思い入れだけで選ぶ007映画5選

友人と007シリーズの話になり、どの映画が好きかという話で盛り上がりました。映画の出来不出来ではなく思い入れだけで5本選べと言われたので、私なりに選んでみました。正直言って、思い入れで選ぶと5本なんかに入りきれないのですが、全24作の中で私が無理やり選んだのは以下の5本です。



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5位 ゴールデンアイ



映画スタジオの権利問題で、もはや007シリーズは製作できないのかと思われた空白の6年間を経て、ピアーズ・ブロスナンをボンドに迎えて待ちに待った新作です。内容はともかく、新作が出来たというだけで嬉しかった作品です。権利問題は以前書いたことがあるので、そちらを参照して下さい。



関連記事:権利問題から見る007 /人気シリーズの裏側で何が起こっていたか

ギャグ連発で、ボンドがお洒落で愉快なオジさんになったロジャー・ムーア時代から、リアルさを追求したティモシー・ダルトンを経てバトンを受け継いだブロスナンは、本作ではかなりシリアスです。というのも本来はダルトンが本作に主演するはずで、それまでのシリアスな流れを継承しているからです。しかしダルトンほどの悲壮感はなく、適度な軽快さを加えた演出になっているのも特徴です。次作からブロスナン演じるボンドは「美女に会った瞬間ベッドにゴー」の伝統を受け継ぎ、ギャグが増えていきます。



CG技術が高まり、ムチャクチャな場面でもリアルに再現できるようになったため、大迫力の映画になっています。そのため制作費が膨大にかかるようになり、興行収入の記録を更新しても利益が低くなっていきます。ブロスナンのボンドは儲からないというのが、降板の一因になりました。


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4位 007は二度死ぬ


シリアス路線かコメディかで揺れる007シリーズ初期の、徹底的にコメディ路線にした映画です。日本を舞台にしたおバカ展開で、見る者をこれでもかと笑わせようとします。予算の大半を宇宙基地セットに使ったため、全編にチープな雰囲気が漂いますが、それすらもB級コメディの雰囲気に貢献しています。



オープニングでボンドが死ぬという衝撃の展開から始まりますが、さらにそれを上回る衝撃が中盤に待っています。ボンドを日本人に偽装させるため、化粧を塗りたくって変な顔になるショーン・コネリーがシュールです。日本人と結婚して漁師になり、完璧な偽装を施しますが、どこから見ても変な外国人です。手拭いを首に巻いた長身のコネリーは、どこから見ても漁師ではありません。

※日本人に変装したボンド


製作陣がイメージした日本の珍妙な風景が続き、宇宙ではどこから見てもプラモデルのロケットが飛び、丹波哲郎が「コール・ミー・タイガー(タイガーと呼んでくれ)」と、日本人らしくない名前を名乗り、浜美枝がミニスカ和服にスニーカーで走り回ります。日本というより異次元モノに見えるカオスな展開に、見ていて頭がクラクラしてきます。

※忍者スタイルの丹波哲郎と、くの一スタイルの浜美枝


クライマックスは日本の諜報組織が特殊部隊を投入して、スペクターの基地に総攻撃をかけるのですが、特殊部隊はなんと忍者です。全身タイツのようなものを着た現代の忍者が、いかにも作りものの秘密基地で暴れ、相撲取りの殺し屋が襲いかかり、最後の最後までムチャクチャです。

ほとほと嫌気がさしたコネリーが降板を決めたのもうなづけるトンデモコメディで、後のロジャー・ムーア時代を予見させる作品になっています。




3位 ユア・アイズ・オンリー



抱腹絶倒のお色気アクションコメディとして一時代を築いた007シリーズが、本当にこのままでいいのか?と、ふと我に返ってややシリアス路線に走ったのが本作です。もちろんギャグもありますが、基本的にはシリアスな物語として描かれています。



前作「ムーンレイカー」は大ヒットしましたが、宇宙空間でレーザー銃を撃ちまくり、休む間も無くギャグを入れ続け、細部にまで笑いを詰めこんだのはやりすぎとの意見もあったようです。そこで本作は地に足をつけたアクションを中心に作られました。そこでやりすぎたら次作はスキーアクションで勝負という、「007は二度死ぬ」の後の「女王陛下の007」でも見られた展開に落ち着きます。



美女とベッドに入ること以外は頭にないのでは?と心配になるボンドではなく、人間味のあるボンドが本作にはいます。そしてスタントマンを大量に使ってモンタージュ撮影をしているので、おなじみの超スローモーな格闘戦がありません。若々しくてキレのある「ムーンレイカー」とは別人のジェームズ・ボンドがそこにいます。全く別の映画になってしまったような錯覚を覚えてしまう本作は、新しい007シリーズの展開を予感させました。


