海外で人気のLOVEBITES(ラブバイツ)を紹介 /本格的メタルバンドの未来

ここ最近、ほぼ毎日のように日本のガールズバンドのLOVEBITESを聴いているので、感想をまとめてみたいと思います。おそらく私自身、これほどメタルバンドを聴いたのは初めてのように思います。 今回はこのLOVEBITESについて書いていきたいと思います。




LOVEBITESとは

LOVEBITESは2017年にメジャーデビューしています。ベースのmihoが、ヨーロッパで勝負できるメタルバンドを作りたいとメンバーを集めて結成されました。歌詞を英語で書き、ヨーロッパ最大のメタルイベント「ヴァッケン・オープン・エア」への出場を夢に掲げてのデビューです。つまりこの時点で、LOVEBITESは日本市場をほとんど無視した形でスタートしています。日本で最も売れないジャンルのメタルで勝負し、歌詞も英語のみというストイックな姿勢でした。

デビュー後すぐにヨーロッパツアーを行います。貧乏ツアーで苦労したようですが、イギリス公演の際に地元のプロデューサーに気に入られて、ヴァッケン・オープン・エアに推薦されました。デビュー2年目で夢だったヴァッケンに出場を果たし、イギリスのブラッドストック・オープン・エアにも出場すると海外での人気を一気に高めていきました。さらにこの年、イギリスのメタル専門誌のMETAL HAMMERからベストニューバンド(新人賞)を贈られる快挙を達成しました。2019年にはイギリスのメタルバンド、ドラゴンフォースのツアーにスペシャルゲストとして参戦し、11公演を行っています。



今やファンの8割は海外にいると言われていて、YouTubeの公式動画のコメントも多くが英語です。2020年はコロナ禍により、ツアーのほとんどをキャンセルすることになりました。しかしステイホームでYouTubeのアクセスが増加するとともに、海外のYouTuberが次々とLOVEBITESのリアクション動画を投稿するようになっています。ほぼ毎日のように世界各国から投稿されていて、これが確実にファンを増やす要因になっているようです。日本での知名度はまだまだですが、海外では確実にその名が知られて行っています。

逞しさと美しさ

1曲だけでも聴けば、彼女達がとんでもなく高い技術を持っていることがわかります。それは5人全てに言えることで、途方もない時間をかけて技術を磨き上げ、ストイックに音楽に向き合わなければ手にできない領域に達しています。彼女達のステージからは高い集中力を感じますし、技術的に高難易度なことを軽々とやってのけます。時に笑顔さえ見せながらやってのける彼女達を見て、こちらはただ笑うことしかできないこともあります。


しかしたびたびメタルバンドにありがちな、技術の見せびらかしとは無縁です。その難易度の高いフレーズは楽曲を表現するために必要なもので、高い必然性から用いられています。それは高度な技術を駆使して勝利する、アスリートの美しさに似ているように思います。アスリートが鍛え上げられた肉体と技術を武器に勝利するように、LOVEBITESは自らを鍛えに鍛え上げてギリギリの勝負をしているのです。日本では「キャバ嬢のよう」海外では「人形のよう」と表現されるルックスとは、全く異なる音楽を築き上げて観客を驚きと興奮に導いています。


LOVEBITESのメンバー

miho(Ba)



元はアニソン好きで、そこで流れるメタルサウンドに興味を持ったそうです。ドイツのメタルバンド、ハロウィンなどをこよなく愛しています。ドラムのharunaとともに別のガールズバンドで活動していましたが、メンバーの脱退が相次ぎ活動停止になります。そこで誰が聴いてもメタルだとわかる音楽を作る、ヨーロッパで勝負できるバンドにするといった基本路線でメンバーを集めました。

バンドがメタルらしさを失わず、ヘヴィなサウンドを維持する核を担っています。彼女のベースはバンドの推進力であり、リーダーとしてバンドをまとめる存在であり、多くの曲の作曲と作詞を担当しています。使用しているベースはフェンダーのジャズベースに見えますが、ESPのAMAZE-AS/Mなどを使用しています。

asami(vo)



