高価なものと価値あるもの

※こちらは以前の「はねもねの独り言」に書いていた記事です。

知人の娘が、来年は成人式を迎えるのだそうです。その娘T嬢は知人に「成人したら、お祝いにグッチのバッグを 買って」とおねだりしているそうで、知人は娘の願いならばと買ってあげようと思っていたそうですが、それを奥様がノンとばかりに否定したのだそうです。 「学生の身分でグッチなんて」というわけで、カンカンガクガクの親子喧嘩が繰り広げられ、奥様は妥協して「私のヴィトンをあげましょう」と提案したそうで す。しかしT嬢は納得しません。「お母さんのお古じゃイヤ!」というわけです。


酒の席で知人がこんな話をしだしたので、みんなでワイワイ議論になりました。「お母さんの言うとおりだ」「今時の子供はグッチぐらいもってる」「あんまり高価じゃなければいいんじゃない?」「結局、お母さんも甘いな」と好き勝手な事を言っていたのですが、私はお母さんの提案を支持したくなりました。

知人の奥様が娘にあげようと言い出したヴィトンというのは、バブルに浮かれていた頃に知人が奥さんにプレゼントしたものだそうです。つまり20年ぐらい前のものですね。それから何年も使っていたらしいのですが、モノグラムのビニル製ではなく革でできているものなので色もかなり変色しているのだそうです。T嬢からすると、古臭くて変色したバッグなんて嫌なんでしょう。

しかしこれって個人的には素晴しいプレゼントだと思います。成人式のお祝いに、お父さんがお母さんにプレゼントしたバッグを受け継ぐなんて、最高だと思うんですけどね。こういうものは新しいものよりも古くて歴史があるものの方が、価値があると思います。 イギリスやフランス、ドイツなどではよく聞く話ですが、宝飾品や高級なバッグなどは親から子へと受け継がれるそうです。そのため安くてすぐにダメになるようなものではなく、高価でも長持ちするものが好まれます。親が大事に使っていたものを子供が受け継いで、子供も大事に使うということが行なわれているわけです。

我々の感覚からすると、子供はお古よりも新品の方が喜ぶように思いますが、それがそうでもないようです。新品よりもお古の方が、価値があることを知っているからです。 誰の言葉だったか忘れましたが、「バカでも運さえあれば金持ちになれる」というのがあります。エルメスのバッグにしたって、200万円ぐらいあれば大抵のものが買えます。誰であっても宝くじに当たれば、すぐに買えてしまうんですね。ですからエルメスは間違いなく高価なバッグですが、持っている人がどういう人なのかはわかりません。

しかし大事に使われ手入れの行き届いた古いバッグを若い人が持っているということは、両親が大事に使っていたものを受け継いでいるということになります。そういうことができるのは、それなりにしっかりした家でお育ちが良いということになるわけです。

イギリスは家具でも新品より中古が好まれますね。新品の高価な家具をドーンと並べている人は、いわゆる成金だと思われます。家族に代々伝わる家具に見えるというのが、家具選びのポイントとなるので古くて多少傷んだものの方が好まれます(ただしシティに住む新興のお金持ちは、歴史がない ので最先端を好みます)。良いものを長く使い、その中に家族の歴史が刻まれることに誇りを感じる人が多いので、家具を新調するにしても古く見えるものが好まれるわけです。

ヴィトンのバッグなんて、水商売で買った人や親に買ってもらった人、ボーナスをはたいて買った人などいくらでもいます。しかし20年も前のものを大事に使っている人なんて滅多にいません。同じヴィトンのバッグでも、お父さんがお母さんにプレゼントして何年も使い続けて家族 の歴史が刻まれたバッグなら、娘さんへの最高のプレゼントだと思いました。

私は知人に力説したのですが、「古いし変色もしてるし、あちこち傷んでるからなぁ」と言います。 私はヴィトンのバッグを持っていないので知りませんが、事情を話して修理やクリーニングを依頼すればヴィトンで応じてくれるでしょう。費用はかかりますが、新品のグッチよりも安くつくはずです。それにヴィトンもそういう依頼なら喜んでくれると思います。家族の歴史の一部を刻んでいるというのは、メーカーにとって誇らしい話ですからね。

逆にそういう依頼を断るようなら、ヴィトンはブランドとして終わりだと思います。きっと喜んで引き受けてくれると思うんですけどね。








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AUTHOR: jojo
DATE: 08/25/2010 00:20:29
以前ですが、フランス人の教授が 「ヴィトンのバッグを持ってる人が電車に乗ってるのを見るけど、なんでなんだろう?ヴィトンを持つ人が電車に乗るなんて・・・」 と言っていて、「どういうことですか?」と聞いたんですが。 彼は「普通はヴィトンを持つような人は、お抱え運転手付きの車でお出迎えしてもらうんだけどね。なんで日本だとヴィトンを持ってる人が電車に乗ってるんだい?」とのこと。

