久保優太VSシバターの八百長騒動 /なぜこじれてしまったのか

 2021年12月31日、大晦日のRIZINで行われた久保優太対シバターの対戦が八百長だと騒がれています。久保優太はシバターの陽動作戦にひっかかってしまったと反省する動画を公開していますし、多くの人が久保を批判しています。この件について個人的な見解を書いてみたいと思います。結論を一言で言うと八百長でもなんでもなく、流れを読めなかった久保優太のしくじりだと思います。



久保優太とは


1987年生まれで立川市出身の元キックボクサーです。高校生の頃にニュージャパンキックボクシング連盟でプロデビューし、連勝街道を突き進みます。タイでムエタイの本場、ラジャダムナン・スタジアムにも出場して勝利を重ねると、Krush(クラッシュ)やK-1 World MAXにも出場しました。63kg以下で存在感を示すようになると、2013年にはKrushの王座を獲得します。

さらにヨーロッパのキックボクシング団体のGLORY(グローリー)へも参戦し、2014年には新生K-1のワールドGPにエントリーして初代ウェルター級王座を獲得します。その王座を3度防衛すると王座を返上してK-1から離脱しました。その後はプロボクサーになるという噂もありましたが、最終的には総合格闘技(MMA)に転向することを表明し、2021年8月にRIZINと契約をしました。RIZIN.30でデビューしますが判定負けに終わり、大晦日のシバター戦はMMA転向後の第2戦でした。

シバターとは


1985年生まれのYouTuberで、プロレスラーでありMMA選手でもあります。大学在学中の19歳の時にパンクラスに入門してMMAを始めます。フリーターや会社員を行いながら動画配信を行い、それで生計を立てるようになりますが、MMAの練習は続けていました。2008年に和術慧舟會が主催する試合でMMAデビューを飾ると、2010年からパンクラスやゼストなどでMMAの試合に出場しています。

そしてシバターを有名にしたのが、2011年から参戦したTHE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)です。元プロレスラーの前田日明が主催するアウトサイダーは、喧嘩自慢が集まることを売りにしていましたが、シバターは試合中にロープに飛ぶなどプロレス技を魅せることにこだわり、時には大仁田厚のモノマネをしながら登場すると、試合後もモノマネでインタビューを受けるなどしていました。強いより面白いことで人気を集めていきます。

2013年からYouTubeへの配信を開始し、他人を罵倒したり中傷することで炎上系ユーチューバーと呼ばれるようになりました。また2014年からは、プロレスラーとしてもデビューしています。MMAも断続的に参戦を続け、DEEP(ディープ)やネクサスなどの試合にも参戦し、2020年の大晦日にはRIZIN.26に初出場を果たしました。

大晦日のRIZIN.33までの経緯

2021年12月13日に追加カードが発表され、シバターと久保優太の試合がアナウンスされました。この試合は3分2Rで行われ、判定なしのKOか一本のみで決着が決まる特別ルールでした。体重差が15kg以上あるため(実際の試合時の体重差は12kg台だった)、久保にはグラウンド状態での足および膝による頭部、顔面への攻撃が認められています。

本番ギリギリの発表ですが、元々はシバター対皇治の試合で調整されていたものの、何らかの理由で皇治との試合が流れたために、久保の名前が急遽上がったものでした。両者とも体を作る間もなく本番を迎える日程で、さらにシバターはいつものように本気とも嘘ともわからないコメントを発し続け、試合をやりたくないとアピールしていました。試合前日になっても契約書にサインをしていないと言い、明日の試合に出るかわからないとコメントしていました。

久保が圧倒的有利の下馬評

ここが個人的には最も不思議な点で、世間には久保が間違いなく勝つと断言する人が多くいました。会場で観戦した人の話でも、久保勝利を疑わない人ばかりだったそうで、久保が圧倒的有利と多くの人が語っていました。

しかし久保優太はMMAに参戦して2戦目で、前回の試合を見てもまだまだMMAに対応した体づくりができていると言い難い状態です。対するシバターはMMAで15戦の経験があります。しかもシバターの方が10kg以上重く、判定決着もないルールです。さらに皇治と大晦日に戦う予定だったシバターに対し、急遽オファーされた久保では準備期間が違います。この試合は圧倒的にシバターに有利な設定でしたが、なぜか世間は久保に傾いていました。

