俳優 深水元基はどこへ向かうのか

1980年、東京生まれの役者で学生時代は「メンズ・ノンノ」のモデルをしていました。モデル時代は「元樹」と名乗っています。俳優志望が強く、モデルから役者に転身しますが、なかなか芽が出ませんでした。私が深水元基の名前を覚えたのは、映画「クローズZERO」でした。出番は少ないもののリンダマン役の彼は強烈な印象を残しました。



役者デビュー

2000年頃から俳優としての活動をはじめ、中井貴一主演のドラマ「ウソコイ」などに出演しています。大きな役に恵まれることはなかったのですが、本人は演技に大きな自信を持っていて、他人のアドバイスも耳に入ってこなかったそうです。「タイガー&ドラゴン」など人気作品にも出演しますが、徐々に自分の演技に疑問を持つようになります。そんな中、若手俳優が勢ぞろいする映画への出演が決まります。「クローズZERO」です。

リンダマン

映画「クローズZERO」は小栗旬や山田孝之らを中心に、若手俳優が結集してケンカに明け暮れる高校生を描いた作品です。不良がひしめく鈴蘭高校でてっぺんを取るためにケンカを繰り返す生徒を尻目に、最強と呼ばれながら鈴蘭のてっぺんには全く興味を示さないリンダマンと呼ばれる男を深水は演じました。



マンガの原作者から、世界観を使うだけでマンガの登場人物を使わないという条件を出されての映画化でしたが、リンダマンは例外的にマンガと同様に映画にも出てきました。そのためリンダマンは物語の大筋には絡まないものの、大役でもありました。ここで深水は187cmの長身というだけでなく、マンガから抜け出てきたようなそっくりの雰囲気をまとって登場しました。

※今見ると、豪華な役者陣だった「クローズZERO」

しかし当の深水は、この映画に出て自分の演技がいかに下手なのかを悟り、苦悩していたといいます。世間の高い評価と反するように、役者として悩み続けることになります。

園子温の抜擢

映画監督の園子温は、深水を「HAZARD」の助演に抜擢し、続いて「気球クラブ、その後」では主演に抜擢します。これらの映画はセールス的に大ヒットしたわけではないので、それほど深水が注目されたわけではないのですが、確実に役者としてのキャリアを築くことになります。

「普段の自分とかけ離れている役の方が、客観的に見られるからいい」と深水は語りますが、園子温は、さらに深水のイメージとはかけ離れた役を与えます。「みんな!エスパーだよ!」ではテレポーテーションができる高校生役で、しかも女性の前で全裸になるのを好む性癖の持ち主でした。顔がばれないようにガムテープを巻き付け、全裸になって女子更衣室にテレポーテーションする深水を、「クローズZERO」のリンダマンとは気が付かない人が大勢いたようです。

※「みんな!エスパーだよ!」の深水元基

園子温に気に入られたのか次々に映画への出演が決まり、ついに深水の評価を決定的にする映画に出演します。

新宿スワンの衝撃

園子温が監督した「新宿スワン」はマンガを原作にした映画で、新宿のスカウトを主人公にした物語です。綾野剛が主演し、その上司に伊勢谷友介、ライバル役に山田孝之、その他沢尻エリカに金子ノブアキと豪華な顔ぶれの映画です。深水は綾野剛演じる白鳥の先輩にあたる関玄介を演じました。



この関の迫力たるや尋常ではありません。強引さや凶暴性だけでなく、頼れる兄貴分としての器の大きさも備えた、途方もないスケールの人物です。ネットには「原作にそっくりだ」という声が多く上がっていましたが、私は原作を読んでいないのでその比較はわかりません。しかし恐ろしさと頼もしさが同居する関玄介を、深水は怒涛の迫力で演じ切りました。多くの人が深水の演技を称賛し、主演の綾野剛を完全に食っていました。



深水は、ボーリング場でのケンカのシーンから撮影が始まったので、大暴れして吹っ切れたと語っていますが、それだけでは片付けられない魅力を発揮していました。深水元基は大注目の役者になり、今後が期待されました。

まとめ

「新宿スワン」以降も、「7s」や「少女椿」などに出演し、三池崇史が総監督を務める少女向け特撮番組「アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!」などにも出演しています。大作への出演も期待されていますが、結婚したこともあり、さらにファッションブランドのプロデュースも手掛けているので多忙そうです。

※NHKの大河ドラマ「真田丸」にも出ていました。

今後、どのような映画やドラマに出演して、どんな役でどんな演技を見せるのか楽しみな役者です。



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