ネルシャツを着る /オタクっぽい?そんなことはありません

寒くなってくると、ネルシャツの出番かな?という気がしてきます。一時期はオタクっぽいと言われるだけでなく、オタクのユニフォームみたいに言われていたネルシャツですが、ここ数年で人気が復活していますね。今回はネルシャツについて書いていこうと思います。



そもそもネルシャツってなんだ?

ネルシャツはフランネルシャツの略称で、フランネルを使って作ったシャツのことです。フランネルはウール(羊毛)で織られた生地で、起毛しているのが特徴です。柔らかくて暖かい、それがフランネルです。17世紀頃からイギリスのウェールズで織られていた歴史のある生地で、ウェールズの特産品になっています。そこからフランスやドイツに広がり、やがて世界中に広まっていきました。



フランネルと言っても平織りのものや綾織りのもの、コットン(綿)を混ぜたコットンフランネル、最近ではコットンではなく化学繊維を混ぜたものもあります。また起毛のさせ方も国やメーカーによって異なり、質感に違いがあります。最近はコットン100%であっても、似たような柄で作られたシャツなら全てネルシャツと呼ばれています。素材とは関係ないくチェック柄の厚手のシャツは、最近はネルシャツになっています。

ネルシャツの拡散

ヨーロッパでも古くからフランネルを使ったシャツはありましたが、今日のネルシャツを広めたのはアメリカです。デニムやシャンブレーよりも暖かいワークシャツとして、1930年代から多くのメーカーが作るようになります。当初は木こりや農家に向けて作られていましたが、屋外で働く建築作業員にも広まり、彼らが普段着としても使ったことから世間一般に広く普及しました。



戦前のアメリカでは労働者の作業着であり、お金がない彼らが普段着としても作業着を着ていたわけですが、戦後のアメリカの発展によりネルシャツも海外に輸出されていきます。この流れは炭鉱労働者の作業着だったジーンズの伝播と似ていますね。

関連記事:デニムとジーンズの歴史をおさらいしてみた

※ジーンズとネルシャツ

70年代にはネルシャツも市民権を得て、中流階級の人たちの普段着となっていきます。ちなみに友人のアメリカ人(ニューヨーク在住)に聞いたところ、一時期はラテン系のギャングがようネルシャツを着ていたので、今でもそのイメージが今も強いと言っていました。裕福な人でもジーンズを履くけど、ネルシャツを着る裕福な人はいない気がするそうです。

ネルシャツをお勧めする理由

アメリカでギャングだとか貧乏そうとか思われていたとしても、ネルシャツには魅力があります。なにせ暖かくコートやジャンパーの下に一枚着るだけで、寒さがぐっと抑えられます。ニットの方が暖かいのですが、生地の厚さが違います。薄手なのに十分な暖かさを得られるのがネルシャツなのです。

またニットは代え難い魅力がありますが、天気によっては汗をかきますよね。ネルシャツは温度調節するのにちょうどいいんです。暑くなったら脱いでバッグにに放り込み、Tシャツの上にアウターを着て、寒くなったらまた着たらいいんです。ざっくり使えて便利なシャツとして使い勝手が良いため人気が高いと言えるでしょう。

ネルシャツは屋外でのワークシャツなので、発見されやすいように派手なチェック柄が多くあります。近年は黒の地味なコートやジャンパーの人が多いですが、インナーも地味だと全体が暗い感じになります。ダークなアウターに派手目のネルシャツは、とてもよく合うのです。そしてガンガン洗えるのも魅力です。気を使わないで、ラフに扱えます。

代表的なブランド

残念ながら、アメリカ製のブランドはほとんど残っていません。アメリカの代表的なブランドも、日本企業がライセンスを取得して日本国内向けに作っているケースが多々あります。以下に代表的なブランドを紹介します。

カムコ

設立年はよくわかりませんが、アメリカのネルシャツと言えば、まずカムコです。1950年代にはアメリカのシアーズやJCペニー、70年代にはラルフ・ローレンの商品を作っていました。アメリカを代表するネルシャツのブランドですが、現在は(株)カントリー貿易(東京都千代田区)が生産しています。そのため古着市場ではアメリカ製だった時代のものが、高い人気になっています。


