中国国民は案外落ち着いているようだ

※こちらは以前の「はねもねの独り言」に書いていた記事です。

尖閣諸島の問題に関して、中国メディアの刺激的な論調が日本でも報道されていましたが、国民の間ではSMAPのコンサートが延期になったことから、領土問題なんかよりもSMAPが見たいという声も出ているという報道も同時に出ていました。実際に中国にいる人でないと現地の様子はわからないのですが、面白い話がありましたのでそれを交えて書いてみたいと思います。




日本でも報道された日本大使館前での反日デモですが、100人もの人が押しかけて釣魚島(尖閣諸島の中国での呼び名)は中国領土だといった声や、9月18日は満州事変のきっかけになった柳条湖事件が起こった日ということで、満州事変を忘れるなといった声が上がり緊張に包まれたというニュースが出ていました。しかし9月18日は毎年のようにデモが起こっていて、今年は尖閣諸島問題もあったというのに集まったのは100人(報道によっては200人)なのです。言われてみて思ったのですが、これって2005年の反日デモと比較してもかなり少ない数字です。

中国国内からツイッターへのアクセスはブロックされているそうで、そのままではツイッターにアクセスできません。しかし中国の人々もあれこれ策を練ってツイッターを利用していて、そこでは政府の監視の目がないだけに自由な意見が飛び交っているようです。その中で「釣魚島は中国の領土だ」という書き込みがあったそうです。それに対する反応は以下のようなものだったそうです。


「釣魚島が中国領土だと宣言する前に、自分の家の土地が自分のものだと宣言してみろよ」

「国内が矛盾だらけなのに、国外の矛盾を膨らませて大騒ぎしてごまかそうとするんじゃない」

「中国人の自由と人権さえ守ってくれるんであれば、俺はそれがどこの帝国主義に属している土地だろうがかまわないよ」

「安全で子供が健康に成長できる食べ物が安心して手に入るんだったら、日本領になった釣魚島に引っ越したいぐらいだ」


ちょっと意外な気がしませんか?最初の自分の家の土地を宣言してみろというのは、中国では全ての土地が共産党の所有になっていることからきています。2番目以降の発言も辛辣ですけど今の中国の問題の切実さがにじみ出ているように思います。領土問題よりも国内問題をどうにかするべきというのは、案外多くの人が感じていることなのかもしれません。

2005年の反日デモの後、「日本は中国から出て行け」と大使館に投石した人が、家に帰って日本製のテレビを見てくつろいでいるという矛盾を一般の人のブログで指摘されて話題になったという話もありましたが、今回は日本に対する見方も随分変わっているようなので、それも影響しているように思います。今年開催されたサッカーのワールドカップでは、中国の人達の多くが日本を応援していたといいます。

中国代表がカンフーサッカーの代名詞で恥ずかしい反則を繰り返して国内外か批判を浴びたのは記憶に新しいですが、北京五輪の後に中国の有識者がサッカーの日本代表を高く評価して、我々は日本に学ぶべきだと書いたのだそうです。五輪では日本の試合の対戦相手が中国でもないのに中国の観客は日本の試合に押し寄せて、日本代表に激しいブーイングをぶつけていました。しかし日本代表は試合が終わると観客席に一礼してから帰っていったのだそうです。この行為に感激した識者の1人が、中国が国際化するにはこういった姿勢を学ぶ必要があるのではないかと書いて話題になったそうです。

四川大地震に派遣されたハイパーレスキューの行動も、日本のイメージに一役買いました。生き埋めになった死者を掘り起こすと、遺体に向かって隊員全員が両手を合わせてお祈りする姿は中国でもテレビ放送され、日本人の死者に対する敬意は中国にとって新鮮な感動だったようです。医療チームの活動と合わせて日本大使館には多くの感謝の言葉が集まったといいます。これは洞爺湖サミットで、中国の国家主席がわざわざ救助チームの代表と会って、感謝の言葉を述べたことにも現れています。

