痩せられない美しき柔術女王 /マッケンジー・ダーン

2015年、マッケンジー・ダーンが総合格闘技(MMA)に転向すると発表した時、業界ではホットなニュースとして駆け巡りました。柔術のスーパースターであり、美貌を誇るマッケンジー・ダーンの転向はMMAにとって朗報であり、成長目まぐるしい女子のMMAの競争がさらに激化すると思われたからです。彼女の転向はちょっとした起爆剤になるはずでした。MMAに転向して7戦無敗で4試合が一本勝ちです。しかし現在の彼女の評価はいま一つの状況です。



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柔術界の女王

1993年、アリゾナで有名な柔術家夫婦の間に生まれたマッケンジーは、幼いころから柔術に親しんできました。3歳から始めた柔術は19歳で黒帯になり、各ベルトクラスでタイトルを手にしています。そして21歳の時には、世界選手権で銅メダルを獲得しています。そこから破竹の勢いで勝ち続けると世界選手権、世界ノーギ柔術選手権で何度も優勝し、2015年には寝技の戦いの最高峰であるアブダビ・コンバットにも出場しました。55kg級で優勝し、自分より40kgも重いギャビ・ガルシア(日本ではRIZIN出場で有名)にも勝利し、無差別級の女王にもなりました。



柔術界のタイトルを総なめにしてきたマッケンジーは、その美貌もあって人気選手となりました。美して強い柔術女王として柔術界の顔になったのです。

MMA転向

何度も転向の噂があり、実際に何度もアプローチがあったようです。寝技主体の柔術とパンチやキックがあるMMAでは競技として全く異なるので慎重に検討したようですが、2015年にMMA転向を宣言しました。「ヨアナ・イェンジェイチック(元キックボクシング女子世界王者)やホリー・ホルム(元ボクシング女子世界王者)が最短距離でチャンピオンになったように、私もなってみせる」と、違う競技からMMAに転向してチャンピオンになった二人を例に挙げて語っていました。

※ヨアナ・イェンジェイチック

当初は柔術の大会に参戦しつつ、MMAの試合にも出るという二足の草鞋を履くスタイルで参戦することになりました。そしてMMAに移っても、圧倒的な寝技技術をみせつけていきます。

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減量に苦しむ

2016年7月22日、レガシー・ファイティング・チャンピオンシップ主催のレガシーFC58に出場しました。ここで勝利すると、3ヶ月後のレガシーFC61に出場します。しかしこの試合の計量でマッケンジーは2.8ポンド(1.27kg)の超過により、キャッチウェイトの試合に変更されました。この試合は裸締めで勝利しています。さらに翌年の3月にはレガシー・ファイティング・アライアンス主催のLFA6に出場したのですが、またしても体重をオーバーしてしまいます。この試合もキャッチウェイトになり、判定で勝利しました。

3試合を行なって2試合で体重超過というのは深刻で、マッケンジーがストロー級で戦うのは困難であると思われました。そこで2017年10月のLFA24では、フライ級の試合に出場しています。この試合は裸締めで勝利するのですが、2ヶ月後に出場したインヴィクタFCではストロー級で出場してアームバーで勝利しています。マッケンジーは減量が苦しいにも関わらず、ストロー級にこだわり続けることになります。

2018年3月にはUFCデビューを飾り、UFC222でアシュリー・ヨーダーと対戦します。しかし同年5月のUFC224でアマンダ・クーパーと対戦する際には、8ポンド(約3.6kg)も体重超過をしてしまいました。ショーツを脱いで体重計に再度上がる様子に「あのショーツは何ポンドあるんだ?」という失笑も起こり、キャッチウェイトの試合になりましたがマッケンジーだけが違う階級で参加していると皮肉を言われることになります。

※体重計を持つマッケンジー

マッケンジーは体重超過が相次いだことについて、柔術の試合では体重増を求められMMAでは減量を求められるため体重がジェットコースターのように変化しており、体重が落ちにくくなっているとのことでした。そこでMMA一本に絞ったのですが、その結果として計量で8ポンドも超えてしまったので失望の声が広がりました。対戦相手からは「彼女はクッキーを我慢できない」と揶揄される始末です。



違約金を払ってキャッチウエイト(契約体重)制の試合にして勝利しても、1階級上の体重で戦っているので、勝ったことが評価につながりにくくなっています。フライ級に上げれば済むのですが、それを頑なに断っていてストロー級で戦いたいと考えているようで、毎回のように批判とブーイングを浴びることになったマッケンジーが、今後はどのようにしていくのかは不明です。

マッケンジーは強いのか

上記のように体重超過を繰り返しているため、どの程度の強さなのか判断しにくい状況です。ただし試合を見ていると打撃から寝技に持ち込む技術は高く、さすが柔術の世界王者と思わされます。一方で打撃の技術はまだまだで、これからの向上が望まれます。現在のMMAはどんなに組んでから強くても、打撃の技術がないと上には上がれません。さらに打撃の技術は日進月歩で、これが正しいというのが確立されていないのが現状です。



マッケンジーが挙げたヨアナ・イェンジェイチックは、圧倒的な打撃技術でチャンピオンに君臨しましたが、決して打撃が上手いと思われていなかったローズ・ナマユナスに打撃戦で完封されました。女子MMA最高の打撃技術を持つと言われていたヨアナも、あっという間に追い抜かれるほど打撃技術の進化速度が早いのです。異業種の王者がMMA王者に簡単になれる時代ではなくなっています。

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まとめ

柔術での実力に加え、恵まれた容姿で高い人気を誇るマッケンジー・ダーンですが、さすがに体重超過が続きすぎているため批判の方が大きくなっています。この1年ほど試合から遠ざかっていて、MMA用の体づくりに専念していると思われます。女子UFCでは以前のように安定政権を築く王者が少なくなり、さながら戦国時代のようになってきています。マッケンジーがタイトルマッチにたどり着くにはまだまだ多くの障壁がありますが、抜群の寝技技術でタイトルマッチを戦うマッケンジーを見たいと思っています。


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