ホルムズ海峡近くのオマーン沖で日本のタンカーが攻撃されました。これは大ニュースで、このまま悪い方に流れていくと日本経済の崩壊につながることもありえます。イランは日本を干上がらせる力を持っていますが、それが語られることは多くありません。今回は、アメリカとイランが対立している理由と、日本への影響を書いてみます。
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| ※ホルムズ海峡 |
かつてアメリカとイランは友好関係だった
1970年代まで、アメリカとイランの関係は良好でした。イランはパーレビ国王が国を治め、アメリカはイランから大量の原油を買っていました。しかしアメリカでジミー・カーターが大統領に就任すると、事態は暗転します。
カーターは人権外交を掲げて大統領選挙を戦い、大統領に就任すると関係各国に人権を重視するように求めました。パーレビからすると、国民と自分の命の価値が同等で、彼らの人権を守れというのは不愉快で非常識な話でした。しかしカーターは、パーレビに国民の人権を守るように要求します。パーレビは、カーターを信用できない人物だと思うようになりました。
イラン革命
しかしイランの圧政は深刻な問題で、国民の不満は爆発寸前にまで高まり、打倒パーレビの声が高まります。パーレビは強硬な姿勢を示すカーターに助けを求められませんでした。アメリカに危機を救ってもらうと、カーターの言う人権重視の体制に変えなくてはならなくなるからです。一方、カーターはウォーターゲート事件に関与したCIAを嫌っていて、彼らが「イランの民衆の怒りは爆発寸前で、クーデターの可能性がある」という報告を全く信用していませんでした。パーレビに電話すると「大丈夫」と言うので、安心しきっていました。
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| ※イラン革命 |
そして民衆運動の指導者で、パリに亡命していたアーヤトッラー・ホメイニ師がイラン国民の絶大な支持を得て、イランに帰国するという噂が流れました。パリにいる間にホメイニ師を暗殺するべきという強硬意見も政府にはあったようですが、人権派のカーターは何もせず、ホメイニ師が帰国しても影響はないとのんびりしていました。そして難なくイラン入りしたホメイニ師は、民衆を率いてクーデターを成功させ、パーレビと手を組んでいたアメリカをイランの敵と認定しました。
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| ※ホメイニ師 |
ホメイニ師がイランにいるアメリカ人を逮捕し、アメリカ大使館を占拠すると、ようやくカーターは事態の大きさに気がつきました。アメリカは原油を格安で大量に売ってくれる国を失っただけでなく、大勢のアメリカ人が処刑される可能性が出てきたのです。
イーグルクロー作戦
カーターはすぐに関係閣僚を集め、事態の収拾にかかります。そして軍による人質救出作戦が承認されました。「イーグルクロー作戦」と命じられたこの作戦は、陸・空・海兵隊の部隊が集結する前代未聞の大規模作戦でした。まるでイランと開戦するような大部隊の移動に危機感を募らせる声は軍部にもあったようですが、それらは無視されました。そしてこの作戦は、ヘリ部隊の事故により作戦が露呈し、イランから激しく批判を浴びて失敗に終わりました。
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| ※墜落したアメリカ軍ヘリ |
その直後、アメリカの富豪、ロス・ペローはイランで人質になった自社の社員を救出するため、傭兵部隊を編成してイランに侵入し、見事に社員たちを救出しました。一個人が傭兵を使ってできることを、正規軍が大規模部隊を展開してできなかったという事実は、アメリカの軍事力の停滞を知らしめました。アメリカの威信を傷つけ、人質の命を危険にしたカーターに批判が集中し、カーターは2期目の大統領選で敗北しました。
核開発疑惑
ホメイニ師は核開発を中断しましたが、80年代にはイランがウランを入手していました。90年代にはプルトニウムの抽出に成功しています。イランは一貫して原子力発電所のための作業と主張していますが、アメリカは警戒感を強めました。2002年には高濃縮ウランの製造が疑われ、IAEA(国際原子力機関)から全会一致で非難決議が出されるに至りました。
