組織のガバナンスをNGT48で考えてみた

山口真帆暴行事件に始まったNGT48にまつわる騒動は、被害者の山口真帆がグループを卒業することで、1つの山を迎えたように思います。ネットにはさまざまな噂が飛び交い、それに基づいた抗議運動もあるようで、騒動は収束するどころか拡散しているように見えます。私は事の真相よりも、この騒動をめぐる人の動きに興味があり、今回はそこら辺の話を書いてみたいと思います。



騒動の概要

2018年12月8日、20代の無職男性と大学生2名の計3名が、山口真帆の自宅マンションに押しかけて、山口の顔を掴むなどの暴行を働きました。翌日、新潟県警は暴行の疑いで2名を逮捕しますが、29日に検察は不起訴処分として釈放しています。

2019年1月8日、山口は動画配信で暴行事件があったことを告発し、対処すると約束した運営側が1ヶ月近く問題を放置していることを訴えました。翌日、NHKをはじめとする多くのメデイアが報道したことでこの事件が広く知られることになります。

※山口真帆

1月10日にNGT48劇場に出場した山口は、この騒動について謝罪を行います。これに各方面から運営側に批判が集まり、事実上取材拒否をしていた運営サイドは公式サイトに事件の概要を掲載します。さらに対応策としてメンバー宅への巡回や、防犯ブザーの支給を発表しました。これが的外れだと強い批判が起こり、NGT48の公演が次々にキャンセルになります。

1月14日、責任者の辞任と運営の謝罪を求める署名が5万にを超えたのを受け、支配人の退任と謝罪を発表しました。この後、新潟県知事も騒動を懸念するコメントを出し、事態はますます大きくなります。2月1日に第三者委員会の設置が発表され、3月21日に調査結果報告書が発表されました。翌日AKSが記者会見を開き調査結果報告書の説明を行いますが、会見中に山口がツイッターで反論する異例の事態になり、AKS側が説明に屈する場面が何度も起こりました。



その後、NGT48のイベントやラジオ番組の中止が相次ぎ、JRやイオンなどスポンサー契約の打切りやNGT48を起用したCMが全て消滅するなどの事態に発展し、4月21日に山口真帆と他2名のグループ卒業が発表されました。

第三者不在の第三者委員会

NGT48の問題に限らず第三者委員会が設置されるたびに思うのですが、第三者委員会のメンバーは誰から報酬をもらっているのでしょうか。AKS(芸能プロダクションでAKB関連団体の企画やグッズ販売をしている会社。今回の騒動の運営サイドのトップ企業)から報酬を受け取っているなら、第三者とは言えないでしょう。報酬をくれる相手に都合が悪いことは出しにくいからです。しかし他の人が費用を負担するとは思えず、ただ働きで第三者委員会の仕事をする人もいなそうです。

アメリカで第三者委員会を発足する際に、絶対に外せない条件が無報酬のボランティアだそうです。アメリカの新聞社やスポーツ団体や学校で不祥事が起こると第三者委員会が設置されますが、あの人達は全て無報酬でやっているそうです。日本にはこのようなシステムも文化もないので、誰かが報酬を払うことがほとんどです。これでは第三者とは言えないでしょう。

ガバガバのガバナンス

それでも第三者委員会の報告書は、なかなか辛辣なことを書いています。迷惑行為を繰り返すファンに関して、このような記載があります。

「劇場内禁止事項」以外には、「出禁」に関する具体的な要件等を定めた規程はなく、どのような場合に警告し「出禁」にすればよいか、またどのような場合にこれらの措置を解除すればよいかという判断を場当たり的に行わなければならなかったようであり、実際には、その都度、判断がなされて「出禁」の処分が科されているにすぎなかった。
また、私的領域での接触を求めたり、実際に接触を行った者に対する処分については、そもそも本件事件までは検討したことがなかったようにも窺われる。

問題があると場当たり的に出禁にしていて、今回問題になっている私的接触を求めるファンに対して何の検討もされていなかったようです。さらに誰が誰を監督するのか、誰になんの権限があるのかが不明瞭で、劇場支配人ですら職務権限が明確でないと書かれています。ということは、何かを決める時に誰が責任をとるのか不明のままなし崩し的に決まり、誰がどんな権限で行動すればよいかわからず、スケジュールだけは詰まっているのでなあなあの管理が行われていたことがわかります。



