盗まれた金メダル /ロイ・ジョーンズ・ジュニアのソウル五輪
1988年に開催されたソウルオリンピックの記者会見で、銀メダルを獲得したロイ・ジョーンズ・ジュニア(以下RJ)は記者会見で泣いていました。「私の金メダルは盗まれた。金メダルを返してくれ」と泣きながら訴えるRJの姿は世界中に放送され、国際アマチュアボクシング協会は決勝戦について調査することを約束しました。「盗まれた金メダル事件」は、RJの人生に大きく影響を与えました。
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見ていた人の誰もが強烈な違和感を覚え、パクの勝利を疑問視しました。地元韓国からも呆れ声が聞かれる露骨すぎる地元判定で、この試合の審判は資格停止処分が下ります。アメリカ側からの強いクレームもあり調査が行われ、韓国が審判を買収していたことが発覚します。これによりRJの金メダルは、不正によって奪われたことが明らかになりました。しかし判定が覆ることはなく、IOCはRJに金メダルのレプリカを送ります。
世界戦で一発も被弾することなく、一方的に殴り続けてKOして見せました。両手を後ろに回して顔を突き出し、相手に連打を打たせてかわしてみせました。連打を打ち込んだ後にダンスを踊り、また連打を畳み掛けました。不必要なパフォーマンスで観客を盛り上げ、余裕を見せつけて勝つのがRJのスタイルになります。対戦相手を愚弄していると批判もありましたが、オリンピックの経験から圧倒的な差を見せつけてかつことがRJには大事だったのです。
ボクシングスタイルは特になく、対戦相手に応じて自在にスタイルを変化させるだけでなく、試合中であっても局面に応じてスタイルを変化させていました。一瞬の踏み込みで距離を詰めて放つ左フックで何度もKOを演出してきましたが、あらゆるスタイルであらゆる打ち方が可能で、スタイルがないのがスタイルと言われていました。
プロ入り初の黒星のショックは大きかったようですが、再戦ではわずか1R2分31秒で勝利して、RJの強さを改めて見せつけることになりました。その後、一時はヘビー級への転向を表明しますが撤回し、ライト・ヘビー級の王座を3団体統一して同階級で無敵の強さを誇りました。しかしRJは満足していませんでした。タイトルではなく歴史に名を残すことを求めたのです。
RJは15kgも重いルイスをジャブだけで蜂の巣にし、大した反撃も許さない展開で試合を支配しました。文句なしの判定でRJは勝利し、106年ぶりにミドル級元王者のヘビー級制覇が実現しました。RJの勝利は歴史的事件と報じられ、ボクシングの歴史にRJの名前は刻まれます。
RJは獲得したWBAヘビー級世界王座を防衛しないまま返上し、再びライト・ヘビー級に戻りました。しかしライト・ヘビー級の防衛戦でRJは惨敗しました。ライト・ヘビー級からヘビー級に増量し、短期間で再びライト・ヘビー級に戻す無理を強いた結果、RJは本来のしなやかさや強さを失ってしまったのです。過酷な増量と減量は、RJのパフォーマンスを著しく下げてしまったのです。
余談ですが、ソウル五輪のボクシングではライト・フライ級でアメリカのマイケル・カルバハルも不可解な判定で銀メダルになっています。またバンタム級では、韓国のビョン・ジョンイルが判定負けすると、韓国側が審判団に詰め寄り乱闘騒ぎに発展しています。韓国側は抗議の意思を示すために会場の照明を消して退出し、他の階級の試合にも影響が出ました。IOC会長のサマランチは稚拙な運営と怒りを露わにし、アマチュアボクシングは採点基準の見直しを行いました。RJの事件は、アマチュアボクシングにとっても転換点となる事件でした。
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盗まれた金メダル
ボクシング、ライトミドル級の決勝戦は、アメリカのRJと地元韓国のパク・シホンの間で戦われました。これまで圧倒的な強さを見せつけてきたRJは、決勝戦でもパクを圧倒します。圧倒的なスピードの差を武器に、ほぼ一方的な展開で試合を進め、2度のダウンを奪ってほぼ完璧に試合を終えました。有効打でも50以上の差をつけており、誰の目にもRJの勝利は間違いありませんでしたが判定はパクの勝利でした。見ていた人の誰もが強烈な違和感を覚え、パクの勝利を疑問視しました。地元韓国からも呆れ声が聞かれる露骨すぎる地元判定で、この試合の審判は資格停止処分が下ります。アメリカ側からの強いクレームもあり調査が行われ、韓国が審判を買収していたことが発覚します。これによりRJの金メダルは、不正によって奪われたことが明らかになりました。しかし判定が覆ることはなく、IOCはRJに金メダルのレプリカを送ります。
ただ勝つだけではダメ
