モザイクは顔を隠さない /テレビで起こった身近な騒動
90年代の後半、私がまだ独身で狭いアパートで暮らしていた頃の話です。テレビのモザイクは全く役に立たないことがわかる出来事がありました。仕事で疲れて家に帰り、なんとなくテレビをつけたら知っている顔が映っていたのです。それは某テレビ局の人気バラエティ番組でした。
その中で、歩きタバコをしているギャルが登場しました。金髪に染めた髪、短すぎるミニスカート、高すぎるヒールでけだるそうにタバコを吸いながら歩いています。それまでほとんどテレビを見ていませんでしたが、私はこの場面でテレビにくぎ付けになりました。ギャルは水を掛けられて、激しく罵っています。お笑いタレントさんは必死に謝っていますが、ギャルは汚い言葉で文句を言い続けています。モザイクの顔がアップになりますが、顔は全くわかりません。
しかし私は確信しました。これは近所に住む20代前半の女性Sです。髪型も服もいつもと全く違いますが、どう見てもSにしか見えません。私は電話をとると、彼女のポケベルを鳴らしました。当時は携帯を持っている人の方が少数で、ほとんどの人がポケベルだったのです。しかしいつもならすぐに掛かってくるのに、いつまで経っても連絡はありませんでした。そして翌日に「ごめんねー」といつもの調子で電話がかかってきました。
とりあえず日焼けして、マネージャーに勧められるがままにメイクをすると、思った以上にギャルになったので、複数のファッション雑誌で活動していました。特にギャル御用達の雑誌「egg」では、何度も表紙に出ています。しかしギャルモデルも競争が激しくなり、いつまでもこんなことはしていられないと悩み、某芸能事務所に就職して事務をやっていました。タレントに給料明細を渡したり、スケジュールを書いた紙を打ち出したりの仕事です。
芸能事務所の仕事だけでは給料が安いので、家の近くのバーで週末にバイトをしていました。私が知り合ったのもそこで、なんとなく仲良くなり連絡を取り合う仲になっていました。たまに悩みを聞いたり、ゲームセンターにつきあってくれと言われて友人らと出かけたこともあります。いわゆる飲み仲間の一人でした。
「私、もう演技とかずいぶんやってませんから」「え?演技経験あるの?お願いできない?」みたいな会話になり、事務所の人からも「助けてあげなさい」と言われて渋々引き受けたそうです。しかし衣装は間に合わせで体にあっておらず、歩くだけで短すぎるスカートがずり上がってしまうなど、かなり大変だったそうですが、スタッフのみんなから「本当に助かりました」とお礼を言われ、お笑いタレントさんからも何度も頭を下げられて感謝されたそうです。だから今日は良いことをしたんだと満足して帰ったといいます。まさかそれで母親に説教されるとは、予想外だったと言っていました。
その番組は・・・
後に心肺停止で倒れるお笑いタレントと、放送禁止の四文字熟語を言ってテレビから干されたことのあるバラドルの女性タレントがMCをつとめる番組です。92年から98年にかけて日曜日の夜10時半から放送されていました。番組の目玉はアポなしのロケで、有名人に何のアポもとらずに突然伺って無理なお願いをするのが人気のコーナーでした。歩きタバコをしている人のタバコを消す企画
心肺停止のお笑いタレントさんが水鉄砲を持って街に出かけ、歩きタバコをしている人のタバコに水をかけるということをやっていました。水を掛けられて怒る人が続出していて、必死にお笑いタレントさんが謝りながら番組の企画を説明する流れです。この番組では、このような企画が多くありました。水を掛けられる人の顔にはモザイクがかかり、声も変えられています。その中で、歩きタバコをしているギャルが登場しました。金髪に染めた髪、短すぎるミニスカート、高すぎるヒールでけだるそうにタバコを吸いながら歩いています。それまでほとんどテレビを見ていませんでしたが、私はこの場面でテレビにくぎ付けになりました。ギャルは水を掛けられて、激しく罵っています。お笑いタレントさんは必死に謝っていますが、ギャルは汚い言葉で文句を言い続けています。モザイクの顔がアップになりますが、顔は全くわかりません。