これらのできごとは、帝国主義国家日本という野蛮なイメージを変えつつあり、さらに日本の家電製品や娯楽の流入などでさらに加速しつつあるようです。もちろん過激な分子は中国にもいますが、従来のイメージが変わってきているのは間違いないようです。そもそも中国は日本に擦り寄ってきた時期もあり、小泉元総理が蹴飛ばさなければ関係は改善されていたという声もありました。しかしアメリカと仲良くしたい自民党は意図的に中国を蹴飛ばし、民主党は中国と仲良くしたいためにアメリカを蹴飛ばしています。誰かに好かれるために誰かを悪者にするというのは、なんとも幼稚な気がするのですが・・・

今回の件で、例の反日反日と騒ぐ映像をイメージしていたのですが、案外落ち着いて推移を見ている中国人も多いようです。中国に反発するとか懐柔されるとかいう以外の方法があるような気がするんですけどね。政府レベルでは難しいように思います。






にほんブログ村 ニュースブログへ
にほんブログ村


COMMENT:
AUTHOR: nahkid
DATE: 09/30/2010 23:58:51
お久しぶりです。そのツイッターの書き込み、十分ありえることだと思います。現地よりの情報ですか?

-----
COMMENT:
AUTHOR: 女王様
DATE: 10/04/2010 05:19:29
おはようございます。

中国でも。青年層は、海外留学したり国語にも堪能な人材が増えてきているので、英語圏などのニュースやHP・ブログなどに接触しているのがフツーとか。国際情勢に触れていれば、政府を妄信する事も減るのでしょう。
日本政府は。海外留学生をバンバン厚遇し、しいては次代の「日本びいき」を相手国の「閣僚・官僚」クラスに増やすべきだと思います。
目先の利益だけではなく「国家百年の計」で。
ことに。第2次世界に「不幸な関係」になってしまった中国・韓国を始めとするアジア地域と。
「友人」を作るのは「武力」ではなく「文化交流」だと思います。

-----
COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 10/04/2010 11:53:48
★nahkidさん
レスが遅くなって申し訳ありません。

このネタは、ふるまいよしこさんという中国在住のジャーナリストの方が書いていました。中国のメディアを中心に、さまざまな情報を発信している方です。

これだけ情報が溢れるようになると、画一的な意見だけでなく幅広くなるんでしょうね。



★女王様さん
中国ではネットのさまざまなサイトがアクセスできないようにされていますが、あれこれ知恵を絞ってアクセスしている人が大量にいるようです。新聞やテレビは政府の統制下にあるので政府の意見が反映された報道ばかり(香港のフェニックステレビなど例外もあるようです)のようですが、ネットや携帯のショートメールを使った通信では自由な発言が多く飛び交っているようです。規制されてもその壁を乗り越えるというのは、万国共通のようですね。

おっしゃるように、友人を作るのは文化による側面が大きいと思います。実際に中国ではメイド・イン・ジャパンは高級品の証となっているようですし、その他のエンターテーメントなどに関しても日本のものが受け入れられているようです。こういう部分はどんどん伸ばしていきたいですね。


-----
COMMENT:
AUTHOR: nahkid
DATE: 10/07/2010 00:18:30
はねもねさん
情報源についてありがとうございました。
中国人には知り合いもいますので、多様な感覚があることがわかります。そうした皮膚感覚に基づかない、観念的な論調が政府筋からも出てくるのは、いやな感じです。


-----
COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 10/09/2010 16:38:17
★nahkidさん
中国は日本を、日本は中国をステレオタイプに見ている面があるようですね。もちろんこれはどの国にもいえることですが、どうも日中間や日韓間ではその傾向が強いように思います。

最近は観念的というか感情論みたいなものまで政府から出ていますよね。擁護派、批判派を問わずにこういうのは気持ち悪く思ってしまいます。
-----
--------

コメント

このブログの人気の投稿

アイルトン・セナはなぜ死んだのか

バンドの人間関係か戦略か /バンドメイドの不仲説

消えた歌姫 /小比類巻かほるの人気はなぜ急落したのか

懐中電灯は逆手に持つ方が良いという話

TBSが招いた暗黒時代の横浜ベイスターズ /チーム崩壊と赤坂の悪魔