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| ※IAEA総会 |
2010年にイランは20%高濃縮ウランの製造を目指すことがわかり、アメリカのオバマ大統領は20%の濃縮をやるなら制裁も辞さないこと、そして制裁はあらゆる選択肢を排除しないと軍事攻撃を匂わせる発言をしました。イスラエルの軍事攻撃の可能性が何度も報じられ、その軍事攻撃のためにサウジアラビアがイスラエル機がサウジの領空を通過することを承認したという報道もあり、戦争は秒読み段階に入ったと思われました。その間にイランは遠心分離機の開発や、核燃料棒の自国生産に成功しています。
しかし2015年にイランはP5+1(米英仏独中露)と核施設の大幅な縮小で合意(イラン核合意と呼ばれる)し、イランの核開発疑惑は一旦は終結しました。しかしアメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任すると、イラン核合意から離脱すると表明し、再びイランとアメリカの間に緊張が高まっていました。トランプ大統領は制裁を強化し、イランは激しく反発しています。そこで日本が仲介役となるため、2019年に安倍総理がトランプ大統領のメッセージを持って、イランを訪問しました。
この会談でイランの最高指導者が「イランは核兵器を製造も保有も使用もしない」と明言したことは大きな成果ですが、アメリカとの対話はことごとく拒否されました。そのため安倍総理の訪問は成功したのか失敗だったのか評価が分かれています。
ホルムズ海峡
世界の原油の35%がホルムズ海峡を通過し、日本が輸入している原油の80%がホルムズ海峡を通過しています。そのため日本にとってホルムズ海峡は生命線であり、何がなんでも安全な航行が求められる海峡です。海峡幅はわずか50kmから95kmしかなく、安価な機雷を設置するだけで封鎖できるため、常に海上封鎖の危険が言われていました。そのため地上にパイプラインも建設されています。
日本はホルムズ海峡の航行を守るため、積極的にイランと取引をしていました。しかしイランの核開発疑惑から経済制裁に参加することになり、イランとの取引は激減しています。今回の安倍総理の訪問は、単にアメリカに依頼されたから行ったのではなく、日本の経済の生命線を破壊するような戦争を防ぐ重要な意味がありました。
しかし安倍総理がイラン最高指導者と会談した直後に、日本のタンカーが攻撃されたため緊張が走ったのです。日本の船籍を意図的に狙ったものではないという意見もあれば、日本がアメリカ側についているために報復を受けたと言う人もいます。どちらにせよホルムズ海峡の動乱は日本経済に深刻な影響を与えるので、大きな騒ぎになっているのです。
イランはイスラム教国家だが
イランはイスラム教国家ですが、他の国とは異なりイスラム教シーア派が国民の大多数を占めています。イスラム教徒にはシーア派とスンニ派がありますが、イスラム教徒の8割から9割はスンニ派で、シーア派は異端の宗派と言えます。イスラム教に詳しい人によれば、スンニ派とシーア派の教義は全く異なり、人によっては仏教とキリスト教ぐらい違うとも言います。
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| ※真ん中の子の宗派は・・・? |
ホルムズ海峡を抱えるイランはイスラム教国家の中でも特殊な国で、そのため周辺の中東国家とも仲が悪く対立しています。ホルムズ海峡を挟んでイランの反対側にあるサウジアラビアをはじめ多くの中東国家がイランと仲が悪く、そして中東にはイスラエルという全中東国家と対立している国があります。スンニ派同士の国でも争いが絶えない中東で、イランはあまりに多くの不安定さを持った国なのです。
まとめ
かつてイランは親米国家でしたが、カーター大統領の時代に強烈な反米国家に生まれ変わりました。イランは核開発を進めているという疑惑があり、アメリカを中心に経済制裁をしていました。それを緩和する合意があったのですが、トランプ大統領が合意を破棄して制裁を再開したため緊張状態が続いています。日本は仲裁のために乗り出しましたが、日本のタンカーが攻撃されることになり、緊張が一気に高まりました。日本の経済を左右する事件だけに、なんとか事態が落ち着いて欲しいと思います。
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