メンツを気にする人達

※こちらは以前の「はねもねの独り言」に書いていた記事です。

北澤防衛大臣が福島第一原子力発電所三号機への自衛隊の放水に関して、なぜ三号機を最初に放水したのか質問され、「今日が限度と判断した」と語ったそうです。どうして防衛大臣が判断するのでしょうか。北澤防衛大臣には事故の様子を見ていつが放水の限度か判断する能力と権限があるのでしょうか?こういう場合は「○○からの要請を受けて放水した。なぜ三号機を最初に放水する必要があったかについては、○○に聞いて欲しい」という回答の方が自然な気がします。




ここに透けて見えるのは、自分が中心になって動いているというアピールです。常識的に考えて、本件は防衛大臣が判断するような事案ではありません。しかし自分が判断したと言うことで、自分が震災に関して重要な役割を担っているということを伝えたかったのだと思われます。私たちからすると実にどうでもいい話なのですが、恐らく本人にとっては重要なことなのでしょう。

仙谷代表代行は、計画停電が計画通りに行なわれていないと東電に問い合わせたところ、「カスタマーセンターにお問合せください」というファックスが送られてきたことに激怒し、東電の担当者を呼びつけて「俺を誰だと思ってる」と怒鳴りつけたそうです。東電とのやりとりに関しては官房長官を中心に動いていたはずです。ただでさえ混乱している現場に、あちこちから問合せがあっては東電にしてもたまらないでしょう。さらに担当者が呼びつけられたとなると、その負担は大きなものになったはずです。

被災者からしても、東京電力からしても、その他の国民にしても仙谷氏が何者であるかなど、実に些細でどうでもいい話しです。しかし失点が続いて官房長官を辞した仙谷氏からすると、なんとか自分の立場を周囲に強調して再び政府の中心に行きたいのでしょう。また報道によってニュアンスが違うのですが、このとき仙谷氏が政府のメンツを潰されたといった言いかたをしたという報道もあります。この際、政府のメンツなどなんの役にも立たないし重要でもないのですが、これが一番大事だと思っている人もいるようです。

菅総理大臣は報告が遅く対応が後手後手に回っているとして、東京電力本社に乗り込んで東電首脳を一喝したという話が出ています。「(原発対応は)あなたたちしかいないでしょう。(原発からの)撤退などあり得ない。覚悟を決めてください。撤退したときは東電は100%潰れる」とまくし立てる声は、会議室の外まで響き渡っていたそうです。内閣顧問の笹森氏は菅総理が強い危機感を表していることを記者団に説明し、その中から「僕は原子力に詳しい」「東日本がつぶれるというようなことも想定しなければならない」といった、メディアを騒がしている言葉が出てきました。

これらの言葉の裏には「政府は全力で取り組んでいます。悪いのは全て東京電力です」というメッセージが含まれているように思います。政治主導を掲げて官僚を使うのではなく敵対するという手法をとった民主党は、民間企業とも敵対しようとしているのでしょうか。自分は強い危機感を持って職務にあたっているということを言いたいがために、「東日本がつぶれる」という過激な言葉を使ってしまったために、批判を浴びることになりました。

これらの人達に共通して感じるのはメンツを守りたいという意識です。ところで枝野官房長官の評価がグングン上がっていますが、私は枝野氏がメンツを捨ててから説明が明快になったように思います。月曜日に某シンクタンクの担当者から私のところに仕事の電話があって話をしたのですが、この人は前職で発電所のシステム開発をやっていたことを思い出して、原発問題について質問しました。その時の彼の答えは「素人が専門用語を駆使して説明し、素人が質問するから話が迷走している」と枝野官房長官の会見に憤慨していました。

しかしいつ頃からか枝野長官は「わからないことはわからない。専門家に説明してもらう」という言い方をするようになりました。政府の窓口なんだから、官房長官なんだから全てを知っていて当然という変な意識を捨てたことによって、説明できる部分を可能な限りわかりやすく説明するというスタンスに移行していきました。変なメンツを捨てたことが、プラスに出ているように感じます。

