元俳優が「女優は全員すぐに脱げ」は正しいと主張する話

このブログに登場したことがある友人パクくんが、私が無類の映画好きなので元俳優の知人Sさんを紹介してくれました。Sさんは映画監督の園子温のファンで、彼が言った「女優は全員すぐに脱げ」は100%正しいと言います。園子温の映画が苦手な私は、すぐに賛成出来ずに真意を聞きました。

※映画監督の園子温




元俳優のSさん

部隊を中心に活動していた50代の方で、「乱」など有名な映画にもエキストラで参加したそうです。大阪が活動の拠点でしたが、ご家族の不幸など家の事情で、実家がある埼玉に戻ってきて、現在は勤め人です。しかし芝居は相変わらず好きで、舞台や映画はかなり見ているようです。

※映画「乱」

脱ぐより恥ずかしいのが演技

「脱ぐと演技は上手くなるのですか?」とSさんに尋ねると、当然ながらそんなことはないとおっしゃいます。ではなぜ「女優は全員すぐに脱げ」になるのかというと、

「男も女も脱ぐぐらい、さっと出来ないと芝居なんてできない。真剣に演技をやったら、スッポンポンで踊る方が恥ずかしくないんだよ」

と、言うのです。演技をすると言うことは、裸になるよる遥に恥ずかしい行為なのだそうです。

演技は、その人の本性を映す

「ある程度のレベルになると、過去のトラウマとか性癖とか、人に知られたくない部分が演技に出てくるんだよ」

もちろん、何から何まで嘘で埋め尽くす天才的な人もいるそうですが、それは本当にまれだそうです。ほとんどの人は、演技に本性が映し出されるようになるといいます。

それで思い出したのが、学生の頃に読んだ作家の村上春樹と山田詠美の対談です。山田が「春樹さん、モテなかったでしょ?」と尋ね、村上が「よくわかったね」と返すと、山田は「だって春樹さんの小説って、いかにもモテない男の妄想ばっかりなんだもん」と答えていました。村上春樹は山田詠美の指摘に、笑って認めていました。Sさんは「まさに、そんな感じ」と言います。

※左:村上春樹 右:山田詠美




演技はウ◯コに似ている

武闘派な雰囲気の役者が、リンチに会うシーンを演じていて、無意識に恍惚の表情を浮かべたり、恋人をビンタする女優が、ふとサディスティックな笑みを浮かべてしまったりと、「気づく人は気づく」レベルでバレてしまうのは、芝居の世界では当たり前だと言います。

「役者が役を体に取り入れると、体の中で化学反応が起こって、その人独自の形で出てくるんだ」

と言います。私が「まるでウ◯コの話みたいだ」と言うと、「その通り。俺がいた劇団では『演技はウ◯コ』って教わった」と言います。その時の体調だけでなく、普段の生活や食の嗜好などが出てくるモノに影響するように、演技も全く同じことが起こるのだそうです。

「毎回、お客さんの前でウ◯コするのに比べたら、裸になるなんて大したことないだろう」

というのがSさんの言い分でした。

本性を抑えつける俳優たち

Sさんは、本性が漏れ出すような演技のレベルに行けず、ひたすら本性を抑えつけている俳優がテレビや映画に沢山いると言います。殻に閉じこもり、小手先だけで役を乗り切ろうとするのは羞恥心があるからで、それを捨てなければ、もう一つ上のステージに行くのは難しいといいます。

その点で、園子温はそういう殻を壊すのが上手く、満島ひかり、吉高由里子、二階堂ふみなどを一つ上のステージに押し上げているようです。トリンドル玲奈は「リアル鬼ごっこ」の撮影に入る時に「死ぬこと以外は何でもやります」と宣言したそうですが、モデルの彼女が鼻水をダラダラと垂らしながら泣く演技は、他の監督ならそこまで追い詰めなかったかもしれません。

※川で濡れたシークエンスでは、ほぼノーメイクでした。

人は誰もが演技をしながら生きていると言います。嫌われたくない、好かれたい、気を遣わせたくない、などの想いから本音を隠し、偽りの姿を演じて生きているわけです。Sさんは「演じている姿で、台本に合わせて演じるから難しいの。演技に演技を重ねるなんて、簡単にいくわけないだろ。だから演じている普段の姿を一度捨てて、本性丸出しの姿で演じればいいんだよ」といいます。

俳優は全員すぐに脱げ

脱ぐぐらいのことができなければ、演技をすることは難しいというのがSさんの意見でした。もっとも演技手法はいくつもあり、Sさんも自分が習ったやり方が絶対に正しいというわけではないとも言います。

しかし水死体役の女優がばっちりメイクをしていたり、刑務所にいる受刑者がムースで髪をセットしていたりする現状を見ると、事務所がタレントのイメージを守りすぎて、映画やドラマが歪になっていることもよくあります。少しずつ日本の映画界も変化しているので、これからどうなっていくのか見守りたいと思います。

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