ヌルマゴメドフ自身も「マクレガーは僕の宗教、僕の国、僕の父について侮辱したんだ。そして彼はブルックリンにやってきて、バスを襲撃した」と訴えています。
今後、ヌルマゴメドフがUFCで見られなくなれば、あまりにも大きな損失です。一方で、競技スポーツとしてアメリカで認可されているUFCにとって、今回の乱闘は大きな痛手でした。アメリカの議員には総合格闘技に反対の立場をとる人も多く、競技としてのルールを守ることでなんとか実施できています。一連の騒動は、アメリカの総合格闘技そのものを揺るがすかもしれません。
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来歴
1988年にロシアのダゲスタン共和国に生まれました。レスリングや柔道が盛んな土地がらと、父親がサンボの選手だったこともあり、8歳からレスリングや柔道を始めています。17歳の時にはサンボを軍隊用にアレンジしたコンバットサンボを始め、ロシア王者になっています。2012年にUFCデビューすると、危なげなく連戦連勝を続けます。選手層の厚いライト級で驚異的な強さを誇り、1試合で21回のテイクダウンを奪うなどの記録も打ち立てました。打撃にも磨きがかかると、ランキング上位者も圧倒して勝利するようになり、王者コナー・マクレガーとの対戦をアピールするようになりました。
2018年4月にマクレガーが剥奪されたライト級王者決定戦で、アル・アイアキンタを圧倒して王座に就くと、復帰したマクレガーの挑戦を受けます。4Rに裸絞めで勝利して最も注目を集める選手になりました。
独特のファイトスタイル
寝技に関しては、突出した強さを誇っています。特にトップコントロールが抜群で、ヌルマゴメドフにグランドに倒されて立ち上がれた選手はほとんどいません。マクレガーがグランドから立ち上がることに成功した際、それだけで歓声が起こったほどです。タックルはスピードに欠けるもののタイミングのうまさに定評があり、打撃に磨きをかけてからはタックルのキレが向上しました。今では相手がレスラーでも柔術家でも面白いようにグランドに持ち込みます。さほどスピードがあるとは思えないのに、面白いようにテイクダウンを奪うのはタイミングの良さに加えて、相手の体に触れたら一気に引き込む力の強さによると思われます。
タックルで倒された選手が下になると、両足で相手の腰を挟むガードポジションを取るのが普通です。ガードポジションを取られた上の選手(インサイドガードポジション)は、両足のガードを外すパスガードを狙います。しかしヌルマゴメドフは、パスガードを狙わずインサイドガードポジションのまま相手をコントロールしてパウンドを打ち込んだり、関節技に持ち込みます。これはかなり特殊なスタイルです。
※白の選手がガードポジション、青がインサイドガードポジション |
本来、インサイドガードポジションでは思うように動けないからパスガードを狙うのですが、ヌルマゴメドフは構わず自由に動いています。恐らく驚異的な体幹の強さとパワーがあるからで、そこに高い技術が加わって他の選手とは異なるスタイルになったのでしょう。ガードポジションの選手がクローズドガードならパウンドを面白いように打ち込み、オープンガードに切り替えると一気に首や腕を狙うサブミッションを仕掛けます。一度倒されると、ヌルマゴメドフの前にはほとんどの選手が無力になってしまいます。
バス襲撃事件
2018年4月5日、UFC223のためのメディアイベントの後に、選手達が乗った車がコナー・マクレガーとその仲間達によって襲撃されました。台車で窓ガラスが割られ、警備員と激しい揉み合いが起こりましたが、マクレガーはヌルマゴメドフを探していたのは明らかだという証言がありました。襲撃の様子は以下の動画をご覧ください。
※後半部分はバス襲撃とは無関係の映像です。
このトラブルで、バスに乗っていたマイケル・キエーザ選手はガラスの破片で手と顔を負傷してUFC223を欠場することが決まり、マクレガーは訴えられました。UFC史上最悪の不祥事と言われるこの事件は、コナー・マクレガーがニューヨーク市警に出頭して身柄を拘束され、正式に逮捕されたことで一段落しました。ヌルマゴメドフはツイッターで「俺と話したければ、なぜバスに乗ってこなかった?」とマクレガーを挑発しています。