その一方で、枝野氏の人気ぶりを見た他の政府首脳が「俺も俺も」と自分に注目を集めようとしていて、チグハグさを浮き彫りにしているように思いました。さらに言うと、総理は野党に協力を求めながら具体的な役割が見えません。野党に協力してもらって野党が存分に力を発揮すると野党としての立場が危なくなると思っているのでしょうか。

これは政治家の病気の一種なのでしょうが、こういう病人や化石のような人達は救援活動の邪魔にならないようにじっとしていて欲しいものです。その一方で、東北に強力な基盤を持った動くべき人が沈黙していますね。これもメンツの問題なんでしょうかね。





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COMMENT:
AUTHOR: つるひめ
DATE: 03/20/2011 02:32:43
いま、八つ当たり抗議が飛びかってますね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00000001-dal-ent
大本は政府の対応不足に対するいらだちからだと思います。あとは提供情報の怪しさかな。
災害の絶望感、不安感と生活、行動の不便さの不安感が重なってみんなイライラしてくる。そこにチグハグな情報を受け取ると更にイラッとしてしまう。
自分もそうです。
大停電騒ぎでトボトボ定時退社の帰途、遊園地から帰ってきた上気した学生達を見て、何考えてんだとイラ、
セリーグ強硬開催のニュースを見てイラ、
ここぞとばかりに仕切り始めて注目を集めたがる人を見てイラ、
自分のイラつきが自覚できてて、その対象や理由も分かってるけど、だからといって落語CDでも聴いてやり過ごすか、って心境にもなれない。酒ばかり増えてる。
まあ、
この先1、2週間の自身の行動計画、今年の冬辺りまでの行動計画、
を立てた後は、強制的に「笑う」ようにすべきなんでしょう。
安定感の無い人間は、周りの者にまで悪い影響を与えてしまいますから。

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COMMENT:
AUTHOR: boi
DATE: 03/20/2011 07:59:46
自民党に原発問題担当相ってのを打診したみたいですね。こんな人柱、無責任人事は見たことも聞いたこともありません。当然谷垣総裁は断ったみたいですけど、民主党とマスコミの伝え方次第では自民党は非協力的となってもおかしくない、非常にずる賢い人事です。
おいしい所、目立つところだけ民主党の議員で固め、重要な案件で、後々責任転嫁を出来るような所を野党に任せようって、気がふれた様な動きですわ。

これからの東北、関東圏の復興をこんな政党に任せると考えただけで頭がポポポポ~~~ンってなりそうです…。かといって今解散総選挙も出来るような状態じゃないですしね。

こんな民主党が政権持ってて国の運営が一応出来ているのは、余程官僚達が優秀なんだろうと想像出来ます。

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COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 03/22/2011 19:22:27
★つるひめさん
本当に酷い八つ当たりが多いですね。こういう時こそ笑顔が大事だと思うのですが、無理に深刻な顔をして「不謹慎だ」と言う風潮もよくないと思います。

日常に戻れる人は日常の生活を淡々と繰り返す事が重要で、変に自粛ムードが高まると長期的に経済への影響がボディブローのように効いてくると思います。被災者の悲しみは共有できないですけど、笑顔は共有できますからね。そういうところから考えた方がいいと思います。


★boiさん
これはさすがに酷いと思いました。そしてこのニュースの後にも民主党の自分勝手ぶりを示すニュースが次々に出てきていますね。菅総理の視察のために福島原発の蒸気抜きを遅らせたとか、海江田大臣が東京消防庁を恫喝したとか、これでもかという感じです。

まだ保身やパフォーマンスにこだわるという神経が理解できませんし、これらのニュースが本当ならもはや犯罪に近いと思います。現場で能力を発揮したくても、上が足を引っ張る状況では力を持て余すばかりですね。
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コメント

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