監督の話題が多いロシアW杯 /代表監督の不遇

 今回のロシアW杯では、選手以上に目立って話題になる監督が多いように思います。決して良い話題ではないことが多いので、それほど監督人事が難しくなったのかもしれません。世間を騒がせることになった監督の話を始めるには、なんと言ってヨーロッパ予選のイタリアから始めなくてはいけません。

イタリア代表監督:ジャンピエロ・ベントゥーラ

2016年6月にベントゥーラがイタリア代表監督に就任した際、国際経験のない老将に不安を覚える人は多くいました。欧州予選第6節まではなんとか首位を守ります。しかし第7節でスペインに完敗すると2位に陥落し、プレイオフではスウェーデンに2連敗して40年ぶりにW杯予選落ちになりました。

※ベントゥーラ監督

プレイオフ前からベントゥーラの時代遅れの戦術や、頑固に自分のシステムにこだわる姿勢に批判が集中していました。スウェーデンとの初戦では一部の選手がシステムの変更を強く求め、激昂したベントゥーラが「選手で勝手にやってくれ!」と指揮を拒否する騒動を起こしていました。



W杯出場を逃したベントゥーラは国民に謝罪しつつも「辞任するつもりはない」と言い切り、その厚顔ぶりに激しいバッシングが起こりました。イタリアサッカー連盟は世間に押される形でベントゥーラを解任しますが、ベントゥーラを指名したタヴェッキオ会長は「私は辞めんぞ」と言い残して雲隠れします。責任を擦りつけ合う連盟の姿勢に、サポーターや代表OBの怒りが注がれ、会見の場に引きずり出されたタヴェッキオ会長は恨み節を残して辞任しました。

※ロベルト・マンチーニ

こんな連盟の状態を見てか、代表監督をオファーされた人達は次々に拒否し、半年以上の混乱の末にマンチーニが監督に就任しました。

スペイン代表監督:ジュレン・ロペテギ

今年の6月13日に、スペインサッカー連盟は代表監督のロペテギを解任すると発表しました。W杯開幕2日前の電撃解任で、国内外に大きな衝撃が走りました。ロペテギ監督は1ヶ月前に代表監督の契約を延長し、2020年まで監督を続ける予定でした。

※ロペテギ監督

しかしスペインのビッグクラブであるレアル・マドリーが、ロペテギと監督契約を結んだことを発表し、何も聞かされていなかったスペインサッカー連盟は激怒して、ロペテギの解任を決めました。レアルとの契約は法的になんら問題がなく、解任は嫌がらせだとレアル・マドリーは強く批判しました。

アルゼンチン代表監督:ホルヘ・サンパオリ

メッシ以下、世界的スターを抱えたアルゼンチンは、南米予選でW杯出場の4位以内どころか5お位に低迷し、予選敗退の危機にさらされました。アルゼンチンサッカー協会は代表監督のエドガルド・バウサを更迭し、ホルヘ・サンパリオを招聘しました。サンパオリ就任後もチームは下降線をたどりますが、最後の最後でなんとか予選を通過しています。

※サンパオリ監督

W杯前には招集した選手のリストに不満が集まり、スペインとのテストマッチに1–6で負けると不安が募り、サンパオリの「私は何も計画しない。一番の好機に、自然に湧き出てくるのだ」という発言に、怒りの声が集中しました。そしてW杯一次リーグでアイスランドに引き分け、クロアチアに大敗してリーグ敗退の危機に見舞われます。

※マラドーナはサンパオリ監督批判を繰り返しています。

サンパオリは「選手がシステムを理解していない」と発言したため、一部の選手が抗議の姿勢を示し解任がとりだたされました。クロアチア戦で採用した3バックは実戦では初めてで、「サンパオリの思いつきにチームが振り回されている」「メッシに依存しすぎている」「約束事がほとんどなく、メッシにボールを渡すことしか決められていない」といった批判がされています。

日本代表監督:西野朗

W杯2ヶ月前にハリルホジッチ監督の電撃解任は、国外でも驚きをもって報じられました。元代表監督のザッケローニは「日本サッカー協会は、感情的に怒りに任せて決断をする組織ではない。何かが起こっているのだ」と擁護するかのような発言をしていましたが、多くの国のメディアも最近の日本代表の成績不振ぶりから、解任も仕方なしといった論調でした。

※西野朗監督

2ヶ月でチームを立て直すことは不可能だと誰もが思っていましたが、W杯が始まるとコロンビアを撃破し、セネガルに引き分けたことで日本のミラクルは海外でも大きく報じられています。アメリカのサッカー専門ニュースはアトランタ五輪の「マイアミの奇跡」を詳細に伝え、ニシノは日本に攻撃の哲学を育てた名将と紹介していました。

関連記事:サッカーの西野朗監督は今もハンティングワールドのボストンバッグを使っているのだろうか

まとめ

かつて代表チームの監督は名誉ある地位でしたが、選手を育てるのではなく選ぶだけになり、ビッグクラブに比べて給与が安い割に責任ばかりが大きくなりました。そのため強国の代表チームは、相応しい監督の招聘が難しくなっています。

イタリアでベントゥーラが招聘されたのは、安い給与で契約できるからと言われていました。アルゼンチンのサンパオリは3人目の監督で、就任当初は「断れなかったから引き受けた」と、消極的なことを言っていました。

今後、強国の代表監督選びはますます難しくなるでしょう。そして日本はどうなるのでしょう?混迷するサッカー界の中で、日本サッカー協会が上手く立ち回れるのか不安も残ります。



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