女性のようなギター /フェンダー ストラトキャスター
フェンダー社が1954年に発売を開始したギター、ストラトキャスターは、ロングセラーのギターであり初心者からプロまで幅広く使われています。数々の模倣を生み出したストラトはエレキギターの基本形であり、完成形だという人もいます。このストラトキャスターの魅力について書いていきたいと思います。
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テレキャスターはハワイアンミュージックを奏でるために作られましたが、ブルースミュージシャンも使用していたため、新型ギターもハワイアンミュージック用としつつも、様々な音を出せることでさらに広い市場を狙ったのです。この新型ギターはストラトキャスターと名付けられ、大胆なアイデアが盛り込まれていきます。
体のラインに合うようにボディが削られました。テレキャスターは背面がフラットだったので、立って弾く際に弦が貼ってある表面がやや下に向きます。しかしストラトキャスターのコンターボディにより、やや上向になり弦を鳴らす手元が見えやすくなりました。
3ピックアップ
テレキャスターには2つのピックアップ(弦の振動を拾うマイク)が搭載されていましたが、ストラトキャスターには3つのピックアップが搭載されました。これにより多彩な音を奏でることが可能になりました。
テレキャスターと違い同じピックアップを3つ搭載していますが、取り付けられた位置により、リアピックアップでは高音が強調され、フロントピックアップでは高音部がカットされ、センターピックアップではその中間音が出ます。トーンボリュームを使うことで、音の幅が大きく広がったのです。
シンクロナイズドトレモロ
6本の弦を同時に揺らすことでビブラートを起こす装置は、ビグズビー社から販売されていました。ストラトキャスターでは、より洗練されたトレモロアームを最初から搭載することにしました。
発売当初は、トレモロアームを装着しない固定ブリッジがついたモデルも20ドルほど安く売られていたようですが、ほとんど注文がなかったため、いつしか全てのモデルがトレモロユニットを搭載するようになりました。
ピックアップガードに機器類を搭載
テレキャスターではボディ側にピックアップや回路を搭載していましたが、ストラトキャスターではピックアップガード側に全てを取り付けています。これにより製造時に分業作業が効率的になり、修理時にも部品の交換が容易になりました。
この他にもヘッド形状の変更などさまざまな特徴を備えています。
1967年、カリフォルニア州モンタレーで開かれた音楽フェスティバルに出演したミュージシャンが、ストラトキャスターで演奏しました。その男はギターを頭の後ろや背中で弾くなど変幻自在の演奏を見せ、時に指ではなく歯で演奏して見せました。まるでギターが体の一部であるように使った後、ギターに火をつけて叩き壊すパフォーマンスで、見る者の度肝を抜きました。
ジミ・ヘンドリックスは一夜にして全米に名が知られるようになり、音楽ファンは派手なパフォーマンスに、ミュージシャンはギターから繰り出される多彩な音色に注目しました。ジミの驚異的なプレイは写真付きで広く報じられ、その写真には必ずストラトキャスターが写っていました。人々はジミのプレイを真似しようと、ストラトキャスターを買い求めました。製造中止も検討されていたストラトキャスターは、一気に人気商品に変貌したのです。
上記の通り、ストラトキャスターをヒットさせた人物であり、圧倒的なパフォーマンスで伝説になったギターリストです。アンプの出力を最大にした時に起こるハウリングを巧みにコントロールし、ノイズさえも音楽に変えていきました。
69年のウッドストックでの名演、アメリカ国歌の演奏ではベトナム戦争を意識し、爆撃機、爆弾の爆発、逃げ惑う人の悲鳴、マシンガンの銃声、進軍ラッパなどをストラトキャスターだけで表現して多くの人を驚かせました。ストラトキャスターの持つパフォーマンスを最初に最大限に引き出したギターリストです。
エリック・クラプトン
大学の講堂でのライブの際に、ジミと共演したクラプトンは驚愕してジミの真似をするようになります。サイケデリックな服に加え、ギターもストラトキャスターに変えています。以降、クラプトンはストラトキャスターをメインに使用することになります。
ピックアップの中間音を使った柔らかい音が特徴で、「いとしのレイラ」の録音に使われたブラッキーと呼ばれる黒のストラトキャスターが有名です。
リッチー・ブラックモア
ディープ・パープル、レインボーのギターリストとして有名で、高速のフィンガリングを多用したソロ演奏で人気を博しました。ジミ・ヘンドリックスから影響を受けたことを公言していて、プレイスタイルにジミの影響が色濃く反映されています。ハードロックシーンに、ストラトキャスターを定着させたのは、リッチーだと思います。
