最上を目指したワークブランド フィルソン
ここ数年、アメリカのワークブランド、フィルソンがバッグを中心に人気を集めています。フィルソンは過酷な自然の中で働く人のための製品を100年以上作り続けているブランドで、とにかく丈夫なつくりが特徴です。この20年ほど、多くのアパレルブランドは数年に一度は買い換えてもらうために、何十年も使い続けるような製品を作らなくなりました。フィルソンの人気は、そういったアパレル業界へのアンチテーゼを感じます。
※フィルソンのニューヨーク店 |
クリントン・C・フィルソンとゴールドラッシュ
オハイオ州で車掌の仕事をしていたクリントン・C・フィルソン は、1897年にシアトルで起業します。当時のシアトルはゴールドラッシュによって急速に人口が増えつつあり、一攫千金を狙う山師を相手に商売を始めたわけです。
※クロンダイクのゴールドラッシュ |
一部のフィルソンの解説では、1949年に始まったカリフォルニアのゴールドラッシュと混同していますが、フィルソン が商売を始めたのは1896年から始まったカナダのユーコン準州クロンダイクで起こったゴールドラッシュです。30万人がクロンダイクを目指し、厳しい自然環境のためにたどり着けたのが3万人弱で、金塊にありつけたのが5000人に満たなかったと言われています。
山師のためから木こりのためへ
あまりの過酷さに、山師達はフィルソン の店に貼られた天候情報を見て、フィルソン の防寒具を買ってクロンダイクに向かいました。ゴールドラッシュはフィルソンを繁盛させましたが、ゴールドラッシュは数年で終わり客足が遠のいてしまいます。
フィルソンが新たに顧客にしたのは、木こりでした。さらに鉱夫などの作業着も展開します。これで一時は停滞したフィルソン が復活し、過酷な環境で働く人たちのための丈夫な服として100年以上もアメリカで愛されています。
代表的なモデル
マッキノウ・クルーザー
最近はマッキーノと書かれていますが、Mankinawをマッキーノと読むのは気持ち悪いので、マッキノウと書きます。クルーザーは息の長い商品で、100年前からマイナーチェンジを繰り返しながら作り続けられています。またあまりの人気から、パテントが切れると同時に複数のメーカーが同じようなモデルを作りはじめました。
とにかく頑丈で温かいモデルで、森の中でも見つけやすい赤黒のチェックと森林警備隊のユニフォームに使われたフォレストグリーンが代表的な色です。
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ティン・クロス・フィールドコート
ティンはブリキ缶の意味で、ブリキ缶のように丈夫な生地で作られたジャケットになります。あまりのゴツさに馴染むまで数年かかりますが、その丈夫さで10年程度使ってもびくともしない生地です。
ティン・クロス・フィールドコートはハンティング用のジャケットで、右肩にライフルの肩当てのための補強があるのが特徴的です。
ショート・クルーザー
マッキノウ・クルーザーなどのインナーとして、春先のアウターとして使われるのがショート・クルーザーです。こちらもティン・クロスが使われているので丈夫にできています。
人気のバッグ類
実は近年の日本での人気を支えているのはバッグ類です。これはまた別に書きたいと思います。
フィルソンの生地
大きく分けて、ウール(羊毛)とコットン(綿)があります。
マッキノウ・クロス
ウール素材で、マッキノウ・クルーザーなどに使われています。羊毛の脂を落としていないバージンウールを使用した、24オンスの極厚の生地です。スチームで目を詰める工程を経て、防水性と保温性の高い生地になっています。
コットン生地
衣服用ではティン・クロス、シェルター・クロス、カバー・クロスがあり、それぞれオイルを塗って防水性を高めたオイルフィニッシュと、オイルを入れないドライフィニッシュがあります。厚さは以下の表の通りです。
オイルフィニッシュ
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ドライフィニッシュ
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ティン・クロス | 15オンス | 11.5オンス |
シェルター・クロス | 11オンス | 9オンス |
カバー・クロス | 8.5オンス | 6オンス |
比較として、LLビーンのフィールドコートは10オンス、イギリスの代表的なアウトドアブランド、バブアーは8オンスのコットン生地にオイルを染みこませているので、フィルソンの分厚さがわかると思います。
まとめ
フィルソンはとにかく頑丈で長持ちするために作られた衣料品で、過酷な条件下や20年、30年使うことを前提に作られています。フィルソンが掲げる「どうせ持つなら、最上のものを」に偽りはなく、フィルソンが考える最上を追い続けていると言えるでしょう。短期間で買い換えることを前提にしたブランドばかりの中、現在では希有な存在となっています。とにかく頑丈な衣類を探している方は、検討に加えてみてはいかがでしょうか。関連記事
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