映画「シャイニング」について考える その1 /オカルトなのか精神病なのか

※この記事は2016年3月7日に、前のブログに書いた記事の転載です。

80年に公開されたスタンリー・キューブリックのホラー映画「シャイニング」は、商業的には成功したものの、原作者のスティーブン・キングから批判された問題作でもあります。怖さと同時に難解さと不可解さが残るこの映画について、数回に分けて考えてみたいと思います。


あらすじ

教師を辞めて小説家になったジャックは、ロッキー山脈にあるオーバールックホテルに家族と共に到着します。雪で閉ざされるホテルの管理人として冬を過ごし、執筆するためです。

※オーバールックホテル

かつてこのホテルでは、同じく管理人を請負った男が冬山の孤独に耐えかねて家族を斧で惨殺し、自殺を図っていました。ジャックは気にしませんが、ホテルの異様な雰囲気と冬山の閉塞感がジャックの心を蝕んでいきます。

そして息子のダニーは、シャイニング(輝き)という不思議な力を持っていて、ホテルの中で様々な超常現象を目撃することになります。

※息子のダニー

考察

完璧主義者のキューブリックは、ジャックを演じるジャック・ニコルソンが狂気に満ちていくたった2秒の表情が変化するシークエンスを2週間かけて、100以上のテイクを重ねて撮影したと言われています。しかし一方で、オープニングのロッキー山脈を空撮したシークエンスでは、ヘリコプターのローターの影が映り込む、キューブリックらしからぬ面もあります。このチグハグさが、見る者を混乱されます。

※ジワジワと狂気に満ちた顔に変化します。

キングの原作ではホテルそのものが邪悪な意思を持ち、ジャックを利用して家族に遅いかかりますが、映画ではホテルの悪霊の仕業とも、ジャックが精神異常になり家族を襲ったともとれます。ここで議論を呼ぶのが、家族を襲ったジャックが妻のウェンディに返り討ちに会い、食品庫に閉じ込められるシークエンスです。

※ウェンディの顔が一番怖かったという人も・・・

ジャックの前に、かつて管理人としてこのホテルに住み、家族を斧で惨殺したグレディが現れ、ジャックを「あなたには負けた」と批難します。ジャックがやり遂げる(家族を殺す)ことを誓うと、誰もいない入り口の鍵が開いてジャックは外に出ます。

この誰もいないのに鍵が開いたシークエンスがなければ、この物語は精神を病んだジャックの妄想が生み出した悲劇ととれます。しかし鍵は一人で開きました。これにより霊的なものを感じざるをえません。

無神論者のキューブリックは、キングに「君は神を信じるか?」と問い、「もちろん」とキングが答えると電話を切って二度と話すことはありませんでした。霊的なものを嫌うキューブリックが、なぜこのようなシークエンスを入れたのでしょうか?


関連記事:映画「シャイニング」について考える
     映画「シャイニング」について考える その2
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