しかし私は確信しました。これは近所に住む20代前半の女性Sです。髪型も服もいつもと全く違いますが、どう見てもSにしか見えません。私は電話をとると、彼女のポケベルを鳴らしました。当時は携帯を持っている人の方が少数で、ほとんどの人がポケベルだったのです。しかしいつもならすぐに掛かってくるのに、いつまで経っても連絡はありませんでした。そして翌日に「ごめんねー」といつもの調子で電話がかかってきました。
Sという女性
始めて会った時から、とてもきれいな顔をしていると思ったのですが、子役タレントを経験していました。十代の半ばまでタレント活動を続け、人気ドラマにも端役で多数出演しています。しかしタレントとして目が出ないので諦めかけている時に、雑誌のモデルの仕事をちょくちょくこなすようになりました。しかし彼女の身長は160cmに満たないので、本格的なモデルにはなれません。モデルとしても悩んでいた時に、事務所からギャルのモデルをやるように持ち掛けられました。![]() |
※eggはこんな雑誌です。 |
とりあえず日焼けして、マネージャーに勧められるがままにメイクをすると、思った以上にギャルになったので、複数のファッション雑誌で活動していました。特にギャル御用達の雑誌「egg」では、何度も表紙に出ています。しかしギャルモデルも競争が激しくなり、いつまでもこんなことはしていられないと悩み、某芸能事務所に就職して事務をやっていました。タレントに給料明細を渡したり、スケジュールを書いた紙を打ち出したりの仕事です。
芸能事務所の仕事だけでは給料が安いので、家の近くのバーで週末にバイトをしていました。私が知り合ったのもそこで、なんとなく仲良くなり連絡を取り合う仲になっていました。たまに悩みを聞いたり、ゲームセンターにつきあってくれと言われて友人らと出かけたこともあります。いわゆる飲み仲間の一人でした。
Sだと誰もがわかっていた
私はテレビを見ながら、モザイクと変声の処理をされて、さらにいつもと全く違う服装なのにも関わらず、すぐにSだと気が付きました。Sの友人たちも気が付き、家の電話は鳴りっぱなしで、大勢から「テレビ見たよ」と連絡を受けたそうです。そして母親からも電話があり「なんて格好で歩いてるの!」「歩きタバコなんて止めなさい」「今から謝ってきなさい」と、猛烈なお叱りを受けていたそうです。私がポケベルを鳴らしたのは知っていましたが、電話をする余裕がなかったと謝られました。後日、Sに会ってことの顛末を聞くことができました。撮影までの流れ
芸能事務所で仕事をしていると番組制作会社の人がやってきて、近くでロケをしているけど手配した役者さんが来ないと言ってきたそうです。こちらのタレントさんで、誰かすぐに動ける人はいませんか?という相談だったのですが、あいにく暇なタレントはいても事務所にはいませんでした。ギャル系の女性を演じられるタレントを探してい途方に暮れている制作会社の人を見て、事務所の人が「そこにギャルのモデルならいますよ」と、Sを名指ししました。「私、もう演技とかずいぶんやってませんから」「え?演技経験あるの?お願いできない?」みたいな会話になり、事務所の人からも「助けてあげなさい」と言われて渋々引き受けたそうです。しかし衣装は間に合わせで体にあっておらず、歩くだけで短すぎるスカートがずり上がってしまうなど、かなり大変だったそうですが、スタッフのみんなから「本当に助かりました」とお礼を言われ、お笑いタレントさんからも何度も頭を下げられて感謝されたそうです。だから今日は良いことをしたんだと満足して帰ったといいます。まさかそれで母親に説教されるとは、予想外だったと言っていました。
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