ファッション業界は堕落したのか?
注)この記事は以前のブログの転載記事です。
ルイ・ヴィトンのバッグはmade in Franceって書いてるけど、本当はフランス製じゃないよね、とか。セレブが身につけている高級ブランドは、お金をもらって宣伝のために身につけてるだけだよね、とか。前から噂されていたことを、膨大な取材を元に名の知れたファッション・ライターがストレートに書いてしまった本が、今回紹介する「堕落する高級ブランド」です。
発売される前に書評を読んで、裁判を起こされて発禁になる可能性があるから、早めに買っておこうと思いました。しかし今でも売られているということは、裁判沙汰になっておらず、各ブランドも裁判をして注目を集めるよりも無視した方が得策と考えたのか、反論の余地がないのかなのでしょう。重版も重ねているようで、一定数が売れ続けているようです。
著者のダナ・トーマスは、ニューズウィーク誌でファッション記事を書き続けていた、その世界ではそれなりに有名なライターです。彼女は単に高級ブランド批判を展開しているのではなく、かつて憧れたブランドが商業主義に傾き、良いものを作るのではなく高く売れるものを作るようになったことを嘆いています。
本書で最も批判の対象になっているのは、LVMHのベルナール・アルノーです。彼はルイ・ヴィトンを買収すると、フランスの商慣習を無視した資本主義の原理で、フランスのファッション界を席巻していきます。ヴィトン一族は、彼に会社を売ったことを後悔し、法廷闘争を繰り広げました。しかし彼への批判は、その人が置かれた立場によって変わってくるのではないでしょうか。
アルノーは、ルイ・ヴィトンのモノグラムが印刷された塩化ビニールのバッグを、革製品よりも高値で売ることに成功しました。品質をギリギリまで下げ、利益率を最大限に上げたルイ・ヴィトンのバッグは、もはや法外な値段がつけられています。そしてアルノーは、バッグを売るのではなくセレブ達と同じものを持てるという幻想を売っていると言います。
消費者からすると、品質を下げて価格を上げられるのですからたまったものではありません。しかし経営者の目線で見ると、売上が低迷していたルイ・ヴィトンを、世界的なブランドに押し上げた立役者です。しかも売上だけでなく、驚異的な利益を得ることに成功しました。今のファッション・ブランドのビジネスモデルは、アルノーを手本にしたものが多くあります。
本書では、上記のルイ・ヴィトンなどを「堕落した」(原語では、輝きをなくした)ブランドとしていますが、同時に「堕落していない」ブランドも書かれています。果たしてそれらのブランドが、本当に堕落していないのか疑問が残りました。確かに批判だけに終わらず、堕落していないブランドを紹介する姿勢は立派ですが、トム・フォードやルブタンが他とどう違うのか?という想いも残ります。
いろいろ書きましたが、ファッション業界の公然の秘密や噂されてきたことを、取材を元にしっかり書いたことで価値ある本だと思います。出版後に著者の仕事がなくなってしまうのではないか?そんな心配をしてしまうほど痛烈な書き方ですので、ファッションに興味のある方にはお勧めです。

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ルイ・ヴィトンのバッグはmade in Franceって書いてるけど、本当はフランス製じゃないよね、とか。セレブが身につけている高級ブランドは、お金をもらって宣伝のために身につけてるだけだよね、とか。前から噂されていたことを、膨大な取材を元に名の知れたファッション・ライターがストレートに書いてしまった本が、今回紹介する「堕落する高級ブランド」です。
発売される前に書評を読んで、裁判を起こされて発禁になる可能性があるから、早めに買っておこうと思いました。しかし今でも売られているということは、裁判沙汰になっておらず、各ブランドも裁判をして注目を集めるよりも無視した方が得策と考えたのか、反論の余地がないのかなのでしょう。重版も重ねているようで、一定数が売れ続けているようです。
著者のダナ・トーマスは、ニューズウィーク誌でファッション記事を書き続けていた、その世界ではそれなりに有名なライターです。彼女は単に高級ブランド批判を展開しているのではなく、かつて憧れたブランドが商業主義に傾き、良いものを作るのではなく高く売れるものを作るようになったことを嘆いています。
本書で最も批判の対象になっているのは、LVMHのベルナール・アルノーです。彼はルイ・ヴィトンを買収すると、フランスの商慣習を無視した資本主義の原理で、フランスのファッション界を席巻していきます。ヴィトン一族は、彼に会社を売ったことを後悔し、法廷闘争を繰り広げました。しかし彼への批判は、その人が置かれた立場によって変わってくるのではないでしょうか。
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※ベルナール・アルノー カシミアを着た狼と呼ばれています。 |
アルノーは、ルイ・ヴィトンのモノグラムが印刷された塩化ビニールのバッグを、革製品よりも高値で売ることに成功しました。品質をギリギリまで下げ、利益率を最大限に上げたルイ・ヴィトンのバッグは、もはや法外な値段がつけられています。そしてアルノーは、バッグを売るのではなくセレブ達と同じものを持てるという幻想を売っていると言います。
消費者からすると、品質を下げて価格を上げられるのですからたまったものではありません。しかし経営者の目線で見ると、売上が低迷していたルイ・ヴィトンを、世界的なブランドに押し上げた立役者です。しかも売上だけでなく、驚異的な利益を得ることに成功しました。今のファッション・ブランドのビジネスモデルは、アルノーを手本にしたものが多くあります。
本書では、上記のルイ・ヴィトンなどを「堕落した」(原語では、輝きをなくした)ブランドとしていますが、同時に「堕落していない」ブランドも書かれています。果たしてそれらのブランドが、本当に堕落していないのか疑問が残りました。確かに批判だけに終わらず、堕落していないブランドを紹介する姿勢は立派ですが、トム・フォードやルブタンが他とどう違うのか?という想いも残ります。
いろいろ書きましたが、ファッション業界の公然の秘密や噂されてきたことを、取材を元にしっかり書いたことで価値ある本だと思います。出版後に著者の仕事がなくなってしまうのではないか?そんな心配をしてしまうほど痛烈な書き方ですので、ファッションに興味のある方にはお勧めです。

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