2018年7月9日月曜日

クレイグ・ロスにギターを教わった /レニー・クラヴィッツのギターリスト

時は1990年代の中頃、「レニー・クラヴィッツに届けるものがあるので、一緒に行きませんか?」という楽器屋からの電話を受けた私は、40秒で支度して電車に飛び乗りました。当時、レニーはアルバム「サーカス」をリリースしてライブを行っていて、まさに人気絶頂のロックスターでした。日本公演の最中で、社長は以前からレニーと親交がありました。

※左:レニー・クラヴィッツ 右:クレイグ・ロス

行きつけの楽器屋に行くと、店員を含めて準備万端で、届けるのはエフェクター(ギターを弾く時に音を変えるポケットサイズの道具)とギターが1本でした。これを6人も7人もで持っていくのは気が引けましたが、楽屋に入れるならなんでもOKというノリで行ってしまいました。

開演前に会場入りし、関係者席でライブを楽しみ、終わってから楽屋に行きました。そこは別世界でした。白人女性が20人ほどいました。みんな美人です。その間を私たちは通り抜け、スタッフにギターとエフェクターを手渡します。ドラムのシンディ・ブラックマンを紹介され、握手しました。

※シンディ・ブラックマン

「あんた誰?」

って顔で見られて、ぬるーい握手でした。次にベースのジョーを紹介され、彼はハイテンションで握手をすると、騒いでどこかに行きました。そして肝心のレニーがいません。

※レニー・クラヴィッツ

「レニーはどこ?」とスタッフに尋ねると、

「彼は別室でお楽しみ中」
「今は、会わない方がいい」

と、口々に言われ、お楽しみの意味がわかりました。鼻に指を当てるお楽しみですね。関わらないのがベストです。

そして美女軍団の端に、疲れた顔で水を飲むギターのクレイグ・ロスを見つけました。

※クレイグ・ロス




「はじめまして、ミスター・ロス」
「ミスターはいらない。クレイグでいいよ」

というわけで「へいクレイグ!写真撮ろうぜ」「ねぇクレイグ、これ本物の髪の毛?」などと実に下らない話をしていました。そこに私達が届けたギターがやってきました。クレイグは、適当なリックを弾き、私はすっかり舞い上がりました。言葉が英語にも日本語にもなりません。

「タケシ、頑張って聞くから、落ち着いて話してくれ」

と言われて、ようやく落ち着きましたが、落ち着いたら美女軍団が恨めしそうな視線で私を見ていることに気がつきました。そりゃあ、変な日本人がクレイグを独り占めしてるんですからね。すると再び緊張してしまい、今度は「どうやったらギターが上手になるのですか?」と、子供のような質問をしてしまいました。

「好きなギターリストは?」
「うーん、ジミ・ヘンドリックスかな」
「それならジミのレコードをかけて、それに合わせて弾くんだ」
「難しい曲もあって大変」
「じゃあ、ジミが好きだったギターリストを知ってる?」
「マディウォーターズとか、ヒューバート・サムリンでしょ?」
「そう、彼らのレコードをかけて、ギターを弾くと上手になるよ」

※ジミ・ヘンドリックス

質問が子供じみていると、回答も子供じみてきます。「やっぱりコピーが大事なんだね」と言うと、気だるそうなクレイグの顔が真顔になりました。

「コピーしちゃダメだ」

意味不明でした。レコードをかけて、それに合わせて弾けと言ったのはクレイグです。しかしクレイグは真剣に続けました。

「ジミのレコードをコピーするんじゃない。ジミに習うんだ」

クレイグは身を乗り出して語ります。目つきは真剣そのものでした。

「ジミのレコードを何度も聴いて、ジミが何を学んでどうやって弾いているか、ジミのレコードに教えてもらうんだ」

「ジミはマディから多くを学んだ。キミもマディのレコードから、ジミが何を学んだかを学ぶんだ」

「キミがジミとそっくりに演奏したとして、何の価値があるんだ?僕はジミのレコードを聴くよ。だけどキミが何度もジミのレコードを聴いて、ジミに演奏を習って、自分なりの演奏ができるなら聴いてみたいと思う。だって、それはもうキミ自身の音楽だからだ」

※クレイグ・ロス

もう、この時のクレイグの格好よさと言ったら、形容のしようがありません。もう美女軍団の「誰だお前」みたいな視線も気になりません。私はアホみたいに口を開けていたと思いますが、それもどうでもいいことです。

その後も音楽の話をあれこれして、楽しい時間が過ぎていきました。
「ローリング・ストーンズは雲の上に住んでる」
「ギターは練習しただけ上手くなるから楽しい」
「いつかソロ名義でアルバムを出せたらいいな」

クレイグは見た目に反して、素朴で落ち着いた人柄でした。疲れているにも関わらず私の下手くそな英語を聞き、真面目にアドバイスし、熱く音楽を語ってくれました。

こうしてプロから貴重なアドバイスをもらった私ですが、どうしてギターの技術が向上することがなかったのでしょう?たまにはギターを引っ張り出すかなぁ。




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