2歳から14年間クラシックバレエを習い、アメリカ留学の際に野球場で国家を歌ったのを機に歌手を志します。もともとはR&Bやソウルを歌うシンガーで、プロとしてはバックコーラスを長年務めています。たまたまデモテープを聴いたmihoによりLOVEBITESに加入を勧められますが、ヘヴィメタルを歌った経験どころか聴いたこともほとんどなかったそうです。

このようなバックボーンを持つため、パワーメタルらしからぬ軽やかなダンスや身のこなしを見せます。また生粋のメタルシンガーには見られない独特な歌唱スタイルを手にしました。mihoとともに作詞を担当していますが、2人揃って歌詞が戦いを歌うものになりがちなのが悩みのようです。また長いギターソロの間に、何をしていたら良いか分からないのも悩みの種のようです。asamiに関しては、以下の記事でも詳しく書いています。

haruna(Dr)



mihoとともにガールズバンドをやっていましたが、mihoのメタルとしか表現できない音楽でヨーロッパで勝負したいという考えに賛同してLOVEBITESへの参加を決めました。一時は結婚のためにミュージシャンを引退する予定だったという話も聞きますが、実際のところはよく知りません。はっきりしているのは、mihoとともにヘヴィなサウンドを維持するLOVEBITESのエンジンだということです。

多彩なテクニックを駆使するドラマーで、恐ろしく高い集中力で予想外のギミックを数多く使いこなします。そしていつも驚かされるのは、彼女のドラムは音数が多いだけでなくギミックも盛り沢山なのに、それらが曲の中に溶け込んでいることです。ドラムサウンドに自在に変化をつけることでasamiのヴォーカルやギターサウンドに彩を与えています。ドラムセットはツーバスになっていますが、1つはダミーです。本来はツーバスでやりたいところが、身長が足りないので足が届かず、ツインペダルを使用していると言っていました。ドラムキットはパール製を使用していますが、スネアドラムはラディック製のものを使用することが多いようです。

miyako(Gt Key)



3歳からクラシックピアノをはじめ、19歳で初めてエレキギターに触れました。それからわずか10年ちょっとで、海外でギターモンスターと呼ばれる屈指のテクニシャンに成長しています。エモーショナルなソロを得意とし速弾きは苦手と語りますが、高速のフィンガリングを何度も披露しています。LOVEBITES結成時は別のバンドで活動していたため、サポートでの加入からスタートしています。最初はLOVEBITESへの参加を断るつもりだったそうですが、ヨーロッパで勝負したいというmihoの言葉と、R&B出身のasamiのヴォーカルを聴いて参加を決めたそうです。

多くの曲で作曲を担当していますが、クラシック音楽の素養を生かした曲作りも行っています。代表曲の「Swan Song」では、ショパンの「革命」とドヴォルザークの「新世界」を使った作曲を手掛けました。LOVEBITESの曲に多様性をもたらす存在です。またその容姿から、日本では最も人気の高いメンバーです。ギターはディーンギターを愛用していて、Vフレーム、Icon、MLの3種類をよく使用しています。その他に大阪のインフィニットのストラトタイプやギブソンのレスポールと使う姿も見かけます。

midori(G)



もう1人のギターモンスターで、速弾きを得意としています。「ギターキッズ飯ウマ」的なフレーズが大好きと本人は語りますが、野生的で予測できないソロの組み立てるのが彼女の真骨頂と言えます。ソロを弾く際にほとんど動かないmiyakoに対し、表情豊かに動き回るmidoriは黒ギャル風のルックスと合間って、海外で高い人気を誇っています。

速弾きに必要なテクニックをほぼ全て備えていて、それらを正確に演奏できます。速弾きギターリストとしてはかなり高速の部類に入りますが、単にテクニックをひけらかすようなソロではありません。また最近では作詞や作曲にも参加するようになりました。midoriは海外の人に人気のようで、掲示板やYouTubeのコメントで多くの人が彼女に言及しています。使用するギターはESPが多く、紫のホライゾン(レギュラーチューニング)と黒のホライゾン(ドロップDチューニング)をメインに、ESPのGCAなどを使う姿も見かけます。

