スポーツのおバカなインタビュー集

スポーツ選手のインタビューは毎日のように放送されています。その中で、特にひどいと思ったものを並べてみたいと思います。




「来日した時の印象を聞かせてください」

1990年に行われたアメリカン・フットボール最高峰を決めるスーパーボウルの開幕の直前に、サンフランシスコ49ers(フォーティナイナーズ)のスーパースター、ジョー・モンタナが共同インタビューに応じました。各社1つずつ質問が可能で、日本での放送を担当した日本テレビも現地に派遣した女子アナがモンタナに質問しました。

「昨年、アメリカンボウルで来日した時の印象を聞かせてください」

日本語の質問が通訳されると、会場には緊張が走ったそうです。日本ではスーパーボウルはアメフトのイベントとして知られていますが、その経済効果はオリンピックに匹敵します。選手にとっては人生最大のイベントで、勝つか負けるかで人生が劇的に変わります。スーパーボウルで勝利に貢献するプレイをすれば子供の代まで褒めたたえられ、敗北につながるミスをすれば死ぬまで「お前はダメな人間だ」と言われてしまう戦いです。



そんなスーパーボウルの直前に、最も重圧を感じているスーパースターに全く関係ない質問をしたので周囲が緊張したのです。モンタナが椅子を蹴飛ばして、会見を打ち切っても仕方なかったと言う人もいます。しかしモンタナは紳士でした。

「日本の桜は美しいと思いました」

無難な答えをモンタナが返すと、司会者はすぐに次の質問者を指名しました。翌年も日本テレビはスーパーボウルを中継しますが、共同記者会見で質問はさせてもらえませんでした。



「老後はどうするんですか?」

2011年、トヨタカップではスペインのFCバルセロナとブラジルのサントスFCが対戦しました。日本テレビが中継し、ゲストには多くの芸能人が迎えられていました。世界最高峰のサッカーの試合は華々しくFCバルセロナが4-0で勝利して幕を閉じました。FCバルセロナのスーパースター、メッシはこの日も大活躍で、日本のファンを喜ばせました。勝利の歓喜に沸くFCバルセロナですが、メッシが放送ブースに来ることになりアナウンサーやゲストの芸能人は大いに盛り上がりました。



しかしやってきたメッシは露骨に不満げで、明石家さんまがコートを着せようとすると拒否しました。通訳が「質問は1つだけです」と言う中、サッカーのことは沢山聞かれているだろうからと、明石家さんまがした質問は「引退して老後はどうするんですか?」でした。メッシはさらに不快そうな表情を浮かべ「まだ引退まで時間があるので、後で考えます」と言い、すぐに駆け足でピッチに戻っていきました。メッシは明らかに怒っていて、世界制覇直後の質問にしては間が抜けていると批判されました。アルゼンチンでは「この男(明石家さんま)は、サッカーのことを何も知らない」と怒りの声が起こりました。

どうもチームメイトと喜びを分かち合っている最中に、日本テレビのスタッフに強引に連れ出されたことが不快だったようで、さらに質問の内容が酷いため、こんな質問をするために呼んだのかと怒ってしまったようです。



「本当にバカなんですか?」

アメリカンフットボールのスーパースターで、ピッツバーグ・スティーラーズでクォーターバックを務めるテリー・ブラッドショーは、NFLに入団したての頃は多くのパスをインターセプト(パスしたボールを敵チームにカットされる)されていました。そのためメディアやスティーラーズのファンから「知性が欠落している」「馬鹿クォーターバック」と批判されていました。いや批判と言うよりバカにされていたようです。



そんなブラッドショーに地元の女性新聞記者がインタビューを行い、「あなたは馬鹿クォーターバックと呼ばれていますが、本当にバカなんですか?」と質問しました。この記者は馬鹿にしているというより、純粋に疑問を口にしたような言い方だったようで、ブラッドショーは絶句してしまいます。そして椅子を蹴り上げてインタビュー中に去っていきました。このインタビューはNFL史上に残る馬鹿インタビューとして取り上げられることがあります。


「そろそろ勝ち星が欲しいんしゃないですか?」

1998年、イタリアに渡った中田英寿はペルージャに移籍してセリエAデビューを果たします。デビュー戦では強豪ユベントス相手に2得点を挙げる大活躍で、イタリアでは中田の評判が急上昇していました。しかしチームはなかなか勝てず、弱小チームのペルージャは下位に低迷していました。そんな中、中田英寿は日本のテレビのインタビューを受けます。

「イタリアに移籍して4戦目ですが、そろそろ勝ち星が欲しいんじゃないですか?」

中田は無表情のまま何も言わず去っていきました。あまりに冷たい反応に、日本のファンからは批判が起こりました。この時のことを中田は親しい友人から何かコメントしろと言われて弁明していました。1戦目からどの試合も勝つつもりでプレイしている。あの質問にイエスと答えたら、今までの試合は勝つためにプレイしていなかったことになるし、ノーと答えたら次の試合は勝つつもりがないと思われる。イエスともノーとも言えない質問をされるので答えられなかったというわけです。



この質問に深い意味があったわけではないのですが、真面目な中田は真面目に考えてしまったのです。その後、2001年のコンフェデレーションズカップでは、オーストラリア戦でフリーキックを決めた際は「あのシュートは狙ってましたか?」と質問され、狙って蹴らない人はいないと悩むのではなく、チームが一丸となった勝利だと質問を無視して答えていました。スムーズなインタビューのために、質問を無視しないといけない日本流の不思議なインタビューを象徴する場面でした。


まとめ

インタビューは聞き手の質問力によって、内容がまるで変わってきます。間の抜けた質問が多いのは、聞き手の実力が未熟な場合が多いと思います。日本のインタビューで、試合が終わったスポーツ選手に「どうでした?」といきなり質問する人が多いのですが、これでは自分の出来を質問されているのか、チーム全体のことなのか、得点したシーンのことなのかさっぱりわかりません。しかしこれは「なんでもいいから喋ってくれ」という意味のようで、「何ができる?」と聞き返してはいけないそうです。つくづく聞き手の質に問題があるように思います。

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