希代のナンパ師だったトム・ピーターソン /チープトリックの思い出
トム・ピーターソンというベーシストをご存じでしょうか。チープトリックというバンドで活躍したベーシストで、70年代から80年代にかけて絶大な人気を誇ったロックバンドでした。トムはヴォーカルのロビン・ザンダーと並んで、女性に圧倒的人気を誇っていたのですが、今回はそのトム・ピーターソンとの思い出です。
「はじめまして。チープトリックは素晴らしいバンドです。特にあなたは特別だ」
と、おべんちゃらを並べて挨拶すると、トムはおどけて「いま、You wereって言った?」と言い、「違う違う!You are specialって言ったよ!」と私が慌て、トムが大笑いしたところですっかり打ち解けました。
お店のオーナーはチープトリックのメンバーと親交があり、アメリカではよく会っていたようです。
なんとタワーレコードの前には長蛇の列ができていて、みんなトムを待っているようです。駐車場に車をとめて社外に出ると、トムがいません。車を降りた瞬間に、どこかに行ってしまったようです。これは大変です。イベント開始まであまり時間がありません。
「トーム! ホェア・アー・ユー?」
と大声で叫びながら全員で渋谷を走り回り、やっとトムを見つけました。日本人の女性となにやら話していました。
Just talking(ただ話してるんだよ)
女性が私を怪訝な目で睨み「あなたマネージャー?」と聞いてきますが、そんなことはどうでもよく、とにかくトムを連れて行かなくてはなりません。しかしトムは「ちょっと待って」とポケットから紙を取り出し、なにかをメモしています。
「なにやってるの?」
「彼女に電話番号を渡さなきゃ」
「いいから、イベントに行くよ!」
ここに来て女性も抵抗するのですが、驚いたことに女性は英語を話せません。当然ながらトムは日本語を話せません。言葉が通じていないのに、トムのナンパは見事に成功していて、女性はこれからトムと遊びにいくつもりのようです。なぜ言葉が通じなくてもどうにかなるのでしょうか?これがビルボードヒットチャート1位の魔力なのでしょうか?
実はトムは来日してから大勢の女性に声をかけ、全員に電話番号を渡していました。携帯電話がないこの時代、トムが渡した電話番号はホテルのものではなく、楽器屋の番号でした。とりあえずトムの腕をつかんで、強引にタワーレコードに連れて行きました。
最後にサイン会があり、私も並んでみるとトムが私に気づき
「おお!タケシ!君も来てたのか!」
おい、あんたをここに連れてきたのはこの俺だ、とツッコミつつGood job!と褒めておきました。
もうしばらくして電話してみても話し中です。かなり時間をかけて、何度も電話してようやく繋がりました。
店員「あ!井上さんですか!良かった!」
井上「なんだ、どうした?」
店員「電話が鳴りっぱなしなんですよ」
井上「商売繁盛じゃないか」
店員「違いますよ!トムがナンパした女性からの電話です」
井上「それで電話が繋がらないのか!!」
店員「電話に出るなり『あなた誰?トムに代わって!」って調子で何本もですよ・・・」
仕事も接客もできないほど電話が鳴りっぱなしで、しかもトムに用がある女性から文句を言われるので気が滅入っているようでした。「トム〜、いい加減にしてよ〜って、伝えてもらますか?」と力なく言っていました。
トムに「何人の女性に電話番号教えたの?と尋ねると「100人、いやそれは大げさかな?」と軽く言うのですが、日本語が話せないトムがどうやって会話しているのか不思議でした。
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※中央後ろがトム・ピーターソン |
楽器屋からの電話
1990年代の中頃の日曜日の朝、私の部屋の電話が鳴りました。「今日、トム・ピーターソンがお店に来るよ」と言われて、慌ててお店に向かいました。そこにはMTVで何度も見たトムが、普通に座って談笑していました。「はじめまして。チープトリックは素晴らしいバンドです。特にあなたは特別だ」
と、おべんちゃらを並べて挨拶すると、トムはおどけて「いま、You wereって言った?」と言い、「違う違う!You are specialって言ったよ!」と私が慌て、トムが大笑いしたところですっかり打ち解けました。
お店のオーナーはチープトリックのメンバーと親交があり、アメリカではよく会っていたようです。
タワーレコードにて
