真野恵里菜は名バイプレイヤーになれるのか

2013年以降、真野恵里菜から目が離せません。年々評価が高まっていますが、彼女の堅実な演技は記憶に留まらない事も多く、そこが彼女の魅力になっています。この高い評価はメディアにによるものというより、現場の関係者から出ているものです。元アイドルの真野恵里菜の何が、どのように評価されているのかを考えてみたいと思います。






元ハロプロのアイドル

1991年生まれの真野恵里菜は、松浦亜弥に憧れて15歳の時にハロープロダクションのオーディションに合格します。その後はモーニング娘。などに所属するのではなくソロでデビューしていますが、私はアイドル時代の真野恵里菜を全く知りません。なにせこの時期はAKB系のアイドル全盛期で、彼女にスポットライトが当たることはほとんどなかったからです。

※アイドル時代

2013年にハロプロを卒業し、その後は女優に転身します。2013年にはドラマや映画に主演し、その後は主役、脇役を含めてで多くの出演を果たしています。

女優へのステップ

ハロプロ時代からドラマへの出演があり、演技に関する興味はあったようです。園子温監督の「愛のむきだし」をDVDで見た際に、主演の満島ひかりが園子温に徹底的に追い詰められるメイキング映像を見て、自分もこのくらい厳しく指導してもらえたら演技が上達するかもしれないと考えていたそうです。

※「愛のむきだし」の満島ひかり

ハロプロを卒業すると「はい、明日からなんでも好きにやってください」と言われ、仕事もコネもない状態で路頭に迷ったといいます。そこで園子温がやっているワークショップに出かけます。そもそもこのワークショップは無名の役者を育てるためのものなので、真野恵里菜はかなり目立ってしまいました。「あの子、真野恵里菜じゃない?」とヒソヒソ声が聞こえる中、課題をこなしていったようです。




戸惑った園子温

自分のワークショップに、明らかにテレビで見たことがある顔がいる。園子温は「なんでアイドルがこんなところに?」と戸惑ったそうです。しかし台詞も満足に覚えない参加者が多い中、完璧に台詞を覚えて自分なりに工夫して演じようとする姿に好感を持ったようです。「他の子達と比べて、覚悟が違うと思った」と、その時の様子を語っています。

※園子温

華やかなアイドルの世界から、薄汚い稽古場で汗を流しながら演技を習得しようとする姿勢に加え、スキルの高さを気に入った園子温は彼女にチャンスを与えました。テレビ東京の深夜ドラマへの出演です。

みんな!エスパーだよ!への出演

私が真野恵里菜を初めて見たのは、このドラマでした。「とうとうテレ東がやらかした!」とツイッターで大騒ぎになっていたので、見てみたのです。真野恵里菜はヒロインを演じていましたが、ほとんど記憶には残っていません。主演の染谷将太が個性的すぎるキレキレの演技を披露し、清純派だった夏帆が迫力あるヤンキーを演じ、他にも強烈なキャラを演じる役者が大量にいる中で、真野恵里菜はヒロインながら埋没気味ですらありました。

※腹黒いヒロインを演じました

正直、私は真野恵里菜に関してネガティブな印象を持ちました。元アイドルが下ネタを口にし、パンチラすることで話題を集めようとしているのが、何とも安っぽいと思ったのです。ところが私の感想とは違い、真野恵里菜の評価は現場でグングン上がっていたようです。この番組の関係者は口をそろえて勘の良さと適応力の高さを言います。そして真野本人も大きな刺激を受けていたようです。

気さくなイケメンモデルの深水元基は、カメラが回った瞬間にハイテンションで露出が好きな変態に豹変し、どこまでが演技かわからないお笑い芸人のマキタスポーツ、注文に応じて次々に演技を変化させる安田顕、そしてなにより染谷将太に圧倒されたようです。染谷が鴨川嘉朗に入った瞬間、現場の雰囲気や空気が一変したそうで、優れた役者のポテンシャルを目の当たりにし、演技に対する欲がでてきたと言います。