エリック・ジョンソン
スタジオミュージシャンとしてキャリアをスタートさせたジョンソンは、音のトーンに強いこだわりを持ち、美しいメロディとコード進行で他にはない音楽性を実現しています。凄腕ギターリストとしてジョー・サトリアーニのG3にも参加しました。
スティーヴィー・レイ・ヴォーン
MTVとメタル全盛期の80年代初頭に、古典的ブルースを豪快に演奏してスターダムにのし上がったギターリストです。「太い音を出したければ太い弦を張れ。レスポールにマーシャルみたいな女々しい真似はするな」とストラトキャスターに極太の弦を張り、他にはないブリリアントなサウンドと、高難度のプレイを連発して観客を魅了しました。
イングヴェイ・マルムスティーン
7歳の時にテレビでジミ・ヘンドリックスの特集を見てギターを始め、アルカトラスというバンドで名声を得ました。ジミ意外にはリッチー・ブラックモアの影響も多く、クラシカルなロックサウンドを超高速のフィンガリングで弾くのを得意としています。一方でクラシック音楽への傾倒もあり、200本を超えるストラトキャスターを所有しています。
テレキャスターを男臭いギターだとすると、ストラトキャスターは女性のようなギターです。繊細で気が利いてギターリストに寄り添ってくれます。俺を上手く弾きこなしてみろと言わんばかりのテレキャスターも魅力的ですが、ストラトキャスターに違った良さがあります。エレキギターのスタンダードになったのには、それなりの理由があるのです。
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開発経緯
1950年にブロードキャスター、その改名版であるテレキャスターが好評を得たフェンダー社は、新たなギター開発に乗り出しました。ソリッドボディ(ギターのボディに空洞がなく、一枚板で作られたギター)を持つスパニッシュギター(立って弾くギター)というコンセプトはテレキャスターから変わらず、さらに様々な音を出せる汎用性の高いギターです。テレキャスターはハワイアンミュージックを奏でるために作られましたが、ブルースミュージシャンも使用していたため、新型ギターもハワイアンミュージック用としつつも、様々な音を出せることでさらに広い市場を狙ったのです。この新型ギターはストラトキャスターと名付けられ、大胆なアイデアが盛り込まれていきます。
ストラトキャスターの特徴
コンターボディ体のラインに合うようにボディが削られました。テレキャスターは背面がフラットだったので、立って弾く際に弦が貼ってある表面がやや下に向きます。しかしストラトキャスターのコンターボディにより、やや上向になり弦を鳴らす手元が見えやすくなりました。
3ピックアップ
テレキャスターには2つのピックアップ(弦の振動を拾うマイク)が搭載されていましたが、ストラトキャスターには3つのピックアップが搭載されました。これにより多彩な音を奏でることが可能になりました。
テレキャスターと違い同じピックアップを3つ搭載していますが、取り付けられた位置により、リアピックアップでは高音が強調され、フロントピックアップでは高音部がカットされ、センターピックアップではその中間音が出ます。トーンボリュームを使うことで、音の幅が大きく広がったのです。
シンクロナイズドトレモロ
6本の弦を同時に揺らすことでビブラートを起こす装置は、ビグズビー社から販売されていました。ストラトキャスターでは、より洗練されたトレモロアームを最初から搭載することにしました。
発売当初は、トレモロアームを装着しない固定ブリッジがついたモデルも20ドルほど安く売られていたようですが、ほとんど注文がなかったため、いつしか全てのモデルがトレモロユニットを搭載するようになりました。
ピックアップガードに機器類を搭載
テレキャスターではボディ側にピックアップや回路を搭載していましたが、ストラトキャスターではピックアップガード側に全てを取り付けています。これにより製造時に分業作業が効率的になり、修理時にも部品の交換が容易になりました。
この他にもヘッド形状の変更などさまざまな特徴を備えています。
売れないストラトキャスター
フェンダー社の期待を背負って売り出されたストラトキャスターですが、大して売れませんでした。この頃、ギターを買う人のほとんどはプロのミュージシャンでしたが、テレキャスターの完成度に満足していたため見向きもしなかったのです。細々と販売が続き、テレキャスターの出荷本数が増えるもののストラトキャスターの売れ行きは伸びませんでした。10年もそんな状況が続くと、製造中止も検討されました。※バディ・ガイは早くからストラトキャスターを使っていました。 |