この週に、ヌルマゴメドフはマクレガーの仲間であるアルチョーム・ロボフ選手と激しい口論をしており、その報復だったと言われています。マクレガーの収監は確実だと思われていましたが、法廷での真摯な態度とバス会社を含む各方面への謝罪が功を奏して罰金刑と社会奉仕を行うことで決着しました。
マクレガー戦での乱闘
2018年10月9日、ヌルマゴメドフはマクレガーの挑戦を受けてビッグマッチが実現しました。一時は得意の打撃でマクレガーが流れをつかんだかに見えましたが、ヌルマゴメドフは再三テイクダウンを奪い、最後は裸締め(リアネイキッドチョーク)で一本勝ちしました。しかし試合中からグローブを掴んだとか、反則行為があったとかで口論が続き、マクレガーがタップした後にもヌルマゴメドフの怒りは収まらずマクレガーに怒鳴りつけていました。※見事な裸締めの一本勝ちでした。 |
さらにマウスピースを叩きつけたヌルマゴメドフは、ケージを乗り越えてマクレガーのセコンドに殴りかかり、オクタゴンの中でも両陣営が殴り合いを展開する異常事態になりました。これに対して運営はヌルマゴメドフにベルトの授与を拒否し、両者を退場させた後でリングアナウンサーのブルース・バッファが勝利者を読み上げる奇異な形で試合が終わりました。試合を監督するアスレチック・コミッションはヌルマゴメドフへのファイトマネーの凍結を決定しました。
※警備員と関係者に守られて退場するヌルマゴメドフ |
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今後の展開
今後が楽しみだったヌルマゴメドフですが、この乱闘事件によって将来が不透明になりました。警察はヌルマゴメドフ側の関係者3人を傷害容疑で逮捕し、ネバダ州アスレチック・コミッションはヌルマゴメドフの処罰を検討中です。最悪の場合は永久追放の可能性もあり、どうなるかは全くわかりません。※会見を行うヌルマゴメドフ |
ヌルマゴメドフ側の選手でLヘビー級、ヘビー級の王者ダニエル・コーミエはコメントの中で、「試合のプロモーションといっても触れてはいけない部分がある。宗教や家族、祖国」とマクレガーを批判し、ヌルマゴメドフ自身も「マクレガーは僕の宗教、僕の国、僕の父について侮辱したんだ。そして彼はブルックリンにやってきて、バスを襲撃した」と訴えています。
まとめ
選手層が厚いライト級で圧倒的な強さを誇るヌルマゴメドフは、現在岐路に立たされています。バス襲撃に関してUFCはマクレガーに対してお咎めなしにしたにも関わらず、自分に対しては厳しく挑んでいると不満を募らせていて、UFC離脱も匂わせています。ヌルマゴメドフの不満は理解できますが、マクレガーへのペナルティは司法によるもので、今回はネバダ州アスレチック・コミッションによるペナルティの問題で、管轄が違います。今後、ヌルマゴメドフがUFCで見られなくなれば、あまりにも大きな損失です。一方で、競技スポーツとしてアメリカで認可されているUFCにとって、今回の乱闘は大きな痛手でした。アメリカの議員には総合格闘技に反対の立場をとる人も多く、競技としてのルールを守ることでなんとか実施できています。一連の騒動は、アメリカの総合格闘技そのものを揺るがすかもしれません。
関連記事
総合格闘技でもっとも稼いだ男 /コナー・マクレガーのカリスマ性
エメリヤーエンコ・ヒョードル /UFCと契約しなかった最強の王者
UFCでの日本人の成績はどうなのか
時給1500円の世界王者 /スティーペ・ミオシッチが愛される理由
ジョン・ジョーンズというダメ男 /転落が生んだ喪失感
フリースタイルは最強なのか? /マックス・ホロウェイ
堀口恭司の苦悩 /UFC世界王者に最も近づいた日本人
世界最強のオタクはナイスガイ /ジョシュ・バーネットは殴れない?
PRIDE神話の終焉 /ホドリゴ・ノゲイラはなぜ負けたのか
ヴァンダレイ・シウバはどれくらい強かったのか
なぜミルコ・クロコップはアメリカで勝てなかったのか
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ジェラルド・ゴルドーは凶暴なのか紳士なのか
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