※深夜ドラマなのに豪華なキャストでした(クリックで拡大)

また同世代で、今後の方向性に悩んでいた夏帆と多くの時間を過ごせたことも大きかったと語っています。

実写版パトレイバー

私が真野恵里菜に注目しだしたのは、実写版パトレイバーからでした。原作では泉 野明(いずみ のあ)という女性が主人公でしたが、実写版では泉野 明(いずみの あきら)という別の女性が主人公で、それを真野恵里菜が演じていたのです。見た瞬間に「みんな!エスパーだよ!」のヒロインと同一人物だとは思えませんでした。同じ顔なのに明かな別人がそこにいたのです。

※特車2課に馴染んでいました

真野恵里菜はあえて原作を見ずに撮影に挑んだと言いますが、総監督の押井守は真野恵里菜が泉 野明の雰囲気を持っていることに焦ったそうです。アニメとは全く異なることをしたかったのに、同じキャラでは実写にする意味がないと思ったからだそうです。その後、細かな演出によって独自のキャラを築いていきますが、かなり複雑な性格の主人公をさらっと演じていることに演技力の高さを感じさせました。

園子温映画への連続出演

「新宿スワン」では、短い時間の出演ですが幸薄いキャバ嬢を演じます。陽気に振る舞いながらも影があり、後の自殺を暗示させる役です。これを見て、私は演技力の高さを痛感しました。単に明るいキャラでは主演の綾野剛が気に掛けるのが不自然になりますが、全く不自然さを感じない演技でした。

※綾野剛(左)、伊勢谷友介(右)とのシークエンス

さらに「リアル鬼ごっこ」ではトリプル主演の1人を演じます。単に走るだけの役でしたが、メインのトリンドル玲奈や篠田麻理子よりも堅実な演技でした。この頃には映画関係者の間では、かなり評価が高まっていたようです。やって欲しいことをサラッとやってくれる勘の良さが、現場で重宝されているようです。

※最も見せ場のない役なのに、注目されました。



逃げ恥で幅広いファンを獲得

高視聴率を誇ったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で、新垣結衣が演じる主人公の親友、やっさんを演じたことで、映画好きの間だけでなく普通の人達からも真野恵里菜の名前が聞かれるようになりました。元ヤンキーのママ役は好評で、「やっさんを演じているのは誰?」といった声がネットでも散見されました。

※やっさんは人気キャラクターでした。

逃げ恥への出演後に、サッカー選手の柴崎岳と結婚を前提につきあっていることが報じられ、「やっさんに恋人ができた!」と、ちょっとした騒ぎになりました。

彼女の演技の特徴

園子温の門下生にありがちな、自己主張の強い演技ではありません。「私が二階堂ふみだー!」「私が満島ひかりだー!」と言わんばかりの個性的な演技をする女優を多く育ててきた園子温ですが、真野恵里菜にはそのような感じが全くないのです。役の中にすんなり入っていき、物語の中で光を放つよりも自然な演技をしています。

※撮影中に本当に失神した、映画「脳男」の二階堂ふみ

園子温は女優を追い詰めることで有名で、真野恵里菜もそれを期待して園子温のワークショップに行ったのですが、全く追い詰められることがなかったので「この演技でいいのだろうか?」と不安になることがあったようです。園子温は「できる人を追い詰める必要はないでしょう。真野はそのままでいい」と語り、変にいじるよりも本人の感性を大事にして経験を積ませる方が伸びると考えていたようです。

まとめ

真野恵里菜は、まばゆい存在感でスクリーンを彩るタイプの女優ではありません。しかし確実に演技力を高めていて、一般の人気以上に映画関係者の評判が高いのが特徴です。そのため、名バイプレイヤーになれるのではないかと私は思っています。主演よりも彼女はバイプレイヤーとしての方が、その魅力を発揮できるように思うのですが、いかがでしょうか。順調な俳優人生を歩んでいるので、このままどんどん高みをを目指していただきたいと思う女優です。


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