高い技術の統合

結成時から、5人のメンバーは恐ろしく高い技術を持っていました。しかしこの3年間で次々に成功を収めていく間に、凄まじい勢いでバンドは成長しています。当初はオールドスクールなメタルを現代風にアレンジしたバンドでした。観客を圧倒するツインギターのソロを武器に、見た目とはギャップの大きい怒涛の演奏で人気を獲得していきました。

今もそれは同様ですが、音楽の幅が一気に増えています。midoriが作曲した「DANCING WITH THE DEVIL」はソウルテイストの曲ですし、asamiが作曲する曲にはアコースティックギターが登場します。またmiyakoは自分のバックボーンであるクラシック音楽をふんだんに盛り込んだ曲を作曲し、自らステージでピアノを弾いています。パワーメタルを中心にした楽曲構成は健在ですし、スラッシュメタル風の曲などヘヴィメタルがこのバンドの核になっているのは間違いありません。しかし結成からわずか3年で、バンドの音楽は急成長しています。

個々の変化

メンバーの成長が最もわかりやすいのは、ヴォーカルのasamiでしょう。彼女はR&Bシンガーで、このバンドに加入して初めてメタルを歌っています。そのため歌い方は試行錯誤の連続だったと言います。その違いは、最初期の代表曲「Shadow maker」とレイテストナンバーの「Glory To The World」を聴くとはっきりわかります。Gloryの方が遥かに厚みのある歌い方で、おそらくasamiの元々の歌い方に近いのではないでしょうか。

LOVEBITESの見どころの1つはデュエル(決闘)と呼ばれることもあるギター2人の強烈なギターバトルであり、そこからユニゾンでハーモニーを奏でながらドラマチックに盛り上げるギターソロにあります。そのためasamiには流暢に歌い上げ、叫び続けるギターに負けないヴォーカルが求められました。彼女はその高い壁を乗り越え、フロントマンとして存在し続けています。当初は「英語の歌詞が聴きづらい」「彼女のヴォーカルがサウンドをダメにしている」という声が海外からは聞かれましたが、今ではそんな声は聞かれなくなりました。

ドラムのharunaとベースのmihoの関係も面白いものがあります。当初から2人とも手数の多いプレイヤーでした。しかしharunaはさらに手数とギミックを凝らすようになり、私なんかがちょっと聴いただけでは何をしているかわからないこともあります。mihoのベースがあれば、harunaは堅実にリズムを刻むだけでも十分だと思うのですが、彼女は果敢に曲を盛り上げるために常に前傾姿勢で激しいドラミングを続けていきます。これほど多くの要素を詰め込んでいるのに、歌やギターの邪魔にならず、それどころか盛り上げることに貢献していることに驚いてしまいます。

harunaが手数を増やす一方で、mihoは手数を減らすところは減らし、激しいプレイとの緩急が大きくなりました。小技を効かしてニヤリとさせられるベースプレイは健在ですが、ルート音だけを鳴らすような抑制されたプレイもあります。おそらく2人はバランスを取りながらプレイしているのでしょうが、mihoが常にバンド全体のサウンドを見渡しているような印象が強くなっています。彼女のベースを聴くと、細心の注意を払って歌やギターソロを際立たせることに注力していることがわかります。その姿勢は、まさにバンドのリーダーそのものです。

ツインギターはLOVEBITESの魅力

miyakoとmidoriのギター抜きに、LOVEBITESの魅力は語れません。ともに高いテクニックを持っていますが、そのスタイルは音も見た目も対照的です。色黒でギャル風メイクのmidoriは、衣装もミニスカートで肌の露出が多い格好で演奏します。演奏中にワイルドに動き回り、笑顔を振りまき、時に観客を挑発するような表情(本人は顔芸と言っている)も見せ、予測不能な高速ソロを自由自在に演奏します。



