全ての食べ物は毒である /パラケルスス の教え
危険な食品というのが度々話題になり、危険な化学物質を含んだ食品が問題視されることが多々あります。では何が危険な化学物質なのでしょうか。中世に活躍したパラケルスス の言葉から、毒とは何かを考えてみましょう。
これが今日の毒性学の基礎になっています。毒とは何かというと、この世のありとあらゆるものが毒なのです。そして毒性の強さを決めるのは体内に取り入れられる量です。
和歌山毒入りカレー事件で有名になったヒ素は毒性の高さで知られていますが、多くの日本人は海産物を通してヒ素を摂取しています。微量ではその影響はほとんどないのです。
一方、水が毒だと考える人はいないと思いますが、1時間に7リットルの水を飲んだ人が死亡した事例があります。水中毒と呼ばれる症状で、腎臓が尿を作るスピードを大きく上回る速度で水を飲み続けると、低ナトリウム血症を引き起こして死に至ります。
このように、何が毒であるかは量によって決定されるというのが毒性学の基本とも言えます。
さまざまな功績がありますが、一部の方には錬金術師としての功績でパラケルススを説明した方がわかりやすいでしょう。彼は錬金術や神秘主義に関する研究ノートを残していて、それによると人工的に生命を作り出すことに成功しています。
蒸留機に人の精液や数種類のハーブなどを加えて40日間経つと、何かしらの物質が出来上がり、それに人間の血液を与え続けて馬の胎内と同程度の温度管理をすると、小さな人型の生命体が生まれたと記しています。それは弱々しくフラスコの中でしか生きられなかったそうです。
パラケルスス は、その生命体を「ホムンクルス」または「フラスコの中の小人」と呼んでいました。上記の製法には秘訣があり、もっとも重要な材料は「賢者の石」を使うことだとされています。賢者の石が何なのかは記載がないため不明です。
そしてパラケルスス はペンネームであり、彼の本名はフォン・ホーエンハイムといいます。これでお気付きの方もいると思いますが、パラケルススの研究ノートは漫画「鋼の錬金術師」の元ネタで、パラケルスス は主人公達の父親ヴァン・ホーエンハイムのモデルになのです。
このように怪しげな研究にも没頭したパラケルススですが、今日の毒性学の基礎を築いたのも事実なのです。
関連記事:実写版公開直前 父性からみる「鋼の錬金術師」
ただし人体実験で半致死量を求めたわけではないので、いくつもの数値が示されているケースも多く、自分の主張に利用するために都合の良い数値を用いるケースが多くて混乱を招いています。
例えばニコチンの致死量です。体重60kgの成人なら50mg程度で死に至るとされていました。これはタバコ2本から3本分のニコチンに該当し、タバコからニコチンを抽出して殺害しようとした例もあります。しかし死に至ことはなく、また誤ってタバコを飲み込んだ多くの事故でも、その程度の量では死んでいません。
そこで致死量の根拠になった実験を精査すると、かなり曖昧な実験で根拠に乏しいことが判明しました。そこで動物実験の結果を元に、ニコチンの致死量0.5〜1g程度と言われるようになりました。しかし喫煙擁護派の一部は元の実験の曖昧さを批判して、ニコチンの致死量を過剰に多く言う傾向がありますし、喫煙反対派の一部は1mgで成人は死ぬと極端な数字を出していたりします。
水道水やミネラルウォーターにはヒ素が含まれますが、あまりに微量なので人体への影響はありません。ヒジキにもヒ素が含まれていることがわかり、食べるのを控える人が増えましたが、こちらも含まれるのはごくわずかな量です。
食品の安全性を考えるなら、なんでも幅広く食べることが最大のリスクヘッジになります。100%安全な食品は存在せず、あらゆる食品は毒を含んでいます。ですから同じものを食べ続けるのではなく、さまざまなものを食べることで、取り入れる栄養素も毒素も分散され、リスクも分散されるからです。
食品の安全に関して好き嫌いが激しいのは、リスクが高いことなのです。

にほんブログ村
毒性学の基本
パラケルスス は毒について、このように述べています。あらゆるものは毒であり、毒無きものは存在しない。あるものを無毒とするのは、その分量のみによってである。
Alle Ding' sind Gift und nichts ohn' Gift; allein die Dosis macht, das ein Ding kein Gift ist.
