運を一度に使い果した男 /レスリングの英雄の悲劇

※この記事は2016年8月16日に、前のブログに書いた記事を元にしています。

ルーロン・ガードナーというシドニー五輪の金メダリストの話です。ガードナーは単なる金メダリストというだけでなく、たった1試合で歴史に名を刻んだ選手です。シドニー五輪の決勝戦は、大金星というだけでなくガードナーの人生を変えるほどのインパクトがあるものだったのです。



絶対王者アレクサンドル・カレリン

シドニーのレスリングは、ロシアのアレクサンドル・カレリンが、五輪4連覇を達成するか否かが最大の焦点でした。13年間にわたり300試合無敗で、五輪3連覇、世界選手権9連覇、欧州選手権10連覇のカレリンは、熱が出ようが交通事故に遭おうが、淡々と勝利を当然のように挙げてきました。もはやカレリンの引退を待つしかないと言われ、カレリンが出る大会は2位争いと言われていました。



カレリンの名を知らしめたのは、ソウル五輪の決勝戦でした。大きくポイントを開けられたカレリンは敗戦が決定的でしたが、パーテールポジションから相手を持ち上げて投げ技につなげ、この一撃で大逆転を果たしました。カレリンがいる130kg級では持ち上げるという概念がなかったのですが、そこに投げ技を持ち込んだカレリンの怪力に世界中が度肝を抜かれたのです。

※カレリンズ・リフトと呼ばれました。


シドニー五輪の決勝

そのカレリンの五輪4連覇を阻んだのが、ガードナーでした。もちろんガードナーは運だけの選手ではありません。しかしカレリンとの試合では両者ともポイントが奪えず、ガードナーを持ち上げようとしたカレリンの手が離れたために、反則で与えられた1ポイントを守り切っての勝利でした。ガードナーの勝利には、実力以上のものが必要だったのは間違いありません。



それでも13年間不敗のカレリンを破ったという事実は衝撃で、大金星を挙げたガードナーはアメリカに凱旋し、英雄として称えられました。

シドニー五輪後の浮き沈み

ジムの経営に乗り出しますが、あっという間に経営が行き詰まってしまいました。それでも2001年には世界選手権で優勝します。しかし2002年の冬に、スノーモービルを運転中に谷に転落し、マイナス30度の寒さの中で遭難してしまいます。17時間後に救出され、一命を取り留めるとリハビリを開始してアテネ五輪で銅メダルを獲得します。

※凍傷で足の指を一本失いました。

新たなトラブル

現役を引退した2004年には、日本の格闘技イベントのPRIDEにも出場しますが、これにはあまり馴染めなかったようです。そして2007年、乗っていた飛行機が墜落し、ユタ州の湖に落ちてしまいました。

※墜落したガードナーの飛行機

沈む機体から間一髪で脱出し、7度の水温の湖を超人的な体力で1時間かけて泳ぎきり、岸にたどり着きます。しかし岸についても動くことができず、翌日に釣り人に発見され、救急車で搬送されて一命を取り留めました。

まとめ

カレリンに勝った後、短期間で2度も死にかけるのもすごいですよね。その後は激太りして、テレビのリアリティショーのダイエット企画に出たりして、チョコチョコ話題にはなっています。ジム経営の失敗で作った借金もあるようで、かなり大変な生活を送っているそうです。

※太りました。


「最高の高みにも登ったし、泥も舐めたよ」

悲惨な話も多いのですが、明るいキャラだったのが、せめてもの救いです。



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