一方のmiyakoはロングスカートの衣装が多く、ソロの最中にはあまり動きません。恐ろしく集中した表情の時もあれば、まるで部屋で雑誌を眺めているような表情で怒涛のソロを展開することもあります。本人によると速弾きが苦手だということですが、そうは思えない速弾きを何度も見せています。役割としては、midoriが速弾きでmiyakoがエモーショナルなソロということになっているようですが、最近は役割が逆転したようなプレイをお互いが見せることも増えました。

miyakoによると、midoriのギターアンプ設定がドンシャリ(高音と低音を強調したもの)になっているので、miyakoは中音域を強く出した設定にして棲み分けをしているそうです。この棲み分けがユニゾンで弾く際には強調され、ドラマチックなハーモニーになっています。多くの楽曲のハイライトは2人のギターによって作られ、2人のギター抜きにはLOVEBITESを語れなくなっています。

代表的な曲を紹介

Holy War


LOVEBITESの演奏力を知るのに、手っ取り早いのがこの映像です。2020年に発売された3rdアルバム「Electric Pentagram」の収録曲で、2020年にZepp DiverCityで行われた東京公演の映像になります。Aメロの歌の間で行っているタッピングはギターだけでなく、ベースそしてドラムもユニゾンで叩いています。asamiのハイトーンヴォイス、harunaの細かなシンバルギワーク、mihoの抑制されつつ出るところは出るベース、そして怒涛のツインギターを聴くことができます。特にharunaがヴォーカルやギターとユニゾンで叩くところや、ギターのソロの前にダブルキックをサラリと決めているところは必見です。

When Destinies Align


同じく3rdアルバム「Electric Pentagram」の収録曲で、miyakoがLOVEBITESを代表する曲を作りたいと作曲したものがベースになっているので、歌詞が彼女たちの決意表明のようになっています。サムライをイメージした映像が話題になっていました。asamiは歌える音域のほぼ全てを使っているのではないかと思えるほど、低音から高音までをカバーしています。個人的には、この曲のギターソロはかなりお気に入りです。ハイエナジー、ハイカロリーのLOVEBITESらしい一曲です。

Glory To The World


2021年に発売したミニアルバム「Glory, Glory, to the World」の収録曲です。コロナ禍を意識したのかは不明ですが、暗闇に包まれた世界の救世主を歌っています。メンバーにキリスト教徒がいるのか知りませんが、とても宗教的で荘厳な雰囲気と歌詞になっています。このビデオに出ている男性は、キリストのメタファーだとわかりますね。多少でも英語がわかる方には、ぜひじっくり読んでほしいと思う美しい歌詞です。

Set The World On Fire


こちらも3rdアルバム「Electric Pentagram」の収録曲で、miyakoが作曲しasamiが歌詞をつけています。曲の中で何度もテンポが変わるのが印象的な曲です。この曲のギターソロは短いですが、とにかく圧巻です。ピックタッピングを含めた高速で難易度の高いソロを、miyakoとmidoriが完璧にシンクロさせています。スタジオ版ならそれもわかりますが、ライブでも見事に2人がユニゾンでの演奏を決めています。ほとんど曲芸みたいな演奏なので、ここだけでも以下のビデオは見る価値があります。

まとめ

デビューから怒涛の勢いで人気を得ているバンドで、YouTubeのコメントを見てもわかるようにファンの中心は海外です。世界的なコロナ禍によりYouTubeの投稿が増えていますが、LOVEBITESのリアクション動画は毎週のように投稿されていて、徐々に認知度が広がっているのが分かります。BABYMETALが切り開いた地平を、BAND-MAIDや彼女たちが追いかけているようです。今後、どのような成長を遂げるのかは分かりませんが、更なる進化を楽しみにしています。

※追記

2017年8月17日、リーダーのmihoが突然脱退を表明しました。バンドは活動休止になり、今後どのようになるかは分かりません。「私たちは必ず帰ってきます。その時まで待っていてください」と公式にコメントが出ています。

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