ヨーロッパだと大金持ちしかヴィトンは買わないので、電車乗ったOLがヴィトン持ってるのが不思議だったようですね。 まあ、これは昔聞いた話なので今の欧州事情はどうなってるかはわかりませんけど。私、フランスとか行ったことないですし(^^)


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AUTHOR: boi
DATE: 08/25/2010 08:24:51
革製品とかは年季が入るといい具合になるんですけどね~。

ボクも親父の遺品からZippoと皮ジャンを頂戴しました。どっちも何十年も前の製品なんですけど、いい味が出てるし思い入れもあって、新しい物と変わらないぐらい魅力的です。 時代を越えて使えるしっかりとした製品を親から子へ、羨ましい事なんですけどね。


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AUTHOR: mumu.com
DATE: 08/25/2010 20:09:53
久し振りにお邪魔します。 おいらもはねのねさんの意見に大賛成です。 受け継ぐモノが減っている昨今ですが、価値観の相違を周りと感じているところです。

おいらも子供が出来るなら場の話ですが、本当の価値の定義をしっかり教え込みたいモノですね~。 「モノを大切に使う」という文化が廃れて久しいですが、長いSpanでモノを使う人を見ていると格好いいな~と思いますもん。

そういえば鞄の遣い心地は如何ですか? この記事を読んでいるとコインケースや鞄、靴を大切に使われているんでしょうね。 良い記事ありがとうございます。


----- COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 08/25/2010 22:56:30
★jojoさん
ヴィトン以上にエルメスなんかは、普段使いするのはお金持ちだけみたいですね。以前話したことがあるフランス人の女の子は、エルメスの小さなバッグをお母 さんにもらって特別な日にだけ使っていると言っていました。まあ、互いに怪しい英語で会話したので、かなり不確かな話ですけど(^_^;)

私の友人のアメリカ人は「どうして日本人はLVと書かれているビニル製のバッグを有難がるんだ?」と言っていました。本人はメーカー不明のビニル製のボス トンバッグを持っていて「これなんか50ドルで丈夫なんだぞ」と自慢していました。価値観の問題だとは思いますが、「LVと書かれたビニル製のバッグ」と 言われると、有難みもなにもないですね(^^ゞ

★boiさん
革ジャンにジッポーですか!男臭くていいですね。

ジッポーは永久保証なので、ボロボロになっても修理してくれるからいつまでも使えますしね。友人はタバコを吸わないのですが、キャンプ道具にジッポーを入 れていて20年以上同じものを使っています。ステンレスが剥げて真鍮が見えていますが、実にいい感じになっています。長く使い続ける事で愛着も生まれますし、受け継がれたものというのは新品にはない価値がありますからね。大事に使ってあげてくださいね!


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AUTHOR: はねもね
DATE: 08/25/2010 22:57:17
★mumuさん
モノを大切に使うというよりも、どんどん買い換える消耗の文化が主流ですからね。使い捨てというのが楽ちんで便利なので、そっちの方に流れているんですよね。 鞄はとてもいいですよ。今ではかなり革が育ってきて、ピカピカに光っています。かなりいい感じになってきました。実はあそこのお店でベルトも買ったんですよ。これもそのうち書きたいと思います。

----- COMMENT:
AUTHOR: maple
DATE: 08/26/2010 00:24:18
学生でぴかぴかの有名ブランドバックなんか下げてると、ああ、甘やかされた女の子だなって思っちゃいますね。なんだか危険じゃないでしょうか。

最近読んだ雑誌では、イギリスでは由緒ある教会の、廃棄予定のベンチをテーブルにして資産家が買い取ったという美しいリサイクルの話がありました。 みんながもてはやすものはいい値段がついたりしますけど、所詮量産品。なかなか作り出せないもの、2度と作り出せないもののほうが、価値・ロマンがあるなって思います。


----- COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 08/27/2010 11:40:18
★mapleさん
何に価値を見出すかってことでしょうね。自分の歴史を刻んだものや、縁起を担いだものなどその人独自の価値観というのは、唯一無二のものになりますからね。

みんなが好きっていうから自分も好きという感覚ではなく、自身の感覚でこれが好きだと言えるようなものに出会うと少し変わったりするのかもしれませんね。 ピカピカの高価なものを持っても違和感のない若い人というのは、お嬢様オーラが出ているような限られた育ちのいい人だけでしょうね。そういう人は、ほとんどお目にかかれませんね。 -





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