ビーレフェルト市は存在しない という陰謀説

ドイツの都市、ビーレフェルト市が実は存在しない架空の都市で、「やつら」の陰謀によりあたかも実在するように偽装されている。


こんな陰謀論がドイツで流行っていると聞いたのは、ずいぶん前のことです。私がニュースで見たのは、ビーレフェルト市が陰謀論を否定するために「ビーレフェルトは存在する」という新聞広告を出したということと、その掲載が4月1日だったために「ビーレフェルトが存在するというのは、エイプリルフールの嘘だと公式になった」と市当局の思惑に反して陰謀論が盛り上がってしまった、というものでした。

もちろんドイツの人が真面目に陰謀論を信じていたのではなく、あくまでもジョークとして楽しんでいたようですが、広まったのはいくつもの要因があったそうです。大都市の割に有名企業があるわけでも、全国的な有名人を輩出したわけでもなく、観光名所もないのです。つまりドイツ人にとって、ビーレフェルト市は極めて存在感の薄い都市だったようなのです。


この陰謀論は巧みに作られていて、「ビーレフェルト市が存在しない証拠として、次の3つの質問に答えて欲しい」と問いかけます。

1.ビーレフェルト出身の人を知っていますか?
2.ビーレフェルトに行ったことがありますか?
3.ビーレフェルトに行ったことがある人を知っていますか?

この3つの質問に1つでもイエスと言える人はいないはずだ。ビーレフェルトは存在しないのに、あたかも存在しているかのように偽装されているのだと畳みかけてきます。実際に多くのドイツ人は、この3つの質問に全てノーと答えるんだそうです。それくらい存在感がないんでしょうね。

ビーレフェルト市にはアウトバーン高速道路が通っていますが、郊外を通るため都市部を見ることなく牧歌的な光景が広がるばかりだそうです。高速鉄道もありますが、仮駅舎のようにガランとしていて、急ごしらえに作られたという陰謀論に現実味を与えていたようです。さらにベルリンとルール地方の中間にあるため、通過駅の一つに過ぎず、下車する人があまりいないというのもあったようです。

※ビーレフェルト中央駅
しかし残念なことに、この仮駅舎のような駅は改修が行われて、存在感のあるものになってしまったようです。もちろんこの改修も「やつらのプロパガンダ」というジョークで埋め尽くされたようですが、存在感のある駅では面白みも半減です。

ビーレフェルト大学の校舎は「やつら」の宇宙船を偽装したものとされているようですが、そのビーレフェルト大学の学生らが陰謀を題材にした自主制作映画を企画し、地元企業の出資とプロの俳優の協力を得て公開されたそうです。

※ビーレフェルト大学
堅物のステレオタイプのイメージがあるドイツですが、こういう話は微笑ましいですね。


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