試合の流れ

久保がローキックを放ち、シバターがプロレスのようにロープに飛んだり、土下座して許しを乞うようなパフォーマンスを行いながら試合は進みます。そこにシバターの右ストレートがカウンター気味に入ると久保は吹き飛ばされ、すぐに立ち上がって組み合う状態になりました。シバターは飛びつきの腕ひしぎ十字固めを仕掛け、腕が伸び切ったところで久保陣営からタオルが投げ込まれました。1R1分34秒の幕切れで、シバターの完勝と言える内容でした。


試合後の暴露

久保は試合後にTwitterを更新し、正直者がバカを見るのは嫌だと呟きます。意味深な発言に注目が集まると、久保の関係者を称する人物が、LINEのスクリーンショット画像を公表します。この人物は久保の義理の兄で、スクショ画像はシバターが1Rは流して2Rから真剣にやろうと持ちかける内容でした。これによりこの試合は八百長だったと騒がれることになります。



シバターは計量時にも「手加減してもらえませんか」と久保に土下座してお願いしており、LINEでも同じようなお願いをしていたことがわかりました。そして最終的に久保も了承し、2Rから真剣勝負で行うことに納得していることがわかります。これによってシバターの1R勝利は、騙し打ちだったことになります。シバターは事実無根と言いつつも、K-1チャンピオンが台本を飲んだらダメだろうと言い放っていました。これらの流れでネットは大騒ぎになり、さまざまな議論が展開されています。

過去にもあったシバターのやらせ

2019年11月に愛媛プロレスのリングで朝倉未来と対戦し、1R25秒でKO負けをしています。その後、シバターは試合当日の控室での隠し撮り動画を公開しました。その内容は、朝倉の控室を訪れたシバターが土下座して負けてくださいと懇願し、根負けした朝倉が3000万円で勝ちを譲る約束をする様子が映っていました。しかし実際の試合では朝倉は容赦無くパンチを叩き込み、KO勝利しました。

※朝倉未来に土下座するシバター

つまりこれは負けるところまで含めたシバターの演出で、朝倉に土下座する動画は100万回以上再生されました。八百長を持ちかけて惨めにKOされることで話題を集め、YouTubeの再生数を大幅に伸ばしたのです。シバターは動画再生数を増やすためにあの手この手を仕掛ける名人で、最も重要なのは試合に勝つことではなく再生数なのです。

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シバターにとって予想外だったこと

朝倉未来戦のことを考えると、久保優太戦でも試合結果に関係なく、試合後に台本があったことをシバターはバラすつもりだったと思います。それをバラすことで動画の再生数が大幅に伸びると考えられるからです。シバターが負ければ台本があったことをバラして久保は汚いと罵り、シバターが勝てば台本に乗っかってバカじゃねーのと煽ることで批判がしバターに集まり、いつもの炎上商法が成り立つはずだったと思います。

しかし久保が台本があった事実をバラしてしまうのは、しバターにとって予想外だったと思います。元K-1王者という肩書きを持つ久保がバラしてしまうとは思っていなかったはずで、炎上する煽りではなくプロがそんな話に乗っちゃダメでしょうと嗜めるような発言になってしまったのだと思います。逆に言えば久保は単に全力で試合をすればよかっただけで、黙っていれば良かったのです。久保が勝てばさすがプロだと言われ、負けても卑怯な手段で貶められたと同情が集まったかもしれません。しかし久保陣営がバラしたことで、久保に批判が集まる結果になってしまいました。

まとめ

この試合が八百長だったかというと、八百長だったとは言えないと思います。一人の選手がブックを持ち込み、それに乗っかって負けた久保が間抜けに見えるだけです。久保は黙っていれば良かったのに、余計なことをして批判を集めることになってしまい、実に残念に思います。これまで築き上げてきたものをきな臭い目で見られることにもなりましたが、実績のある選手なので、こういうことに振り回されずに戦っていって欲しいと思いました。


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