自殺したアイドル /なぜ大本萌景さんは死を選んだのか

ももクロが好きでアイドルに憧れ、全国区のアイドルになるのが夢だった高校生の少女が今年の3月に自殺しました。なぜ彼女は夢を捨てて自殺することを選んだのでしょうか?16歳の大本萌景(おおもと ほのか)さんという、愛媛県で活動していたローカルアイドルの話です。


いじめとアイドルデビュー

中学時代にいじめに遭い、転校したいと母親に相談していた萌景さんが、中学2年の時にゲームセンターに貼られていたオーディションに挑みます。いじめていた友人たちを見返したいという気持ちや、多くの人と打ち解けたいという気持ちがあったようですが、なによりももいろクローバーZのファンで、アイドルに憧れていたというのがあったようです。

※愛の葉Girls

オーディションに合格すると、農業系アイドル「愛の葉Girls」(えのはがーるず)の研修生となりました。ライブに加えて地産地消フェアのイベント参加や、農作業もこなすアイドルで、いつかは全国区のアイドルになることを夢見ていたようです。萌景さんの両親は離婚しており、事務所の社長を父親のように慕う関係で、萌景さんのアイドル生活は好調に見えました。しかし定時性の高校に進学してから、歯車が狂い始めます。

学業を後回しにする事務所

契約時には学業の妨げにならないと説明があったそうですが、高校に入ると学業よりアイドル活動を優先することを事務所が強要し始めます。その結果、萌景さんは学業とアイドル活動の狭間で苦しむようになりました。出席できずに高校の単位を落とし、途中から通学すらできなくなっていきます。

※事務所とのLINEのやりとり

母親から事務所に連絡しても、本人からでなければダメだと取り合ってもらえず、実の父親に会えるはずだった元旦も仕事になります。そんな中、事務所は定時制高校から全日制高校への転校を勧めます。

※事務所とのLINEのやりとり

母親は定時制でも通えないのに、全日制ならもっと通えないのではないか?と疑問に思い、悩んだ萌景さんは事務所からギャラを前借して全日制に通うことにしました。高校1年生をやり直すことにしたのです。

裏切られた想い

母親はアイドル活動が負担になりすぎると感じ、契約満了の2019年8月でアイドルを辞めることを勧めます。しかしそれを聞いた事務所は、学費は貸せないと言ってきました。落ち込んだ萌景さんは母親と話し合い、全日制高校を辞退することにします。



すでに学校に挨拶も終えていたため萌景さんの焦燥は激しく、かなり落ち込んでいたようです。全日制高校を辞退すると事務所に相談すると、慌てた事務所は辞退を取り消すように言い出しました。とりあえず社長と話すように言われ、萌景さんが社長に電話します。

「1億円払えって言われた」

と、落ち込んだ萌景さんは周囲に語りました。契約のペナルティ料を理由に1億円を要求されたようです。その後、自宅で萌景さんは首を吊りました。

母に問題があると思ったが

ネットで萌景さんの死が報じられると、自殺なのか?という憶測が飛び交いました。その後、母親が経緯を告白したことで、全体像が見えてきました。この話を最初に知った時、私は母親に憤りを感じました。娘と一緒に事務所に翻弄され、いいように振り回された挙句に娘を死から守れなかった母親が、あまりに無力に思えたからです。

しかし落ち着いて考えるとシングルマザーの母親は子供3人を育てていて、毎日をやり過ごすことに必死だったでしょう。自分が知らない世界の事に関しては自信がなかったでしょうし、ゆっくり考える時間もなかったかもしれません。そして母親は娘を守り切れなかった傷を一生背負うことになると思います。当たり前ですが、母親もまた被害者なのだと思いました。

不幸の連鎖があったのか?

萌景さんはこのグループの中で人気者だったそうで、これが不幸だったと思います。事務所としては辞めてもらうと困るので、あの手この手でイベントに引っ張り出し、辞めさせないようにしたでしょう。

そして母親の証言から見えるのは、家族に迷惑をかけたくないという萌景さんの想いです。好きなアイドル活動を続けつつ、母親に負担を掛けないように気を使っていたように思います。ですから全日制の高校に入りなおすのに、親に負担を掛けないように事務所から借りることを選択します。



そして母親は、萌景さんの気持ちを尊重しすぎたのだと思います。しかし、いじめられて落ち込んでいた娘が、目を輝かせてアイドル活動をしているのを見ると、なんとか娘の思うようにしてやりたいと思うのも親の本音でしょう。さまざまななことが、悪い方向に向かってしまったように思います。そして母親の証言を全て信じるなら、事務所は萌景さんの境遇を利用して縛りつけていたのだと思います。

相談する人がいなかった

1億円を請求されても、弁護士がいれば払う必要はないと鼻で笑ってアドバイスしてくれたでしょう。それどころか、学業に支障をきたさないという当初の契約違反で、違約金すら取ると言ってくれたかもしれません。弁護士でなくても冷静に判断できる大人に相談したら、事務所から学費を借りると身動きできなくなるから止めろとアドバイスしたでしょう。そしてアイドルを目指すのに、愛の葉Girlsだけに拘る必要はないことも伝えられたはずです。



そしてどんな理由であっても、たとえ母親や周囲がどれほど悲しむことがあったとしても、自殺する必要はないと伝えられたはずです。これらのことを伝えられる人が周囲にいなかったことが、本当に残念です。

まとめ

私はアイドルには詳しくないので、萌景さんがアイドルとして成功したかはわかりません。また今日のアイドルに比べて、萌景さんがどの位のレベル(歌やダンスや容姿)だったかはわかりません。しかしももクロに憧れてアイドルを目指すのは、十代の少女にとってなんら罪のないことですし、それが死ぬ理由になることはないはずです。この可愛らしい少女が、周囲を気遣い将来に絶望して死を選んだというのは、あまりに悲しすぎます。こういう話は、繰り返してほしくないですね。



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