プロに転向したRJは、ただ勝だけではダメで、圧倒的な差を見せつけなければ勝利が奪われるかもしれないと考えていたようです。KOで勝てば文句なしですが、必ずKOできるとは限りません。ですからあらゆる局面で、相手と自分の実力差を見せつけました。仮に判定になったとしても、圧倒的な差をつけて誰が見ても勝利だとわからせるようにしたのです。世界戦で一発も被弾することなく、一方的に殴り続けてKOして見せました。両手を後ろに回して顔を突き出し、相手に連打を打たせてかわしてみせました。連打を打ち込んだ後にダンスを踊り、また連打を畳み掛けました。不必要なパフォーマンスで観客を盛り上げ、余裕を見せつけて勝つのがRJのスタイルになります。対戦相手を愚弄していると批判もありましたが、オリンピックの経験から圧倒的な差を見せつけてかつことがRJには大事だったのです。
超人的な身体能力
バスケットの選手かボクサーか悩んでボクサーになりましたが、バスケットも独立リーグでの試合経験があります。関係者は口を揃えて、世界一になれるかはともかく、RJは望んだどの競技でも一流になれたと語ります。圧倒的な身体能力、抜群の運動神経の持ち主で、ボクシングの試合ではそれらを遺憾なく見せつけていました。ボクシングスタイルは特になく、対戦相手に応じて自在にスタイルを変化させるだけでなく、試合中であっても局面に応じてスタイルを変化させていました。一瞬の踏み込みで距離を詰めて放つ左フックで何度もKOを演出してきましたが、あらゆるスタイルであらゆる打ち方が可能で、スタイルがないのがスタイルと言われていました。
複数階級の制覇
93年にバーナード・ホプキンスからIBFミドル級王座を奪取すると、94年にはスーパー・ミドル級、96年にはライト・ヘビー級の王座を獲得して、あっという間に3階級を制覇しました。しかしライト・ヘビー級王座の初防衛戦で、ダウンした相手を殴ってしまい、失格負けで王座を失ってしまいました。これは流れの中から手が出た感じで、非常に不運な反則負けでした。プロ入り初の黒星のショックは大きかったようですが、再戦ではわずか1R2分31秒で勝利して、RJの強さを改めて見せつけることになりました。その後、一時はヘビー級への転向を表明しますが撤回し、ライト・ヘビー級の王座を3団体統一して同階級で無敵の強さを誇りました。しかしRJは満足していませんでした。タイトルではなく歴史に名を残すことを求めたのです。
ヘビー級王座への挑戦
ミドル級の王者がヘビー級に挑戦した例は数多くありますが、成功したのは1896年のボブ・フィッシモンズただ1人でした。近代ボクシング草創期の出来事であり、もはや誰も成し遂げられないと思われていたミドル級元王者のヘビー級制覇は、2003年にジョン・ルイス対RJの試合で実現します。RJは15kgも重いルイスをジャブだけで蜂の巣にし、大した反撃も許さない展開で試合を支配しました。文句なしの判定でRJは勝利し、106年ぶりにミドル級元王者のヘビー級制覇が実現しました。RJの勝利は歴史的事件と報じられ、ボクシングの歴史にRJの名前は刻まれます。
RJは獲得したWBAヘビー級世界王座を防衛しないまま返上し、再びライト・ヘビー級に戻りました。しかしライト・ヘビー級の防衛戦でRJは惨敗しました。ライト・ヘビー級からヘビー級に増量し、短期間で再びライト・ヘビー級に戻す無理を強いた結果、RJは本来のしなやかさや強さを失ってしまったのです。過酷な増量と減量は、RJのパフォーマンスを著しく下げてしまったのです。
失われた栄誉を求めて
元来の資質もあったのでしょうが、RJは栄誉にこだわりました。ソウル五輪の屈辱から、圧倒的な強さを誇示するために余裕を見せつけて勝利するようになると、あまりの力量の違いに観客はRJの試合に興奮しなくなりました。圧倒的に強いために人気が伸び悩み、そのため周囲の反対を押し切ってヘビー級に挑戦しました。その結果、晩年は簡単に倒されるようになり、RJのキャリアを終わらせる原因になったとも言われています。余談ですが、ソウル五輪のボクシングではライト・フライ級でアメリカのマイケル・カルバハルも不可解な判定で銀メダルになっています。またバンタム級では、韓国のビョン・ジョンイルが判定負けすると、韓国側が審判団に詰め寄り乱闘騒ぎに発展しています。韓国側は抗議の意思を示すために会場の照明を消して退出し、他の階級の試合にも影響が出ました。IOC会長のサマランチは稚拙な運営と怒りを露わにし、アマチュアボクシングは採点基準の見直しを行いました。RJの事件は、アマチュアボクシングにとっても転換点となる事件でした。
ボクシング関連記事
・紳士か悪童か? /瓦礫を運ぶイベンダー・ホリフィールド
・神様とボクシングと中年男 /ジョージ・フォアマンの数奇な人生
・マイク・タイソンに見る教育の重要性
・私が見た最悪のボクシング /ジェラルド・マクレランの悲劇
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