UFC王者がボクシング王者に挑戦する

総合格闘技(MMA)王者のコナー・マクレガーが、ボクシングの5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー・Jrに挑戦する試合が、8月27日に迫りました。試合は12ラウンドのボクシングルールです。MMAファイターがボクシングでボクシング王者に挑戦するという、無謀な挑戦にも見えます。しかし両者の舌戦や話題作りの上手さから、高い注目を集める試合になりました。





フロイド・メイウェザー・Jrって誰?

メイウェザーを一言で言うと、現代ボクシングの技術の結晶で最も完成されたボクサーです。圧倒的なスピード、類い希なるテクニック、驚異的な反射スピード、そして鉄壁のディフェンス技術を持っています。生涯で一度も負けることなく、スーパー・フェザー級からスーパー・ウェルター級までの5階級を制して、2年前に引退しました。スピードとディフェンスで相手を翻弄して判定で勝利を手にする試合が多いですが、実はかなりパンチ力が強いことでも知られています。

その発言は常に上から目線で、相手を挑発し愚弄します。その口撃は対戦相手だけでなくメディアにも向けられ、時には自分のファンさえも挑発します。これらの発言に加えて、お金を見せびらかすことが多いので、ニックネームは「ザ・マネー」です。
※現金以外にも高級車や高級腕時計のコレクションを見せびらかすのも好きです。

コナー・マクレガーって誰?

UFCでフェザー級とライト級の王座を制した、MMA最高の選手の1人です。12歳からボクシングを始め、16歳の時にMMAに転向しています。そのためボクシングベースの打撃戦を得意とし、アイルランド人らしい魂のこもった打撃戦を信条としています。

MMA選手にしては珍しくスーツを着こなし、GQ誌からベストドレッサー賞を贈られています。また巧みな話術でマスコミを巻き込んだ舌戦を繰り広げたり、記者会見で対戦相手と乱闘騒ぎを起こすことで有名です。その凶悪さからニックネームは「ノトーリアス」(悪名高い)です。

※彼の影響でスーツを着用するUFCファイターが増えました。

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ボクシングとUFCの違い

ボクシングとUFCでは、ありとあらゆる面で違います。


ボクシング
UFC
試合場 四角形のリング
1辺が5.47〜7.31メートル
八角形のオクタゴン
直径9.14メートル
試合時間 3分12ラウンド 5分5ラウンド
勝敗 KOかジャッジによる判定 KO、ギブアップか判定
攻撃 拳による腰から上の攻撃のみ認められる。 拳、肘、足のあらゆる打撃、投げ技、寝技(関節技、絞め技)などが認められる。
グローブ 手首から上を覆うボクシンググローブ 指先の開いたオープンフィンガー・グローブ

特に試合場の広さと形状の違いが顕著で、ボクシングのリングに比べてUFCのオクタゴンは途方もなく広く感じると言われています。またオクタゴンにはコーナーがないので、ボクシングのように横に追いかけてコーナーで捕まえるような展開がありません。

※UFCのオクタゴン。リングに比べて広いです。

ボクシングのグローブは巨大で、両手を顔の前に出すだけでガードすることができます。しかしUFCのオープンフィンガーグローブは小さいため、それだけではガードできません。両手を前に出して相手のパンチを遮るようなディフェンスが主流です。またボクシングはグローブが重いため、グローブそのものが凶器になります。単に殴り合うと言っても、戦い方がまるで違ってきます。

試合概要

日時:2017年8月26日(現地時間)
場所:ネバダ州ラスベガス
ルール:ボクシングルール 12回戦
契約体重:154ポンド(69.85kg)
ファイトマネー:未発表(メイが113億円、マクレガーが85億円前後とみられる)

※記者会見は乱闘寸前になり、大いに盛り上げました。

試合展望

まず、ネバダ州アスレチック・コミッションが、プロボクシング未経験のマクレガーと、引退して約2年が経つメイに12回戦を戦わせることを認めたのが驚きです。そのため、普段のボクシングよりも早い段階でレフリーが試合を止める可能性があります。

一般的に考えると、あらゆるレベルのボクサーを翻弄してきたメイが、ボクサーではないマクレガーとボクシングで勝負したら、一方的にメイが勝つと思われています。マクレガーはメイに触れることもできずに、サンドバッグのように殴られ続けるというのが大方の予想です。何せプロのボクサーでも、メイにパンチを当てることは難しかったのです。ボクサーではないマクレガーが勝つと予想するのは難しいでしょう。

以下、著名人の予想です。

マイク・タイソン(ボクシング元ヘビー級王者)

マクレガーはボクシングでコテンパンにやられるだろうね。マクレガーはどうかしている。わざわざノックアウトされる状況に身を置くわけだからね。MMAのようにキックすることも相手を抱えることもできない。彼に勝ち目はないね

マニー・パッキャオ(ボクシング元6階級制覇の王者)

マクレガーはボクシングに対応できないと思う。退屈な試合にならないといいけれどね

ボブ・アラム(ボクシングのプロモーター)

メイウェザーは試合では相手に対して優位性を示し、マクレガーをノックアウトするだろうね

ホーリー・ホルム(元UFC女子バンタム級王者)

コナーは自分を信じているのよ。善戦すると思うわ。リングでは何が起こるか分からないじゃない。だから、面白いのよ

マクレガーの勝利を予想する人は皆無で、ほとんどの人がメイの圧勝予想です。個人的にもマクレガーのパンチが1発でもクリーンヒットすれば大善戦だと思います。しかし精密機械のようなメイに、野生の塊のマクレガーがケンカのような打撃戦を展開すれば希望があるという意見に反論するつもりもありません。

マクレガーに勝利の可能性はあるか?

あえてマクレガーの優位性を挙げるなら、ボクシンググローブをつけたことで普段より格段にパンチ力が上がることです。素手に近いオープンフィンガー・グローブより、ボクシンググローブの方が拳の怪我のリスクが低いので思いっきり打てますし、拳が重くなるのでパンチ力が上がります。

それとリングの狭さが、マクレガーに有利に働くかもしれません。一発当てることができれば試合の流れがガラッと変わる可能性がありますが、メイに一発当てるのは気が遠くなるような作業なのも事実です。マクレガーにとって、難しい試合なのは間違いありません。

まとめ

どう考えても、メイの優位性は動きません。しかし勝負はやってみないとわかりませんせい、ボクシングでは絶対有利と言われた選手が倒されるのは珍しいことではありません。マクレガーは無謀な挑戦と言われていますが、ぜひとも盛り上げて欲しいと思います。


追記:試合結果

2017年8月26日、両者の対戦が実現しました。メイは引退してから2年間のブランクがあり、練習も調整も不足しているのは明らかでした。動きは重く全盛期の面影はわずかしか見らませんでしたが、それでもマクレガーはメイを捉えられませんでした。それほど両者にはボクシングスキルの差があったのです。メイは重い体でできることだけをやっている感じで、マクレガーは何度もトリッキーな攻撃を仕掛けて見せ場を作ろうとしました。しかしその無理な動きからスタミナが切れ、そこにメイが連打を畳み掛けて試合はストップされました。

マクレガーは1発もパンチを当てられないという下馬評を覆し、100発以上のパンチを当てました。さらに劣勢ながら10Rまで立ち続けていたマクレガーに、多くの賞賛が集まります。しかし一般的なボクシングの世界戦と考えると物足りないレベルの試合だったことは間違いなく、ショーとしては盛り上がったがボクシングとしては凡戦だったという厳しい声も聞かれました。


マクレガーの公式Tシャツ

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