1967年、カリフォルニア州モンタレーで開かれた音楽フェスティバルに出演したミュージシャンが、ストラトキャスターで演奏しました。その男はギターを頭の後ろや背中で弾くなど変幻自在の演奏を見せ、時に指ではなく歯で演奏して見せました。まるでギターが体の一部であるように使った後、ギターに火をつけて叩き壊すパフォーマンスで、見る者の度肝を抜きました。
※ストラトキャスターに火を放ったジミ |
ジミ・ヘンドリックスは一夜にして全米に名が知られるようになり、音楽ファンは派手なパフォーマンスに、ミュージシャンはギターから繰り出される多彩な音色に注目しました。ジミの驚異的なプレイは写真付きで広く報じられ、その写真には必ずストラトキャスターが写っていました。人々はジミのプレイを真似しようと、ストラトキャスターを買い求めました。製造中止も検討されていたストラトキャスターは、一気に人気商品に変貌したのです。
ストラトキャスターを使う人達
ジミ・ヘンドリックス上記の通り、ストラトキャスターをヒットさせた人物であり、圧倒的なパフォーマンスで伝説になったギターリストです。アンプの出力を最大にした時に起こるハウリングを巧みにコントロールし、ノイズさえも音楽に変えていきました。
69年のウッドストックでの名演、アメリカ国歌の演奏ではベトナム戦争を意識し、爆撃機、爆弾の爆発、逃げ惑う人の悲鳴、マシンガンの銃声、進軍ラッパなどをストラトキャスターだけで表現して多くの人を驚かせました。ストラトキャスターの持つパフォーマンスを最初に最大限に引き出したギターリストです。
※ウッドストックでのアメリカ国家
エリック・クラプトン
大学の講堂でのライブの際に、ジミと共演したクラプトンは驚愕してジミの真似をするようになります。サイケデリックな服に加え、ギターもストラトキャスターに変えています。以降、クラプトンはストラトキャスターをメインに使用することになります。
ピックアップの中間音を使った柔らかい音が特徴で、「いとしのレイラ」の録音に使われたブラッキーと呼ばれる黒のストラトキャスターが有名です。
リッチー・ブラックモア
ディープ・パープル、レインボーのギターリストとして有名で、高速のフィンガリングを多用したソロ演奏で人気を博しました。ジミ・ヘンドリックスから影響を受けたことを公言していて、プレイスタイルにジミの影響が色濃く反映されています。ハードロックシーンに、ストラトキャスターを定着させたのは、リッチーだと思います。
エリック・ジョンソン
スタジオミュージシャンとしてキャリアをスタートさせたジョンソンは、音のトーンに強いこだわりを持ち、美しいメロディとコード進行で他にはない音楽性を実現しています。凄腕ギターリストとしてジョー・サトリアーニのG3にも参加しました。
スティーヴィー・レイ・ヴォーン
MTVとメタル全盛期の80年代初頭に、古典的ブルースを豪快に演奏してスターダムにのし上がったギターリストです。「太い音を出したければ太い弦を張れ。レスポールにマーシャルみたいな女々しい真似はするな」とストラトキャスターに極太の弦を張り、他にはないブリリアントなサウンドと、高難度のプレイを連発して観客を魅了しました。
イングヴェイ・マルムスティーン
7歳の時にテレビでジミ・ヘンドリックスの特集を見てギターを始め、アルカトラスというバンドで名声を得ました。ジミ意外にはリッチー・ブラックモアの影響も多く、クラシカルなロックサウンドを超高速のフィンガリングで弾くのを得意としています。一方でクラシック音楽への傾倒もあり、200本を超えるストラトキャスターを所有しています。
まとめ
テレキャスターのような角張ったボディと違い丸みを帯びたボディで、柔らかい音を出すのが特徴です。しかし激しく歪ませるなどハードな音作りも簡単にでき、多彩な音作りが可能です。またテレキャスターほどピーキーなセッティングでないため、初心者でも使いやすいので人気があります。テレキャスターを男臭いギターだとすると、ストラトキャスターは女性のようなギターです。繊細で気が利いてギターリストに寄り添ってくれます。俺を上手く弾きこなしてみろと言わんばかりのテレキャスターも魅力的ですが、ストラトキャスターに違った良さがあります。エレキギターのスタンダードになったのには、それなりの理由があるのです。
関連記事
もっとも男臭いギター /フェンダー テレキャスター
なぜエレキギターのビンテージ品は高価なのか /高値の理由を考える
ジミ・ヘンドリックスはなにが凄かったのか
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