MMA最強女子の陥落 /クリスチャン・サイボーグが初のKO負け

UFC232は昨年末に行われたのですが、録画したママ見ておらず、ようやく見ることができました。先に結果を知ってしまうと、どうしても見るのが後回しになってしまうんですよね。しかし実際に見てみないとわからないもので、今大会最大の衝撃だったクリスチャン・サイボーグのKO負けはラッキーパンチで倒されたと思い込んでいたのですが、全くそんなことはありませんでした。



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クリスチャン・サイボーグとは

173cmの長身に加え180cmのリーチを持つ大型選手で、ブラジルのシュートボクセ・アカデミーに所属しています。シュートボクセ・アカデミーといえば、日本ではおなじみのヴァンダレイ・シウバやマウリシオ・ショーグンが所属していたことでも有名な名門で、クリスはトップ選手のシウバが限界まで自分を追い込む姿に感銘を受けたと語っています。

1985年に生まれたクリスは、12歳から本格的にスポーツを始めています。ハンドボールで全国クラスの選手になると奨学金を獲得し、私立大学に進学しました。そんな彼女をシュートボクセアカデミーのトレーナーが見出し、ムエタイのクラスに通うことになります。そこで彼女は自分がムエタイに向いていることに気づきました。そしてシュートボクセアカデミーは、彼女の恵まれた体格と類い稀な運動神経に大きな可能性を感じていました。

ストライクフォースに出場したクリスは、連戦連勝で突き進み、ドーピング検査で陽性反応が出て王座を剥奪されるまで、圧巻の強さで王座を守ってきました。UFCに移籍すると、クリスのために用意されたと言われる女子フェザー級の王座決定戦に出場して、圧巻の強さで王座を獲得します。その後、ホリー・ホルム、ヤナ・クニツカヤを相手に防衛戦を行い、2度の防衛に成功しました。



クリスが抱える最大の問題は、強すぎて対戦相手がいないことです。ただでさえ選手が少ないフェザー級において、クリスの強さは突出しているため、ビッグマッチどころか普通の防衛戦を組むことが困難になっていました。もはや男と対戦するしかないと言われたクリスは、強すぎるが故のジレンマに陥っていました。

アマンダ・ヌネスの挑戦

女子バンタム級王者のアマンダ・ヌネスはクリスと同じブラジル出身で、バンタム級の激動の時代に終止符を打った選手です。女子MMAの人気を牽引した絶対王者、ロンダ・ラウジーがホリー・ホルムに負けたことからバンタム級は激動の時代に突入します。ホルムはミーシャ・テイトの挑戦を受け、ミーシャが新しい王者になりました。そのミーシャに挑戦してヌネスは王座を奪いました。



2016年12月、ヌネスはロンダ・ラウジーの挑戦を受けます。かつての絶対王者の返り咲きが期待された試合で、ヌネスは48秒でラウジーをKOに沈め、混戦の時代に終止符を打ちました。その後ヌネスはシェフチェンコなどの強豪を退け、3度の防衛に成功しました。そのヌネスがフェザー級のクリスに挑戦することが決まったのです。しかしこのカードへの期待は低く、対戦相手に困ったクリスの苦肉の策ともとられていました。自分の勝利への期待があまりに低いことから、ヌネスは「私が勝てると思われたから、このカードが決まったんでしょう?」と記者会見で発言するほどでした。

UFC232の死闘

ヌネスは増量してきたようで、普段より一回り大きくなっていました。計量ではクリスより重く、クリスは自分より重い選手と戦うのは初めての経験だったのではないでしょうか。いつになく大声を上げて気合を入れるクリスと、やや引きつったような表情を浮かべるヌネスは、互いに激しく緊張しているように見えました。ラスベガスのオッズはクリスの圧倒的優位を示していました。

試合開始と同時に積極的に前に出る両者は、相手に飲まれる前に飲まなくてはと思いつめているかのようで、互いに強いパンチを強振します。しかしコンパクトな右ストレートと右オーバーハンドを使い分けるヌネスのパンチがヒットし、クリスが膝をつきます。すぐに立ち上がりますが、ヌネスは一気に仕留めにかかります。クリスが後退する今まで見られなかった展開になり、再びヌネスのパンチでクリスが膝をつきました。


立ち上がったクリスをケージに追い詰めたヌネスは、激しい連打で追い詰め、クリスは糸が切れた人形のように意識を失って倒れました。頭から倒れたクリスを見て、レフリーは迷わず試合をストップし、ヌネスの勝利となりました。喜びのあまりオクタゴンを走り回り、ケージを乗り越えて観客に勝利をアピールするぬねすと、呆然と座り込んで医師の診断を受けるクリスの対照的な様子が映し出され、観客の中には泣いている人もいました。


全く予想外の展開で、ヌネスの一方的な攻勢での勝利でした。ヌネスは目に涙を浮かべながら、関係者一人一人に感謝を述べました。女子初の2階級制覇に喜びを隠せず「これでUFC殿堂入りよね!」とアピールし、会場から大きなスタンディングオベーションを浴びてオクタゴンを去りました。

まとめ

負けたクリスが笑顔を浮かべていたのは意外でしたが、彼女にとってようやく全力で倒しに行く相手が見つかった安堵かもしれません。皮肉なことに、強すぎて対戦相手が見つからなかったクリスは、この敗戦で商品価値が上がりました。ヌネスとの再戦への期待が高まりますし、今回のクリスを見て突破口を見出した選手もいるでしょう。ロンダ・ラウジーの敗北により始まった女子バンタム級の混戦は、フェザー級に舞台を移して続くのかもしれません。

このUFC232では、ジョン・ジョーンズも返ってきました。ダニエル・コーミエとの対戦を希望しており、男子重量級でも新たな展開が起こりそうです。


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