未成年者を預かりながら、芸能活動のリスクの説明が十分になされず、監督も管理もなあなあの状態なので、今回のような暴行事件が起こったら責任は当事者が被るしかないのがよくわかります。ちなみに先に書いたアメリカの第三者委員会ですが、多くの場合は大学が引き受けて担当教授の指導の下に学生が調査をすることが多いそうです。NGT48の件も、新潟の経営学などを専攻するゼミが中心になっていれば、どうやったら組織が機能不全になるかを生きた素材で勉強できる絶好の機会になったのではないかと思います。

ネットの噂とイメージの低下

ネットの大半は嘘だと言われていますが、事実かどうかが問題ではなく悪い噂が広がることが問題になることが多々あります。今回のケースもネットにはさまざまな噂が飛び交っていて、何が本当かはわかりませんし、私もそこにはあまり興味がありません。噂によってイメージが低下しているのは事実で、その噂を打ち消すような態度をNGT48の運営サイドが見せることができないのが問題だと思います。ここではネットには様々な話が書かれていますが、多く書かれている噂を挙げてみたいと思います。

レンタルビデオ店で働くAは、会員カードの登録情報からNGT48メンバーの個人情報を入手して、ファンに販売して利益を上げていました。Aは個人情報を利用したり握手会への参加などでNGT48のメンバーのBと仲良くなり、個人的な関係を築きます。Aは仲良くなったメンバーから他のメンバーの個人情報を入手して、それを販売してさらなる利益を上げます。

こうして得た利益をAはBのために、総選挙の投票権(CD)を大量に購入して投票します。BはAと個人的に仲良くして他人の個人情報を渡すことで、総選挙の順位が上がるためさらに個人情報を渡すようになる。Aは他のファンも巻き込んで個人情報の販売と、B以外の特定のメンバーとも同様な関係を結ぶようになる。山口真帆は仲間になるように誘われたが拒否しており、本人のツイッターによると拒否したのは2年前のこと。その年の総選挙ではNGT48のメンバーが大躍進している。

ぼかして書くと話がブレそうなので噂通りに書くと、メンバーが総選挙の票の見返りに肉体関係を結んでいると噂されているわけで、総選挙という大イベントの妥当性が疑われているのです。すでにNGT以外のグループにも噂は広がっていて、他のグループも含めて総選挙で上位に入った人達は特定の人達と肉体関係を結ぶことによって票を稼いでいたと噂されています。当然ながら運営側としては、絶対に否定したいところです。

残念ながらそれができていないため、これが事実のようにネットのあちこちで語られていて、グループのイメージはみるみる低下しています。こういったネガティブな噂をかき消すような改善策を打ち出さなければ、ますますイメージの低下は加速するでしょう。

最も炎上する対応をしたAKS

4月21日のイベントに山口真帆が登場すると発表があった時から、AKSにとって最悪なのは山口真帆の卒業だと言われていました。トカゲの尻尾切り、臭いものに蓋などと揶揄される、一番炎上する対応方法です。それがそのまま実現したため、見事に炎上しています。

※卒業する3人のツイッターに掲載された画像

さらに3人の卒業公演は、3人だけが出演するそうです。従来は他のメンバーも参加して卒業を見送るそうですが、それをしないようです。異例の対応だそうで、これがさらに炎上の火種になっています。AKSは時間が経てば、この問題は自然消滅すると考えたのでしょう。それも対応方法の1つですが、それが上手くいくかどうかは今後の成り行き次第です。

まとめ

本来は、AKSがどういう対応を取るべきだったかを書くつもりでしたが、どうするのがベストだったか思いつきませんでした。関与したと言われるメンバーを解雇しろという声が多くありますが、不正の証拠がなければ山口の証言のみで解雇するのは難しいでしょう。何より一部のメンバーは、AKSではなく大手芸能プロダクション所属なので、証拠もなく解雇すれば賠償問題に発展しかねません。

NGT48の活動を停止して、真相究明に乗り出すという手もありますが、それは所属タレントの収入がなくなることを意味するので、これもなかなか難しいと思います。ガバナンスの利かない肥大化組織にしてしまったことが根本的な原因であり、解散するのが良かったのかもしれませんが、それはそれで隠蔽工作と捉えられると思います。

このように収益さえ上げれば組織はいくらでも肥大化できるものの、それを動かしていくにはさまざまなルールや責任の所在の明確化が必要です。今回の件はガバナンスを考えるうえで、重要な例になると思うのですが、いかがでしょうか。



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