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2位 ロシアより愛を込めて



初期のシリアス路線の傑作で、後のお色気アクションコメディ路線とは正反対の重厚さがあります。映画のトーンは地味で、派手な演出がほとんどありません。物語はソ連情報部の美人局員が亡命を申請し、ジェームズ・ボンドに連行を依頼して始まります。彼女の手土産は暗号解読器レクターで、誰が聞いても罠だとわかる内容です。ボンドは罠を承知でイスタンブールに飛び、亡命を申請したタチアナ・ロマノバに会います。



本作のハイライトは、列車内で行われるロバート・ショウ演じる殺し屋とボンドの対決でしょう。アタッシェケースを開けるというだけの動作で、これほど緊張感を高めた場面はなかなかないと思います。金貨をもっとよこせとロバート・ショウが迫る場面も、ソ連の情報部は薄給なんだろうなと思わせる妙なリアリティがあり、冷酷無比なイメージと良いコントラストになっています。

※ロッテ・レーニャ演じるNo3


本作最後のの戦いが、スペクターNo3のローザ・クレップが掃除婦に化けて近寄り、ボンドを殺害しようと対決する場面になります。いかにもお婆ちゃんなロッテ・レーニャ演じるローザが使う武器はパンプスに仕込んだナイフで毒が塗ってあります。ボンドの足を蹴ろうとするローザに、ボンドが椅子を使って応戦する地味な戦いで、椅子で壁に押し付けられ、バタバタするローザの姿は無様です。しかし実際の殺し合いなんて、地味で側から見ると滑稽な感じがするのではないか?というリアルさを感じました。

この後の007シリーズは、ストーリーの流れや物語の辻褄に関係なく、その場その場で笑わせたら勝ちみたいなノリの作品が量産されますが、本作はギャグが一切なく硬派の名作になっています。


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1位 ダイヤモンドは永遠に



世間的には評価が低い作品です。まず大金を提示されて嫌々ながら復帰したショーン・コネリーは、明らかにやる気がありません。体も絞れていませんし、以前ほどの軽快さもありません。またアクションも酷く、月面車を使ったチンタラしたカーチェイスは史上最低のカーチェイスと言われています。それでも私が1位に選んだのは、初めて見た007シリーズだからです。小学生には新鮮かつ強烈なインパクトで、ハラハラドキドキしながら見たものです。もっとも大学生になって見返して、出来の悪さにゲラゲラ笑ったのですが。



物語はダイヤモンドの大量密輸事件を追うボンドが、密輸ルートを解明する中で犯罪組織スペクターが関与していることを掴み、ブロフェルドとの対決に挑む物語です。これを1位に選んだのは初めて見たというだけの理由ではありません。その後の007シリーズの流れを決めるエポックメイキング的作品だからです。



これまで斬新なアイデアで他の映画にさまざまな影響を与えてきた007シリーズですが、本作では映画「ブリット」の影響を受けて自動車にマスタングを使うなど、他のヒット作の影響が見られます。影響を与える側から影響を受ける側に回った作品であり、その後のヒット作を徹底的に、そして無節操にパクる流れを始めたのが本作です。

またこれまでの007シリーズは、シリアス路線とコメディ路線で揺れ動いていました。しかしコメディ路線を驀進した「007は二度死ぬ」が大ヒットし、シリアスに転校した「女王陛下の007」が興行的に失敗し、そしてコメディ全開の本作が大ヒットしたため、その後の007シリーズはお色気アクションコメディ路線に決定します。



本作のハイライトは、レーザー光線を搭載した人工衛星を止める切り札が、ボンドガールのパンツに挟んであったカセットテープだったことでしょう。兵器としてどうかと思うと同時に、パンツに挿したカセットテープというオチに開いた口が塞がらなくなります。物語の辻褄が合わない部分が散見される映画ですが、笑わせたら勝ちという気迫すら感じられます。女装して逃亡するブロフェルドも含め、最初から最後までトホホ感満載で、この下らなさにノレるか呆れるかで評価が180度変わると思います。


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まとめ

正直言って「黄金銃を持つ男」は外したくなかったのですが、泣く泣く外しました。「燃えよドラゴン」をパクってカンフーをいれるものの、老体のロジャー・ムーアが超スローモーで泣けてくる格闘シーンや、西部劇の決闘をしながら姿を消すスカマンガ、美女がお尻でスイッチを押して世界崩壊のピンチになるなど、見ていて情けなくなるシーンが山盛りです。たまに無性に見たくなるのですが、今回はランキングに入りませんでした。

このランキングは、きっとその時の気分で変わると思います。皆さんは、ランキングをつけるとしたら何を選びますか?

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