これが今日の毒性学の基礎になっています。毒とは何かというと、この世のありとあらゆるものが毒なのです。そして毒性の強さを決めるのは体内に取り入れられる量です。
和歌山毒入りカレー事件で有名になったヒ素は毒性の高さで知られていますが、多くの日本人は海産物を通してヒ素を摂取しています。微量ではその影響はほとんどないのです。
一方、水が毒だと考える人はいないと思いますが、1時間に7リットルの水を飲んだ人が死亡した事例があります。水中毒と呼ばれる症状で、腎臓が尿を作るスピードを大きく上回る速度で水を飲み続けると、低ナトリウム血症を引き起こして死に至ります。
このように、何が毒であるかは量によって決定されるというのが毒性学の基本とも言えます。
パラケルススとは
1493年にスイスで生まれた医師、薬剤師、化学者、錬金術師、思想家、悪魔使いなどの肩書きを持ちます。活動範囲はヨーロッパ各地にまたがり、中世ヨーロッパの科学発展に貢献した人物として知られています。さまざまな功績がありますが、一部の方には錬金術師としての功績でパラケルススを説明した方がわかりやすいでしょう。彼は錬金術や神秘主義に関する研究ノートを残していて、それによると人工的に生命を作り出すことに成功しています。
蒸留機に人の精液や数種類のハーブなどを加えて40日間経つと、何かしらの物質が出来上がり、それに人間の血液を与え続けて馬の胎内と同程度の温度管理をすると、小さな人型の生命体が生まれたと記しています。それは弱々しくフラスコの中でしか生きられなかったそうです。
パラケルスス は、その生命体を「ホムンクルス」または「フラスコの中の小人」と呼んでいました。上記の製法には秘訣があり、もっとも重要な材料は「賢者の石」を使うことだとされています。賢者の石が何なのかは記載がないため不明です。
そしてパラケルスス はペンネームであり、彼の本名はフォン・ホーエンハイムといいます。これでお気付きの方もいると思いますが、パラケルススの研究ノートは漫画「鋼の錬金術師」の元ネタで、パラケルスス は主人公達の父親ヴァン・ホーエンハイムのモデルになのです。
![]() |
| ※「鋼の錬金術師」のヴァン・ホーエンハイム(左後) |
このように怪しげな研究にも没頭したパラケルススですが、今日の毒性学の基礎を築いたのも事実なのです。
関連記事:実写版公開直前 父性からみる「鋼の錬金術師」
半数致死量(LD50)という考え方
何かを動物に投与して、半数が死んでしまう量のことです。一説によるとヒ素(亜ヒ酸)の半数致死量は2mg/kgです。つまり体重60kgの人を100人集めて120mgのヒ素を食べさせれば50人が死ぬという計算になります。実際に人に食べさせて試すわけにはいかないので、必ずしも正確な数値ではないと言われていますが、危険性を考える時に半致死量は一つの目安となります。ただし人体実験で半致死量を求めたわけではないので、いくつもの数値が示されているケースも多く、自分の主張に利用するために都合の良い数値を用いるケースが多くて混乱を招いています。
例えばニコチンの致死量です。体重60kgの成人なら50mg程度で死に至るとされていました。これはタバコ2本から3本分のニコチンに該当し、タバコからニコチンを抽出して殺害しようとした例もあります。しかし死に至ことはなく、また誤ってタバコを飲み込んだ多くの事故でも、その程度の量では死んでいません。
そこで致死量の根拠になった実験を精査すると、かなり曖昧な実験で根拠に乏しいことが判明しました。そこで動物実験の結果を元に、ニコチンの致死量0.5〜1g程度と言われるようになりました。しかし喫煙擁護派の一部は元の実験の曖昧さを批判して、ニコチンの致死量を過剰に多く言う傾向がありますし、喫煙反対派の一部は1mgで成人は死ぬと極端な数字を出していたりします。
まとめ
食べるということは体内に異物を取り入れることで、取り入れられた異物は体内で化学変化を起こして吸収されます。その化学変化の過程で、体に良いものと悪いものが吸収されていくのですが、悪いものより良いものが多く含まれるものを食品と呼んでいるに過ぎません。水道水やミネラルウォーターにはヒ素が含まれますが、あまりに微量なので人体への影響はありません。ヒジキにもヒ素が含まれていることがわかり、食べるのを控える人が増えましたが、こちらも含まれるのはごくわずかな量です。
食品の安全性を考えるなら、なんでも幅広く食べることが最大のリスクヘッジになります。100%安全な食品は存在せず、あらゆる食品は毒を含んでいます。ですから同じものを食べ続けるのではなく、さまざまなものを食べることで、取り入れる栄養素も毒素も分散され、リスクも分散されるからです。
食品の安全に関して好き嫌いが激しいのは、リスクが高いことなのです。
にほんブログ村





コメント
コメントを投稿