いくつかのイベントに参加する予定のようで、今日もベースクリニックを渋谷のタワーレコードで行うそうです。司会はなんとこの店の常連客で、英語とドイツ語が堪能なバンドマンですが、性格が適当なので不安です。そもそもその人のドイツ語は、最大限に想像力を発揮しないと何を言っているかわからないと言う人もいました。そんなことを思いつつ、全員でバンに乗り込み渋谷のタワーレコードに向かいました。※右がトム・ピーターソン |
なんとタワーレコードの前には長蛇の列ができていて、みんなトムを待っているようです。駐車場に車をとめて社外に出ると、トムがいません。車を降りた瞬間に、どこかに行ってしまったようです。これは大変です。イベント開始まであまり時間がありません。
「トーム! ホェア・アー・ユー?」
と大声で叫びながら全員で渋谷を走り回り、やっとトムを見つけました。日本人の女性となにやら話していました。
ナンパの達人
What are you doing? Tom!!(トム、なにやってんだ?)Just talking(ただ話してるんだよ)
女性が私を怪訝な目で睨み「あなたマネージャー?」と聞いてきますが、そんなことはどうでもよく、とにかくトムを連れて行かなくてはなりません。しかしトムは「ちょっと待って」とポケットから紙を取り出し、なにかをメモしています。
「なにやってるの?」
「彼女に電話番号を渡さなきゃ」
「いいから、イベントに行くよ!」
ここに来て女性も抵抗するのですが、驚いたことに女性は英語を話せません。当然ながらトムは日本語を話せません。言葉が通じていないのに、トムのナンパは見事に成功していて、女性はこれからトムと遊びにいくつもりのようです。なぜ言葉が通じなくてもどうにかなるのでしょうか?これがビルボードヒットチャート1位の魔力なのでしょうか?
※中央後ろがトム・ピーターソン |
実はトムは来日してから大勢の女性に声をかけ、全員に電話番号を渡していました。携帯電話がないこの時代、トムが渡した電話番号はホテルのものではなく、楽器屋の番号でした。とりあえずトムの腕をつかんで、強引にタワーレコードに連れて行きました。
タワーレコードにて
イベントは司会者の思いつきでお客さんとの飛び入りセッションなど、かなり適当な流れでも、順調に進みました。満員のお客さんは、満足しているようでイベントとしては成功だったと思います。生でトムの演奏を聴けただけでも、価値があったのだと思います。※その当時の私とトムの写真 |
最後にサイン会があり、私も並んでみるとトムが私に気づき
「おお!タケシ!君も来てたのか!」
おい、あんたをここに連れてきたのはこの俺だ、とツッコミつつGood job!と褒めておきました。
鳴り止まない電話
イベントが終わり、チープトリックのファンが経営している寿司屋に行くことになっていたのですが、楽器屋には若手をお留守番させているので社長が心配して電話してみることにしました。しかし電話は話し中です。もうしばらくして電話してみても話し中です。かなり時間をかけて、何度も電話してようやく繋がりました。
店員「あ!井上さんですか!良かった!」
井上「なんだ、どうした?」
店員「電話が鳴りっぱなしなんですよ」
井上「商売繁盛じゃないか」
店員「違いますよ!トムがナンパした女性からの電話です」
井上「それで電話が繋がらないのか!!」
店員「電話に出るなり『あなた誰?トムに代わって!」って調子で何本もですよ・・・」
仕事も接客もできないほど電話が鳴りっぱなしで、しかもトムに用がある女性から文句を言われるので気が滅入っているようでした。「トム〜、いい加減にしてよ〜って、伝えてもらますか?」と力なく言っていました。
※左がトム・ピーターソン |
トムに「何人の女性に電話番号教えたの?と尋ねると「100人、いやそれは大げさかな?」と軽く言うのですが、日本語が話せないトムがどうやって会話しているのか不思議でした。
まとめ
トムはジョーク好きの面白い人で、とても気さくに話してくれるナイスガイでした。私の下手くそなギターにもつきあってくれましたし、スターとは思えぬフランクさで接してくれました。しかしこの女性好きはなんなのでしょう?そして日本語が話せず英語が話せないのに、ポンポン女性をナンパできるのはなぜでしょう?そして驚くことに、トムが全米ヒットチャートを賑わせたミュージシャンだとは知らずに、電話してきている女性もいたということです。なんというか、不思議でした。
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