「ダメ。ゼッタイ。」では薬物中毒者は助からない

違法薬物に手を出すのはダメですが、そもそもなぜ禁止されているのか?なにが危険なのか?ということは、知っているようで知られていない部分が多くあります。覚醒剤と麻薬の違いを説明できる人は少ないですし、それらがどんな薬でどんな症状があるのか曖昧なままになっている人の方が多いのではないでしょうか。



薬物の話は多岐にわたるので、今回は覚醒剤に絞って書いてみようと思います。日本でも広く出回っている違法薬物で、暴力団の有力な資金源だからです。

1.覚醒剤ってなんなの?

覚醒剤にはアンフェタミンとメタンフェタミンの2種類があり、どちらも脳神経を活性化させる薬です。アンフェタミンは19世紀にドイツで、メタンフェタミンは同じく19世紀に日本で合成されました。市販は戦前のアメリカで始まり、ぜんそくの薬として販売されています。

日本では太平洋戦争が始まる1941年に、滋養強壮剤として販売が始まります。住友製薬のヒロポンや武田薬品のゼドリンがそれで、長時間労働者や夜間に働く人の眠気止めとして人気でした。戦時中は疲労困憊した兵士の間で人気が高まり、軍隊も支給しています。戦後も労働者を中心に疲労回復薬として、特にヒロポンが人気でした。マンガ「サザエさん」にも登場し、間違って子供が飲んで陽気になる話があります。



しかし使用者が増えてから、高い中毒性と副作用があることがわかり、日本だけでなく世界各国で禁止されました。治験の時から中毒性は指摘されていましたがタバコ程度と認識され、さらに副作用はほとんど認識されていませんでした。日本では1951年に禁止されています。

2.覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか

覚醒剤を1回でもやれば、中毒になってしまうという警告が繰り返し行われています。しかし上記のように、覚醒剤は10年間も薬局で売られていた薬で、1回で中毒になってしまうなら治験の時にわかっていたはずです。これは過剰な脅し文句です。

そのため、覚醒剤を使った人に対する脅しにはなりますが、興味本位で使った人には、大したことはないと錯覚させてしまいます。大したことないから再度使用し、使用を繰り返すうちに中毒になってしまいます。過剰な脅しは、逆効果になる場合もあります。

「覚醒剤やめますか、それとも人間止めますか」は、日本民間放送連盟が使用したキャッチフレーズですが、この言葉は覚醒剤を使用している人は人間ではないとも受け取れます。使用者の孤立感を深め、中毒になってしまった人が他者に相談できない環境を作っているという批判もあります。



薬物中毒には予防と治療の2つが必要ですが、日本の取り組みは予防だけに力を入れているという指摘が再三出ています。

3.覚醒剤の危険性

覚醒剤を1回やっただけで中毒になるはずはないのですが、では少しぐらいなら試しても大丈夫かというと、とんでもなく危険です。街で売られている覚醒剤は、量を増すために混ぜ物が入れられていますが、とんでもない混ぜ物が入っていることがあります。

小麦粉や塩などはともかく、私が警察の人に聞いた話の中にはカリウムが入っていたというのもあり、こうなると覚醒剤よりも混ぜ物の方が遙かに危険になります。覚醒剤は暴力団等の資金源になっていますが、そこら辺りにある適当なものを混ぜていることもあるので、計り知れないリスクがあるのです。



法律で禁止されている、暴力団の資金源になるなどさまざまな理由で覚醒剤に手を出すべきではないですが、混ぜ物の危険性は中毒より死を招く可能性があります。

4.ダメ。ゼッタイ。

薬物の乱用や中毒者を撲滅するために「ダメ。ゼッタイ。」というキャンペーンを厚生労働省が行っています。これも先ほどの「覚醒剤やめますか。それとも〜」と同様に、予防ばかりに力を入れて、治療に目が向いておらず、中毒者の孤立を煽っていると批判されています。


※この頃は、この方が覚醒剤で逮捕されるとは誰も思いませんでした。
日本は薬物中毒者に対して厳しく、それが予防に繋がっている面があるのは事実です。しかし一方で中毒者に対してのケアが少なく、治療を受ける環境が整っていないとも言われています。日本が飲酒に対するハードルが極端に低い(子供の前でも酒が飲めるし、酔って歩くことや道ばたや電車内での嘔吐に寛容)ことと比較すると、興味深い傾向だと言えます。

まとめ

覚醒剤は暴力団の資金源であり、某国の不正な収益源にもなっています。これを根絶することは国を挙げて行うべきであり、決して興味本位で手を出してはいけません。しかし一方では薬物中毒者への偏見も強く、家族に中毒者がいると気がついても病院に連れて行くことをためらうケースも多いようです。中毒は自力では治せませんし、治療が必要です。こういった認識を少し改めていく必要があるのではないかと思います。




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