現在のものも厚手のシャツが人気で、ネルシャツの中でも上質なシャツとして好評です。

ファイブブラザー

1890年にニューヨークに設立されたワークウェアブランドです。古着の世界でネルシャツといえば、こことカムコ、ビッグマックが三代ブランドと言われたりします。。しかしこちらも倒産し、現在はトップウィン・グループ(大阪府吹田市)が商標権を取得して、日本向けにアレンジして生産しています。


アームホールなどが細身になっていて、古き良き時代の雰囲気を残しつつ現代風の着こなしが可能です。ドラマ「HERO」で、木村拓哉さんが着ていたことでも話題になりました。

ビッグビル

CODET社のワークウェアブランドとして、1946年に設立しました。アメリカとカナダに工場があるため、アメリカ製とカナダ製があります。数年前に工場を中国に移しましたが、さまざまな事情からアメリカ工場が再開しました。「中国製の方が品質が良かった」という声もちらほら聞こえますが、少々雑なつくりがアメリカ製らしさでもあります。



割と安価なので、日本でもワークウェアとして使っている人も多くいます。

オレゴニアン・アウトフィッターズ

1960年に始まったファクトリー・ブランドで、多くのブランドのOEM先だった工場が始まりです。一時は生産を止めていたのですが、2011年から再開しています。アメリカ製に拘ったブランドですが、アメリカ企業が生産しているのか日本企業がアメリカ工場で生産しているのか、正直いまひとつわかりません。


しかしかつてのアメリカワークブランドの雰囲気が残り、高品質と評判です。私も3着持っています。

リー

日本では馴染み深いブランドですが、それもそのはず1987年から日本での商品開発と販売は日本のエドウィン(東京都品川区)が行っています。リーはアメリカのVFカンパニーのブランドで、ジーンズとしてはアメリカでも大手に入るブランドです。



したがって日本で購入できるリーのネルシャツのほとんどは、エドウィンが作っています。生地がやや薄手という気がしますが、価格も抑えめで肌触りもなかなかです。

ペンドルトン

ブランケットで有名なペンドルトンは、ピュアウール100%のシャツを作っています。そのため肌触りが圧倒的によく、一度着ると虜になる人も多くいます。価格がやや高めですが、着れば納得のブランドです。


イギリスからの移民一家が100年以上前に始めたペンドルトンは、今でもアメリカでの生産にこだわる希少なブランドです。

フィルソン

アラスカ・ガイド・シャツという名前でネルシャツを販売していて、ロングセラー商品になっています。フィルソンらしい頑丈さが売りですが、サイズがかなり大きめなので買うときには注意が必要です。


アメリカ製が多いフィルソンの製品の中で、ネルシャツはエルサルバドル製やニカラグア製になっているというのも面白いですね。

ネルシャツの着方

もはやネルシャツに着方など存在せず、好きなように着ればいいと思います。ボタンを留めてパンツに裾を入れてもいいですし、Tシャツの上に引っ掛けるだけでもいいです。ルールも何もないので、好きに着ればいいと思います。



一方でオタクファッションの代表的な言い方もされ、ネルシャツは格好悪いというイメージもあります。気を使うべきは2つあって、まずはサイズ感です。基本的にピッタリしたサイズの方が、変な着こなしになりにくいです。もう一つは色の使い方で、ネルシャツそのものが派手なので、パンツや靴、アウターなどで色を使いすぎないようにしましょう。

まとめ

ネルシャツはアメリカの屋外向けワークウェアとして世界中に広がり、肌触りの良さ、暖かさ、飾り気のない武骨さが人気となりました。何よりかさばらないので、重ね着の一つとして使えば暑くなった時にカバンに放り込むことができる便利な一枚です。流行に関係なく着られ、似合わない人がまずいないのがネルシャツです。持っていない方は、ぜひ手にしてみてください。

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