見て見ぬ振りの罪が問われる ワインスタインのセクハラ事件

ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインがセクハラで告発され、有名女優らも被害を打ち明けて大きな騒動になっています。約30年前から、ワインスタインは女優やモデルに対してセクハラ行為に及んでいたと報道されています。



彼は自身の会社、ワインスタイン・カンパニーを解雇されましたが、ワインスタインって誰?と思う方も、ミラマックスという映画配給会社の設立者と言えばピンと来るかもしれません。

ワインスタインとは

ニューヨークに生まれ、18歳の頃には弟と映画事業を始めています。コンサートのプロモーション事業も行い、その資金で1970年にミラマックス社を設立しました。

ミラマックスは89年にソダーバーグの「セックスと嘘とビデオテープ」をヒットさせ、最も成功した独立系配給会社になります。そしてミラマックスをディズニーに売却すると、「パルプ・フィクション」などで世界的ヒットを飛ばしました。



2005年にワインスタイン兄弟は退社して、映画制作会社ワインスタイン・カンパニーを設立します。ブラッド・ピット主演の「イングロリアス・バスターズ」や「ジャンゴ 繋がれざる者」などのヒット映画を製作しました。

セクハラ事件の概要

10月5日にニューヨーク・タイムズ紙が、女優らの告発記事を掲載して表面化しました。告発した女優の中に、グウィネス・パルトロウやアンジェリーナ・ジョリーもいたため、大きな衝撃が広がりました。その後、ニューヨーカー誌に3人の女性がレイプ被害を訴えました。

※左:アンジェリーア・ジョリー 右:グウイネス・パルトロウ


この騒動を受けて8日にワインスタイン・カンパニーは、ワインスタインの解雇を決めます。さらにワインスタインの妻は離婚すると発表し、ジョージ・クルーニーやメリル・ストリープなど個人的に親交のある俳優らも批判的な声明を出します。インターン時代に働いたことがあるオバマ元大統領、多額の政治献金を受けていたクリントン元国務長官らも声明を出して、ワインスタインと距離を置くようになりました。

※左:メリル・ストリープ 右:ジョージ・クルーニー


ワインスタイン・カンパニーの疑惑

2015年にワインスタインは自身の会社との契約を更新していますが、その契約書には、「誰かを不適切に扱った場合」には、自分の費用で解決することや、問題を起こしたら250万ドル(3億円弱)の罰金を払うことが明記されていました。このことから、会社はワインスタインのセクハラを以前から知っていて放置していたとの疑惑が出ています。



取材によると、ワインスタイン・カンパニーの新人女性がワインスタインに呼ばれると、同僚達がなるべく服を重ね着して、肌の露出を抑えるようにアドバイスしていたこともわかりました。社内ではセクハラが知られていたのに、経営陣が知らなかったはずがないと言われています。

悪行を放置していたなら、ワインスタイン・カンパニーの罪も重く、ビジネスパートナー達も早々に距離を置き始めています。アップルやアマゾンは、早々にワインスタイン・カンパニーのドラマ配信を中止しました。

俳優達への疑惑

この問題は、ハリウッドの公然の秘密だったのではないかと言われています。普段は事件があるとすぐにTwitterに投稿する俳優らも、今回は反応が鈍いため、憶測が広がりました。ハリウッドにはワインスタインの手腕によってスターになった俳優が多いため、口が重くなるのは当然かもしれません。

そのワインスタインによってスターになった代表格のマット・デイモンは、「ダンマリを決め込む意気地なし」と批判されて、ようやく批難のコメントを出しました。ベン・アフレックも同様に批判されてコメントを出しましたが、ベン自身の過去のセクハラが出てきて、反省の弁を述べることになりました。

※左:マット・デイモン 右:ベン・アフレック


多くのハリウッド俳優が以前からセクハラの事実を知りながら、自分の仕事に影響が出るのを恐れて見て見ぬ振りをしてきたと、厳しい批判に晒されています。そのためワインスタインを擁護するコメントを出したリンジー・ローハンには批難が殺到しています。

※現在、リンジー・ローハンは投稿を削除しています。


ワインスタインの妻への冷たい視線

妻のジョージナ・チャップマンは元モデルで、当初はワインスタインを擁護するコメントを出していました。しかし被害女性にモデルが多く含まれるため、彼女も以前から知っていたのではないかとの疑惑が広がっています。

※ワインスタインと妻のジョージナ・チャップマン


またワインスタインは女優達に、レッドカーペットでは妻のファッションブランド、マルケッサのドレスを着ることを強要していた事実があり、離婚を発表したものの、マルケッサもいくつものビジネスをキャンセルされています。今後はレッドカーペットでマルケッサを着用する女優はいないだろうと言われ、経営危機が囁かれています。

見て見ぬ振りの罪

日本企業のコンプライアンスの研修でも、見て見ぬ振りは罪だと繰り返し出てきます。今回の事件は、まさにそれが現実の問題となっていて、見て見ぬ振りをしていたと思われる人達が厳しい批判に晒されています。

ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープならには「知っていたはず」と、厳しい批判が続いていますし、ワインスタインが長年献金してきた民主党関係者にも批判が相次いでいます。特に女性問題には敏感なはずのクリントン元国務長官のコメントが遅かったため、厳しい批判が起きています。

それともう一つ。ハリウッドが性に関して風紀が乱れているのは、周知の事実でした。ワインスタインぐらいの実力者なら、不倫相手には困らなかったはずですが、強制的な猥褻行為を長年繰り返していたということは、強制性を好む性的倒錯者の可能性もあります。その場合は精神科での治療が必要になります。


ワインスタイン・カンパニーは弟が経営を主導することになりましたが、ここ最近はヒットに恵まれていなかったので、一気に経営危機が現実化していますし、上記のマルケッサも同様です。ワインスタインの弁護士は、不当解雇として争う構えですが、ワインスタインが戻っても戻らなくても、ワインスタイン・カンパニーは沈みゆく船に見えてしまいます。
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